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~かりそめ夫婦・夫の暴走~
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“かりそめの夫”となった森園京介はとてつもなく整った容姿を持ち、仕事も完璧で将来性もある超ハイスペックな男だった。
社内でも憧れる女子社員は多く、あからさまにアプローチする女性もいたが、どんな美人も鼻にすらかけず、なんなら蔑んだような眼差しを向けていた。
それでも京介の見てくれに騙され、自分は大丈夫と自信満々に告白するものの、冷たくあしらわれ泣きながら走り去っていく女子は後を絶たない……。
男は馬鹿で学習しない生き物……と思っている理名は、職場以外での男性との関わりを一切絶っていた。どんなに良い人で優しい人でも、男と関わるとろくなことがないと思っていたからだ。
そんな理名がひょんなことから、超ハイスペック男の上司と“(契約)結婚”することになった……。
京介を上司として尊敬はしても、男として見たことはなく、たまたま諸々の事情と偶然が重なり……半ば勢いもあり承諾してしまった(それなりに覚悟はしていた)。
元々、仕事を続けるかどうか悩んでいたこともあって、理名は“寿退社”という立派な退職理由のお陰で後腐れなく会社を辞めることができた。
そして、元上司との“かりそめ生活”が始まったのだがーーー最初にお互いの“事情”は話していたので、理名もそれなりに覚悟はしていたが、想像以上の価値観の違いと歪み(それは理名も同じ)に唖然とした。
まず“契約結婚”の新居として超高級マンションを用意し……。“形だけの夫婦”なのに◯百万もするダイヤの指輪をオーダー。生活費用にとブラックカードを渡された。当の京介はほとんど家には居らず、専業主婦になった理名は二人で暮らすには広すぎるマンションで“妻”という仕事をすることもなく過ごすことになった。
身の丈に合わない生活は次第にストレスとなり、自分の存在意義に不安を感じた理名が一方的に切れる形で口喧嘩に発展するが、京介が心の内を少し打ち明けることでなんとか収まりがついた。
そんなこんなで渋々ではあるが、京介が折れ扶養内なら働いてもいいということになり、理名は一駅向こうのスーパーで週三日の時短で働くことになった。
初出勤の朝、うきうきした気持ちで部屋を出ると、なぜかエントランスに京介がいた。
「き……京介さん!?……仕事は?」
いつものように仕事に出たはずの京介がなぜここに?と首を傾げる。
「今日は少し時間に余裕がある。職場まで送って行こうか……と思ったのだが」
「……え?」
「職場の人にも挨拶しておかないといけないだろ」
「……は?」
京介と結婚してわかったこと、イケメンで仕事ができる超ハイスペックな男はフタを開けてみれば、ただの“臆病者で超ヘタレ”かつ思考がぶっとんでる男だった。
(猫と思ったら案外犬かも……子犬)
過去のトラウマがそうさせるのか……理名を信用してると言いながら、心配で仕方がないらしい……。
「自転車で行くので結構です!それに私は子供ではないので挨拶は必要ないです!」
「しかし……」
「しかしもカカシもないっ!」
理名の迫力に項垂れる京介。
「わかった……何かあれば、すぐ連絡してくれ!」
「私のことより、京介さんは自分の仕事をし・て・く・だ・さ・い」
理名は京介の横を颯爽と自転車を走らせた。
だいたい京介がスーパーになんて来たらスタッフやお客さんが色めき立って仕事や買い物に支障がでる。
(自分の顔面偏差値わかってないからな~京介さん……)
京介のせいでバタバタしてしまったが、なんとか遅刻することなくスーパーに着くことが出来た。
「今日からお世話なります。森園理名です。よろしくお願いします!」
店長に案内され一通りの挨拶を済ませると、ベテランのパートさんについて作業を教わることになった。まずはメインのレジ打ち、ベテランさんの横で基本的な操作方法や商品の通し方等々……時短の三時間はあっという間に過ぎてしまった。
細かいことはまだまだわからないが、なんとかやっていけそうかな……と理名は少し胸を撫で下ろした。
「森園さん。お疲れ様!慣れるまで大変だけど、少しずつ覚えていってね」
そういってくれたのは、今日ずっと仕事を教えてくれたベテランさんだった。
「はい。ありがとうございます!」
「ところで……」と、ベテランさんが急に小声で耳打ちした。
「はい?」
「入口付近にちょっと怪しい男がいるんだけど、誰かのストーカーかしら?ハンサムなのに残念だわ!」
理名がストーカー怖いな!と思いながら入口の方を見ると、そこには怪しさ満載の“京介”が皆の注目を浴びながら中を覗いていた。
(京介さんーーー!?なんで?っていうか、サングラスなんてして悪目立ちし過ぎ!)
自分がどれだけ目立つ存在が京介はわかっていない……。もう怒りを通り越して呆れるしかなかった。
「あの……すみません。あれ、うちの夫……です」
「え、あっ……ご主人?まあ、と……とても素敵な方ね……」
知らなかったとはいえ、人のご主人をストーカー呼ばわりしてしまったベテランと妻の職場に押し掛けてストーカーと間違えられた夫を持つ女の間で、なんとも言えない気まずい空気が流れた。
(もう!京介さんのせいで仕事行きづらくなったじゃない!)
仕事ができる笑わないクールな元上司は、いつの間にか妻を心配し過ぎる夫or忠犬夫?に変貌していた。
もちろん“かりそめの夫婦”であることに変わりはなく、二人の間に恋愛感情など存在しないのだがーー
社内でも憧れる女子社員は多く、あからさまにアプローチする女性もいたが、どんな美人も鼻にすらかけず、なんなら蔑んだような眼差しを向けていた。
それでも京介の見てくれに騙され、自分は大丈夫と自信満々に告白するものの、冷たくあしらわれ泣きながら走り去っていく女子は後を絶たない……。
男は馬鹿で学習しない生き物……と思っている理名は、職場以外での男性との関わりを一切絶っていた。どんなに良い人で優しい人でも、男と関わるとろくなことがないと思っていたからだ。
そんな理名がひょんなことから、超ハイスペック男の上司と“(契約)結婚”することになった……。
京介を上司として尊敬はしても、男として見たことはなく、たまたま諸々の事情と偶然が重なり……半ば勢いもあり承諾してしまった(それなりに覚悟はしていた)。
元々、仕事を続けるかどうか悩んでいたこともあって、理名は“寿退社”という立派な退職理由のお陰で後腐れなく会社を辞めることができた。
そして、元上司との“かりそめ生活”が始まったのだがーーー最初にお互いの“事情”は話していたので、理名もそれなりに覚悟はしていたが、想像以上の価値観の違いと歪み(それは理名も同じ)に唖然とした。
まず“契約結婚”の新居として超高級マンションを用意し……。“形だけの夫婦”なのに◯百万もするダイヤの指輪をオーダー。生活費用にとブラックカードを渡された。当の京介はほとんど家には居らず、専業主婦になった理名は二人で暮らすには広すぎるマンションで“妻”という仕事をすることもなく過ごすことになった。
身の丈に合わない生活は次第にストレスとなり、自分の存在意義に不安を感じた理名が一方的に切れる形で口喧嘩に発展するが、京介が心の内を少し打ち明けることでなんとか収まりがついた。
そんなこんなで渋々ではあるが、京介が折れ扶養内なら働いてもいいということになり、理名は一駅向こうのスーパーで週三日の時短で働くことになった。
初出勤の朝、うきうきした気持ちで部屋を出ると、なぜかエントランスに京介がいた。
「き……京介さん!?……仕事は?」
いつものように仕事に出たはずの京介がなぜここに?と首を傾げる。
「今日は少し時間に余裕がある。職場まで送って行こうか……と思ったのだが」
「……え?」
「職場の人にも挨拶しておかないといけないだろ」
「……は?」
京介と結婚してわかったこと、イケメンで仕事ができる超ハイスペックな男はフタを開けてみれば、ただの“臆病者で超ヘタレ”かつ思考がぶっとんでる男だった。
(猫と思ったら案外犬かも……子犬)
過去のトラウマがそうさせるのか……理名を信用してると言いながら、心配で仕方がないらしい……。
「自転車で行くので結構です!それに私は子供ではないので挨拶は必要ないです!」
「しかし……」
「しかしもカカシもないっ!」
理名の迫力に項垂れる京介。
「わかった……何かあれば、すぐ連絡してくれ!」
「私のことより、京介さんは自分の仕事をし・て・く・だ・さ・い」
理名は京介の横を颯爽と自転車を走らせた。
だいたい京介がスーパーになんて来たらスタッフやお客さんが色めき立って仕事や買い物に支障がでる。
(自分の顔面偏差値わかってないからな~京介さん……)
京介のせいでバタバタしてしまったが、なんとか遅刻することなくスーパーに着くことが出来た。
「今日からお世話なります。森園理名です。よろしくお願いします!」
店長に案内され一通りの挨拶を済ませると、ベテランのパートさんについて作業を教わることになった。まずはメインのレジ打ち、ベテランさんの横で基本的な操作方法や商品の通し方等々……時短の三時間はあっという間に過ぎてしまった。
細かいことはまだまだわからないが、なんとかやっていけそうかな……と理名は少し胸を撫で下ろした。
「森園さん。お疲れ様!慣れるまで大変だけど、少しずつ覚えていってね」
そういってくれたのは、今日ずっと仕事を教えてくれたベテランさんだった。
「はい。ありがとうございます!」
「ところで……」と、ベテランさんが急に小声で耳打ちした。
「はい?」
「入口付近にちょっと怪しい男がいるんだけど、誰かのストーカーかしら?ハンサムなのに残念だわ!」
理名がストーカー怖いな!と思いながら入口の方を見ると、そこには怪しさ満載の“京介”が皆の注目を浴びながら中を覗いていた。
(京介さんーーー!?なんで?っていうか、サングラスなんてして悪目立ちし過ぎ!)
自分がどれだけ目立つ存在が京介はわかっていない……。もう怒りを通り越して呆れるしかなかった。
「あの……すみません。あれ、うちの夫……です」
「え、あっ……ご主人?まあ、と……とても素敵な方ね……」
知らなかったとはいえ、人のご主人をストーカー呼ばわりしてしまったベテランと妻の職場に押し掛けてストーカーと間違えられた夫を持つ女の間で、なんとも言えない気まずい空気が流れた。
(もう!京介さんのせいで仕事行きづらくなったじゃない!)
仕事ができる笑わないクールな元上司は、いつの間にか妻を心配し過ぎる夫or忠犬夫?に変貌していた。
もちろん“かりそめの夫婦”であることに変わりはなく、二人の間に恋愛感情など存在しないのだがーー
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