巫女様と私

藤ノ千里

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2章 不思議な男の子

6話 男の子の案内

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「あ?別に他に客いねぇんだから良いだろ」
「Rua Nia-o Tana Azuu-to, Warina Tani-o Noari-a uke-a luan-yo.」
「分かんねぇって!後で戻れば良いんだろ!うるっせぇな・・・!」
 男の子の背が低く、体も細いからだろうけど、広木先輩はイラつき始めていた。
 ああいう所が本当に嫌い。
 嫌いだと言っても止めてくれないところが、凄く嫌い。
「Yuma Nai Azuu Tana Tani-no Tani Wali-de ra-ne. Kono Tani Lun-ri Warina Tani-o Yuma Shi-a Luan Yuma Shi a Luan-ka?」
「はぁ?マジうぜぇこいつ・・・!」
「あの!」
 広木先輩は態度が悪すぎるけど、幸いな事に男の子はずっと丁寧に喋り続けてくれていたから。
 だから男の子に、声をかけた。
「見学してメモしてもいいですか?あの儀式のとことか」
 身振り手振りで伝えると、男の子は少し驚いていた。
 けど、微笑みながらコクリと頷いてくれた。
「Ni-ri Wa Luan-o Sia Yan-a shi.」
「ありがとうございます!」
 急いで筆記具とスマホをポケットに押し込むと、男の子は入り口の方へ誘導してくれた。
 それが、何だか広木先輩から庇ってくれてるような、逃がしてくれているような感じで、くすぐったくて。
 嬉しくて少しだけ涙が出そうになった。


 男の子が連れて行ってくれたのは、儀式用の建物の近くの森の中。
 観光用に整備されていない道を少し歩くと、開けたところに窯があった。
 レンガ造りの薪窯のようだった。
 半分地面に埋まるようなタイプのやつだけど、どう見てもここ数年で出来たような真新しさがあって、ここでも上手く現代技術を取り入れているらしい。
 少しだけ残念。これを使う前にはどうやって陶器を製造していたか知りたかったから。
 でもそれも少しだけ。だって、窯の近くに組まれた木の棚に、物凄く魅力的な物が沢山あったから・・・!
 男の子の後を追いながら、その魅力的過ぎる陶器たちを凝視した。
 皿と椀と杯の形状で、描かれている模様は蔦のようだ。
 色は一色。この地のものだろうけど、赤茶色で少し濃淡がある。
 椀と杯は個人用の大きさだけど、皿は大皿だけだ。って事はやはり大人数で食事するスタイルなんだろう。
「Tani Lun-a yuman-ra?」
 食い入るように見ていると、男の子は杯をひとつ手に取り、渡してくれた。
 めちゃくちゃいい子だ。なんて魅力的過ぎるサービスだろうか。
「ありがとうございます!」
 受け取ってみると少し重い。色も黒いから鉄分が含まれているのかも。
 爪で弾いてみると高めの音が響いて、ちょっと楽器みたいだった。
「Luan Azuu-ni Tani Lun-o Raama Shi-a luan.」
 男の子はニコニコだったけど、大切であろう食器をいつまでも持っているのも気が引けて、杯は返した。
 返して、メモ帳を取り出す。
 窯についてと食器について、食器を置く棚についてを一気に書き上げた。
 走り書きのメモは後で清書するから問題ない。ポケットにしまい、逆のポケットからスマホを取り出す。
 許可を取るためにカメラを起動してから、男の子にスマホの画面を見せた。
「写真、撮っても大丈夫?これと、それ」
 言葉は全く伝わらないのに、ボディランゲージの力は偉大だ。男の子がうんうんと頷いてくれたので心置き無く写真を撮りまくる事にした。
 こんな事もあろうかと、メモリの容量は空けてある。
 映りたくないのかやんわりと脇に避けた男の子がフレーム内に入らないようにして、接写と近影と、ついでに周りの風景も撮りまくって、おまけに近くの植物も撮った。
 つい入り込み過ぎてたので、満足したと同時にハッとした。
 嫌がられてないかと恐る恐る伺うと、ありがたい事に男の子は笑顔のままだった。
「Ni-ri Ura Wali-ri Sia Yuma-a ura-de.」
 何となく終わったのかと聞かれた気がして、「終わりました!」と答えた。
 彼の元へ行くと、伝わったのかコクリと頷いた。
「Tani Wali Warina Laka-o luan kiran.」
 言いながら、男の子は歩いて行ってしまう。
 宿とは逆の、窯の裏側に。
 駄目な感じはないし、何より着いて行くと物凄く楽しそうで。
 なので着いて行った。ワクワクドキドキしながら、次は何を見せてくれるのかと、彼の事を微塵も疑わずに。
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