聖女の私にできること第二巻

藤ノ千里

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第六章 愛する覚悟

最終話 あなたと私が向かう先

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 鹿谷へ出発する準備の期間、私はひたすら紅葉寺で聖女として働いた。
 知名度を上げておいて損はないという道明様の意見と、紅葉寺への恩返し、そして聖女の業のトレーニングのためという一石三鳥のお仕事だ。
 道明様は私とは完全に別行動で、部屋に閉じこもって何かを書いたり、たまに出かけていたりしたが、何せ同じ部屋で寝泊まりしているので寂しさはなかった。
 そして、長いようであっという間だった京での生活が終わり、出発の日が来る。
 朝ご飯を済ませて少しの荷物を纏めた。
 纏めた荷物は晴彦さんと一松さんが持ってくれるという。
 少しだけ申し訳ないが、旅慣れしていないので大人しく甘えることにした。
 そして、門の前にはなんと紅葉寺のお坊様たちが待っていてくれた。
 お見送りの文化がないはずなのに、お別れを言うためにわざわざ集まってくれたのだ。
 私たちに言葉をかけるでもなくただ整列して名残惜しそうに頭を下げる姿に、ほんの少しだけ泣きそうになって、でもちゃんと聖女の笑顔で答えた。
「長らくの逗留をお許しいただき、心より感謝申し上げます」
 道明様が、紅葉寺の大僧正様に頭を下げるのに合わせて私も頭を下げた。
「道は永いでしょうが、菩薩のご加護があらんことを」
 少し意味深に返す大僧正様は、もしかしたら私たちの関係に勘づいていたのかもしれない。
 道明様の後に続いて境内を出る。年末年始に比べれば少し賑わいも落ち着いたが、まだ京の街は賑やかだった。
 少し歩くと、馬借に着く。
 大人しく並んでいる馬に、医療所の厩を思い出した。
「馬に乗るのですか?」
「そなたがな」
 そう言うと、道明様が馬を一頭借りてきてくれた。焦げ茶色の若い牡馬とのことだ。
 私の足が遅いのと体力を考えての事だろう。だが、私には一つだけ心配なことがあった。
「凄く言い辛いのですが・・・乗れないかもしれません」
「医師団は馬で移動したのであろう?」
 そう、道明様の言う通り、八ツ笠から川平までは馬で移動した。
 しかし、私は乗馬には全く自信がなかった。
 なぜなら大人しい馬を選んでもらったにも関わらず、医師団の移動中は何度も落ちるんじゃないかという思いをしたのだ!
 それに加えて、この馬は明らかに大人しさの欠けらも無い。
 この馬には罪は無いが、絶対に乗りたくない。
「では、共に乗ろう」
 私の苦い顔に笑いながら道明様はひらりと馬に飛び乗った。
 凛々しい馬に凛々しい美丈夫が跨ると物凄く絵になる。
「おいで」
 差し出された手に捕まって私も馬の背によじ登る。体が密着して嬉しいやら恥ずかしいやらだ。
「道明様、乗れるんですね」
「私も元は武士の子ぞ?」
 顔も近い。あまりそちらは見ないことにしよう。
「晴彦、一松疲れたら申せよ」
「「はい」」
 その返事を合図に旅が始まる。
 最初の目的地は港らしい。皇后様が用意してくださった荷があり、それと一緒に船に乗るのだという。
 何があるかは分からない。けど今度は道明様がいる。
 彼が一緒なら何だって乗り越えられる。そんな期待だけが私の胸には詰まっていた。
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