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玖
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梅雨の合間の快晴の夜、松井は天文家仲間とに近くの山頂に在るログハウスで泊まりがけの天体観測を楽しんでいる。各々が惣菜や酒を持ち込み、同じくアマチュア天文家である歯科医師の南田広明と高校教諭の市原俊行が共同で変光星を発見した際の祝賀会も兼ねていた。
「まずは変光星の発見おめでとさん」
この中ではリーダー的存在と言える表瑞穂が二人を労っている。彼は隣県にある宇宙センターの調査員で、松井とは仕事でも顔を合わせる事がある。
「ありがとさん。空は霞んどったしちっこかったけぇ、見間違いやったらどないしよか思うとったんや」
南田はホッとしたように酒をぐっと飲む。専門機関からの観測確認の連絡が来るまで『間違いやったらどないしよ~』と不安を漏らしていたのを見てきた松井にとってもホッとする出来事であった。
「調子こいて飲み過ぎんなや、彗星拝めんくなるぞ」
昔から相棒状態の市原が南田を窘めている。事実現在六人で来ているのだが、食事もそこそこに星空に張り付いているメンバーもいる。
「ちょっと曇ってったなぁ」
と渋い表情を見せているのが田畑正憲、彼は隣にいる行定勝と共に『星空を観やすく』しようと呼び掛ける活動に参加している。
「交代制で仮眠取っとこか、まずは飲酒した二人やな」
ここはリーダーらしく表が仕切る。
「えーっ! あんさんも飲んではるやんか」
ほろ酔い状態の南田が不平を漏らすのに対し、市原はさっさと毛布を用意する。
「彗星出たら起こしてください」
「分かりました。田畑さん、行定さん、今のうちに飯食うてください」
「はいよ」
田畑、行定と入れ替わりで表と松井が外に出て、曇り始めた夜空相手に彗星が出てくるのをじっと待っていた。
それから数時間後、東の空が明るくなり始めた夜明け前に六人揃って彗星を観測することが出来た。良い年をした中年どもは我を忘れてはしゃぎ回っていたが、時を同じくしてあの藤巻悠介が別の未確認天体を発見しており、数日後に新たな彗星が発見されたと広報されたのだった。
「まずは変光星の発見おめでとさん」
この中ではリーダー的存在と言える表瑞穂が二人を労っている。彼は隣県にある宇宙センターの調査員で、松井とは仕事でも顔を合わせる事がある。
「ありがとさん。空は霞んどったしちっこかったけぇ、見間違いやったらどないしよか思うとったんや」
南田はホッとしたように酒をぐっと飲む。専門機関からの観測確認の連絡が来るまで『間違いやったらどないしよ~』と不安を漏らしていたのを見てきた松井にとってもホッとする出来事であった。
「調子こいて飲み過ぎんなや、彗星拝めんくなるぞ」
昔から相棒状態の市原が南田を窘めている。事実現在六人で来ているのだが、食事もそこそこに星空に張り付いているメンバーもいる。
「ちょっと曇ってったなぁ」
と渋い表情を見せているのが田畑正憲、彼は隣にいる行定勝と共に『星空を観やすく』しようと呼び掛ける活動に参加している。
「交代制で仮眠取っとこか、まずは飲酒した二人やな」
ここはリーダーらしく表が仕切る。
「えーっ! あんさんも飲んではるやんか」
ほろ酔い状態の南田が不平を漏らすのに対し、市原はさっさと毛布を用意する。
「彗星出たら起こしてください」
「分かりました。田畑さん、行定さん、今のうちに飯食うてください」
「はいよ」
田畑、行定と入れ替わりで表と松井が外に出て、曇り始めた夜空相手に彗星が出てくるのをじっと待っていた。
それから数時間後、東の空が明るくなり始めた夜明け前に六人揃って彗星を観測することが出来た。良い年をした中年どもは我を忘れてはしゃぎ回っていたが、時を同じくしてあの藤巻悠介が別の未確認天体を発見しており、数日後に新たな彗星が発見されたと広報されたのだった。
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