巫女様と私

藤ノ千里

文字の大きさ
13 / 38
2章 不思議な男の子

12話 案内された先

しおりを挟む
「Lun Azuu Wali-de ne.」
 年配の女性の呟きは、また翻訳できなかった。
 多分距離が離れているからだろう。
 彼女達とも会話したかったので、近くに行って同じように地べたに座り込んだ。
 「何を作っているんですか?」と話しかけたスマホの画面を彼女達に見せる。
 画面を見て、女の人達は口々に何か言っていた。
 少ししか驚いてないって事は、このアプリについては知っていたのだろうか?
「Kor-a Sia Wali-ri Wali Tani.」
 年配の女性、と言うかおばちゃんが、持っていた布を掲げる。「これ子ども服」と言っているらしい。
「Athi-a Raama Wali-ri to, Sia Ne-ri to, at Tani Lun Lun-de yo.」
 お喋りなのか、おばちゃんは他の人の縫っているものも教えてくれた。
 ウンウンと頷きながら聞いていると、「ここでやるは修理」で、「新しいのはあっち」と言う事も教えてくれた。
 ここではほつれ直しだけで、新しいものは室内で作ると言う事のようで、なぜ分けているのか聞いてみた。
 すると、「こっちは土の精霊がいる」かららしく、聞く感じ汚れた布は外で扱っているようだ。
 メモも写真も許可を貰ったので、ここでも沢山書いて沢山撮った。
 私が書いた絵に女の人達は関心してくれたし、写真は嬉しそうだった。
 途中から、私もほつれ直しを手伝ったけど、そうしているとあっという間に昼食の時間になっていた。


 昼食は、朝食と同じように宿で食べた。
 チェックアウトした後の、掃除も完了しているであろう部屋で食べるのは少し心苦しかったけど、特別待遇で残らせてもらっているのだから仕方がない。
 それに、昼食は旅行者用のものじゃなくキニータ族の食事だった。
 鶏肉と野菜が入っているスープと硬いパンで、パンをスープに浸すととても美味しかった。
 美子には食事前にメールを送ったから、ネットが使えるようになったら返信をくれるだろう。
 あ、そうそう。教授からは返信が来てたんだ。
 添付した写真へのお褒めの言葉と「陶器と布製品なら恐らく大丈夫でしょうが、念のためアズーラ連峰国に確認しておきますね」との事で、教授のマイペースっぷりが爆発していた。
 そのメールに、「もう少し滞在する事になりました。ネットが使えるので何かあったら連絡します」とさらに返信しておいたから、各所への連絡は完璧。
 あと何日滞在させてもらえるか分からないけど、心残りがないようにたくさん取材をしよう・・・!
 そんな感じでいろいろ考えつつ昼食後の一服をしていると、先ほど宿に案内してくれた女の子がまたやって来た。
「Tani Luan-a shi-de.」
 ちゃんと声を掛けてから部屋に入ってきてくれたその子は、空の食器を確認してから私の荷物を示した。
「Raama Lun-o Tani Sie-a Azuu Laka-a shi-ma.」
「あ、ちょっと待って」
 1人だからとポケットにしまっていたスマホを慌てて取り出して、急いで翻訳アプリを起動する。
「もう一回言って」
 画面に翻訳が表示されたのを確認してから女の子に向けると、彼女もスマホに向かってしゃべってくれた。
「Raama Lun-o Tani Sie-a Azuu Laka-a shi-ma.」
 画面を確認すると、「持ち物を持ってついて来て」の文字。
 頷いてから荷物を手に取ると、言葉が伝わったのが嬉しかったのか、女の子は嬉しそうに笑ってくれた。


 女の子に連れられて行った先は、儀式用の建物だった。
 「なぜ?」と疑問符を頭に浮かべながら着いて行くと、建物入ってすぐの入口は右じゃなく左の方に案内された。
 ちょっとした廊下の先、突き当たったところに部屋があるのは役場の作りと似ている。
 奥の方が重要な部屋なんだろうけど・・・。
「Koc-ni Tana Yu-a shi-ma.」
 仕切り布を暖簾のようにかき分けて、女の子が入室を促す。
 部屋の中からは不思議な香りが流れ出てきた。
 嫌な香りじゃなくて、安心するような優しい甘い香り。
 知らない場所への怖さはほんの少しあったけど、好奇心と不思議な安心感から部屋の中に足を踏み入れていた。
 部屋の中は、思ったより広かった。
 宿と同じで横長の窓からは明るい日が差し込んでいて、部屋の中を仕切る布の向こうもよく見えた。
 手前は机と椅子があってリビングのようだけど、向こう側には大きなベッドがあるから寝室らしい。
 つまり、思い切りプライベートな部屋だ。
 私みたいな部外者が勝手に立ち入ったらいけない感じの部屋だ。
 でも・・・今回は連れて来られたから仕方がないか。女の子も戻って行っちゃったみたいだし。
 チェストの上の香炉も、見えてしまっているから見ちゃっても仕方ないか。
 手のひらに収まらないくらいの大きな香炉は、昨日見た食器よりも黒かったけど、やっぱり陶器の手触りだった。
 より鉄分を含んだ土で作るのか、それとも上薬を使っているのか。
 聞いたら教えてくれるだろうか?
 香炉の形自体も変わっていて、模様は食器とは違う意匠だ。
 4つに分かれているから、4種類の何かしらを表していそう。
 中も見たいけど、勝手に触って壊しでもしたら大変だし、そもそも触っちゃいけないものかもしれない。
 さっき指の腹で撫でたのは・・・あれくらいなら、許されるはず・・・!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚

ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。 五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。 ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。 年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。 慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。 二人の恋の行方は……

偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜

紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。 しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。 私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。 近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。 泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。 私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。

隠された第四皇女

山田ランチ
恋愛
 ギルベアト帝国。  帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。  皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。 ヒュー娼館の人々 ウィノラ(娼館で育った第四皇女) アデリータ(女将、ウィノラの育ての親) マイノ(アデリータの弟で護衛長) ディアンヌ、ロラ(娼婦) デルマ、イリーゼ(高級娼婦) 皇宮の人々 ライナー・フックス(公爵家嫡男) バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人) ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝) ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長) リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属) オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟) エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟) セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃) ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡) 幻の皇女(第四皇女、死産?) アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補) ロタリオ(ライナーの従者) ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長) レナード・ハーン(子爵令息) リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女) ローザ(リナの侍女、魔女) ※フェッチ   力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。  ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒
恋愛
そばかす令嬢クラリスは、家族に支度金目当てで成り上がり伯爵セドリックに嫁がされる。 だが彼に溺愛され家は再興。 見下していた美貌の妹リリアナは婚約破棄される。

やっかいな幼なじみは御免です!

ゆきな
恋愛
有名な3人組がいた。 アリス・マイヤーズ子爵令嬢に、マーティ・エドウィン男爵令息、それからシェイマス・パウエル伯爵令息である。 整った顔立ちに、豊かな金髪の彼らは幼なじみ。 いつも皆の注目の的だった。 ネリー・ディアス伯爵令嬢ももちろん、遠巻きに彼らを見ていた側だったのだが、ある日突然マーティとの婚約が決まってしまう。 それからアリスとシェイマスの婚約も。 家の為の政略結婚だと割り切って、適度に仲良くなればいい、と思っていたネリーだったが…… 「ねえねえ、マーティ!聞いてるー?」 マーティといると必ず割り込んでくるアリスのせいで、積もり積もっていくイライラ。 「そんなにイチャイチャしたいなら、あなた達が婚約すれば良かったじゃない!」 なんて、口には出さないけど……はあ……。

処理中です...