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4章 優しい勘違い
24話 猜疑心
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「Kor-o Tani Sie-a shi-luan.」
洗髪剤の考察をしていると、シアちゃんは細長い容器を手に取って見せた。
スマホには「これを塗ります」の文字。
差し出した両手には、ドロっとした感触。
「油・・・?」
酸味にも似た匂いを嗅いでいると、シアちゃんはそれを自分の手にも出して、髪の毛に塗り始めた。
塗って、馴染ませるように塗り広げていくのを見ながら、私も真似をする。
驚くことにこの油、髪に塗ると少し白濁してヌルヌルが強くなるのだ。
髪の毛のキシキシが取れたのから考えるに、恐らくトリートメント。
だけど、この匂いとドロドロさはなんか嫌。
シアちゃんが髪を流し始めたから私も流したけど、ドロドロがなかなか取れなくて。
普段よりしっかり目に流した。でもそしたら髪の毛がツヤツヤしてるのが分かった。
乾かしていない状態なのに、明らかに普段と違う水分保有量。嫌な匂いも水で流したらなくなって、だからこれもお土産交渉しようと心に決めたのだ。
体を洗う粉は髪の毛を洗う粉とほとんど同じようで、布を使って洗った後は水に浸かるのだというシアちゃんに従った。
そしたら、見覚えのあるおばさんに声をかけられた。
「Kok-ni mo Wali Azuu-ta o-ka.」
「あ、ちょっと待って」
体を洗う時に1度画面ロックしたスマホをまたロック解除して、翻訳アプリを開く。
おばさんは、裁縫していたあのおばさんで、アプリもその時見てたからかちゃんとスマホに向かって喋ってくれた。
「Azuu Yuma Lun Wali-de ra?(いつまでいるんだ?)」
「いつまでかは決まってないんです」
「Kon Azuu Wali-ni Yuma Rakia-o Sia Nai-hu-a Warina Nai-yo.(あの子を信じるやり過ぎない方がいい)」
「あの子?アズー君のこと?」
「Wa...」
「Muru Tani Wali!(ムルさん!)」
焦ったようにシアちゃんが言った「ムルさん」がこのおばさんの名前なんだろう。
そのムルさんの言葉は途中だったため翻訳できていなかった。
聞き直すのもできないような気まずい雰囲気の中、ムルさんは「やれやれ」と言った感じの顔をして、川から上がって、脱衣所の方へ行ってしまった。
「Ko Yuma-ri kto-a Yuma Sia Nai-a shi-te Rakia-ma.(今の気にしないでください)」
シアちゃんは困ったような顔をしていた。でもムルさんの言葉は多分「Wali(うん)」だったのが分かってしまって、彼女が何を言いたかったかは分かってしまった。
アズー君を信じすぎない方が良いって、そうムルさんは言ってたんだ。
裁縫の作業場で、他の女性たちから慕われているように見えたムルさん。
一方でアズー君は、「Azuu Sia Wali(アズー様)」って呼ばれていても、他のキターニ族の人とは壁があるように見えた。
アズー君がムワキであることを、他のキターニ族の人達は知らないのだろうか?
それとも知っているからこそ、こんな風に意味深な態度を取るのだろうか?
他人の人間性なんて、噂話では分からない。でも、私はアズー君についてを知らなさすぎる。
聞いたら教えてくれる?それとも、嫌がられる?
彼の優しさに浮かれていたから、だから気付かなかった。
同じ人間というだけで、アズー君と私は全く違う生き物なんだって事に、今になってやっと気づいたの。
水浴びでさっぱりした体でアズー君の部屋へ戻った。
彼は、先に部屋にいた。
部屋で髪の毛を乾かしていた。
「Azuu Tani-a Azuu Wali Ra?(水浴びはどうでしたか?)」
慣れた手つきでドライヤーとブラシを扱う彼は、優しい笑みを向けてくれた。
なのに感じてしまう、壁があった。
「気持ち良かったよ。次、ドライヤー借りてもいい?」
「Wali. Wa Laka-ni Wali Azuu-a shi-te Rakia-ma.(はい。こっちに来てください)」
促されて椅子に座ると、暖かい風が吹きつけて来た。
乾かして、くれるらしい。
短い髪は普段からあまり手入れに力を入れていなくて、日本にいた時も面倒くさいと乾かさないまま寝る事も多々あった。
だからこんな風に、大切なもののように丁寧に扱われる事なんて、しばらくなかったのに。
熱すぎない風が髪を撫でて、ブラシが何度も頭を撫でて。
気持ち良くて、気持ち良すぎて思わずため息が出てしまうほどに、心地よくて。
「Luan Nai-ta-de Warina.(終わりました)」って言って、彼の手が離れていくのが残念だった。
もう少し髪が長ければなんて、初めて思った。
振り返ると、ドライヤーとブラシを片付けているアズー君がいて、彼を「好きだなぁ」って思って。
でも彼の事を聞くのは、出来なくて。
片付け終わった彼と目が合って、思わず目を逸らしてしまった。
「信じ過ぎない方が良い」って言う、ムルさんの言葉が、脳裏にチラつく。
彼女を信じたわけじゃない。けど、アズー君を盲目的に信じられるほど、彼と深い仲な訳でもない。
触れている間は、あんなに彼が近かったのに。彼の熱を、体がまだ覚えているのに。
「Ko Yuma-a リナ-a Yan Tani Noa-o Raama Yan Shi-a shi-luan-de Warina.(今日リナが見たいNoaをたくさん見せるします)」
スマホに表示されるこの言葉だって、彼の言葉そのものではない。
私の言葉だって、そのまま彼に届くわけじゃない。
「ありがとう。楽しみ」
でも、好きなの。こんなのおかしいって、分かっているのに。
洗髪剤の考察をしていると、シアちゃんは細長い容器を手に取って見せた。
スマホには「これを塗ります」の文字。
差し出した両手には、ドロっとした感触。
「油・・・?」
酸味にも似た匂いを嗅いでいると、シアちゃんはそれを自分の手にも出して、髪の毛に塗り始めた。
塗って、馴染ませるように塗り広げていくのを見ながら、私も真似をする。
驚くことにこの油、髪に塗ると少し白濁してヌルヌルが強くなるのだ。
髪の毛のキシキシが取れたのから考えるに、恐らくトリートメント。
だけど、この匂いとドロドロさはなんか嫌。
シアちゃんが髪を流し始めたから私も流したけど、ドロドロがなかなか取れなくて。
普段よりしっかり目に流した。でもそしたら髪の毛がツヤツヤしてるのが分かった。
乾かしていない状態なのに、明らかに普段と違う水分保有量。嫌な匂いも水で流したらなくなって、だからこれもお土産交渉しようと心に決めたのだ。
体を洗う粉は髪の毛を洗う粉とほとんど同じようで、布を使って洗った後は水に浸かるのだというシアちゃんに従った。
そしたら、見覚えのあるおばさんに声をかけられた。
「Kok-ni mo Wali Azuu-ta o-ka.」
「あ、ちょっと待って」
体を洗う時に1度画面ロックしたスマホをまたロック解除して、翻訳アプリを開く。
おばさんは、裁縫していたあのおばさんで、アプリもその時見てたからかちゃんとスマホに向かって喋ってくれた。
「Azuu Yuma Lun Wali-de ra?(いつまでいるんだ?)」
「いつまでかは決まってないんです」
「Kon Azuu Wali-ni Yuma Rakia-o Sia Nai-hu-a Warina Nai-yo.(あの子を信じるやり過ぎない方がいい)」
「あの子?アズー君のこと?」
「Wa...」
「Muru Tani Wali!(ムルさん!)」
焦ったようにシアちゃんが言った「ムルさん」がこのおばさんの名前なんだろう。
そのムルさんの言葉は途中だったため翻訳できていなかった。
聞き直すのもできないような気まずい雰囲気の中、ムルさんは「やれやれ」と言った感じの顔をして、川から上がって、脱衣所の方へ行ってしまった。
「Ko Yuma-ri kto-a Yuma Sia Nai-a shi-te Rakia-ma.(今の気にしないでください)」
シアちゃんは困ったような顔をしていた。でもムルさんの言葉は多分「Wali(うん)」だったのが分かってしまって、彼女が何を言いたかったかは分かってしまった。
アズー君を信じすぎない方が良いって、そうムルさんは言ってたんだ。
裁縫の作業場で、他の女性たちから慕われているように見えたムルさん。
一方でアズー君は、「Azuu Sia Wali(アズー様)」って呼ばれていても、他のキターニ族の人とは壁があるように見えた。
アズー君がムワキであることを、他のキターニ族の人達は知らないのだろうか?
それとも知っているからこそ、こんな風に意味深な態度を取るのだろうか?
他人の人間性なんて、噂話では分からない。でも、私はアズー君についてを知らなさすぎる。
聞いたら教えてくれる?それとも、嫌がられる?
彼の優しさに浮かれていたから、だから気付かなかった。
同じ人間というだけで、アズー君と私は全く違う生き物なんだって事に、今になってやっと気づいたの。
水浴びでさっぱりした体でアズー君の部屋へ戻った。
彼は、先に部屋にいた。
部屋で髪の毛を乾かしていた。
「Azuu Tani-a Azuu Wali Ra?(水浴びはどうでしたか?)」
慣れた手つきでドライヤーとブラシを扱う彼は、優しい笑みを向けてくれた。
なのに感じてしまう、壁があった。
「気持ち良かったよ。次、ドライヤー借りてもいい?」
「Wali. Wa Laka-ni Wali Azuu-a shi-te Rakia-ma.(はい。こっちに来てください)」
促されて椅子に座ると、暖かい風が吹きつけて来た。
乾かして、くれるらしい。
短い髪は普段からあまり手入れに力を入れていなくて、日本にいた時も面倒くさいと乾かさないまま寝る事も多々あった。
だからこんな風に、大切なもののように丁寧に扱われる事なんて、しばらくなかったのに。
熱すぎない風が髪を撫でて、ブラシが何度も頭を撫でて。
気持ち良くて、気持ち良すぎて思わずため息が出てしまうほどに、心地よくて。
「Luan Nai-ta-de Warina.(終わりました)」って言って、彼の手が離れていくのが残念だった。
もう少し髪が長ければなんて、初めて思った。
振り返ると、ドライヤーとブラシを片付けているアズー君がいて、彼を「好きだなぁ」って思って。
でも彼の事を聞くのは、出来なくて。
片付け終わった彼と目が合って、思わず目を逸らしてしまった。
「信じ過ぎない方が良い」って言う、ムルさんの言葉が、脳裏にチラつく。
彼女を信じたわけじゃない。けど、アズー君を盲目的に信じられるほど、彼と深い仲な訳でもない。
触れている間は、あんなに彼が近かったのに。彼の熱を、体がまだ覚えているのに。
「Ko Yuma-a リナ-a Yan Tani Noa-o Raama Yan Shi-a shi-luan-de Warina.(今日リナが見たいNoaをたくさん見せるします)」
スマホに表示されるこの言葉だって、彼の言葉そのものではない。
私の言葉だって、そのまま彼に届くわけじゃない。
「ありがとう。楽しみ」
でも、好きなの。こんなのおかしいって、分かっているのに。
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