巫女様と私

藤ノ千里

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4章 優しい勘違い

25話 隠していた事

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 アズー君に連れて行ってもらったのは森の中だった。
 銃を持った男性二人と、鉈を持った男性二人と合流して、森の中でキノコやらスパイスやらを収穫した。
 アズー君は食べれるかどうかの確認係だったらしく、彼にオッケーを貰った植物で大きなカゴが5つ満タンになって、それから帰路についた。
 私にはカゴは渡して貰えなかった。
 代わりにアズー君の「Kor Noa Tani Raama-a shi-luan to Yuma Noa-a shi-luan-ka?(これ食べれると思う?)」クイズが楽しくて、ずっと笑ってた。
 すごく意外だけど、この地域の植物は原色のものでも食べられるものが多いらしくて、あと「Noa Tani Raama.(食べれる)」けど美味しくないものもそこそこあるらしかった。
 えぐみの強い椿のような葉っぱは「Noa Tani Raama.(食べれる)」けど薬にするらしくて、「Noa Tani Raama Nai.(食べれない)」ものの中には「Tani Shi-a shi-luan-tar, Nia Raama.(触ったら痛い)」ものもあるんだって。
 以前見た資料に似たような植生の地域があった気がするけど、それでもすごく楽しかった。
 アズー君が一緒に居てくれたから。
 村に戻ってきたら、採ってきたものを調理する女性たちの輪に加わる事になった。
 アズー君はいくつかの植物だけを手に「Kok ni Tani Yu-a shi-te Rakia-ma.(ここにいて)」と言って行ってしまったから。
 だから、シアちゃんとシアちゃんのお母さん達と一緒に調理場に立って、お手伝いをした。
 調理方法自体は流石に他の地域でもあるような焼く、炒める、煮るという感じで、香辛料を色々使ってじっくり火を通すのもおおよそ予想通り。
 でも、魚醤だけじゃなく、植物の実を発酵させたお酒も調理に使っていたのには少し驚いた。
 キターニ族の人達が飲酒をしているのはまだ目にした事が無かったから驚いたんだけど、でも考えてみればどの地域でもアルコールやそれに準ずる物はあるから、観光客には見せないようにしているだけなのかもと、思い直した。
 そして、お手伝いが終わったあと、シアちゃんにお酒について聞いてみたら「特別な時に飲む」のだそうで、貴重だから日常的に飲んでいる訳ではないことが分かった。
 昼食が出来上がっても、アズー君は迎えに来てくれなかった。
 シアちゃんのお母さんはそれが分かっていたのか、食事の席に私の分も用意してくれた。
 私はお客さんだから、アズー君がなぜ迎えに来てくれないのかも、いつ迎えに来てくれるのかも知らない。
 シアちゃんのお母さんに聞いても首を横に振るだけで教えてくれなかった。 
 だから、仕方ないと思うしか無かった。
 でもその代わりにシアちゃんに教えて貰ったことがある。
 「Warina Sia.」って言う言葉だ。
 発音を完璧にマスターした「Warina Sia.」を、アズー君にいつか言いたいと、密かに企む事にしたのだ。


 「昼食後には迎えに来るはず」らしいアズー君が迎えに来てくれなかったので、シアちゃんと一緒にアズー君の部屋に行く事にした。
 居住区のような所を抜けると、役場が見えてくる。
 そして役場が見えてきたと同時に、役場の前にいる人達の姿も見えたのだ。
 アズー君がいた。
 そして、彼以外に3人、男の人がいた。
 1人はアズー君に何かを訴えているようにも見えた。
「Sor a Nia Wali-de. Ni-ri Yuma Warina-a Warina Nai-de...!」
 あと2人の男性は体が大きくて、アズー君の両脇で彼を守っているようにも見えた。
 そしてアズー君は、冷たい表情をしているように見えた。
「Kok a Wa-ri Tani Lun. Tani Nai-a shi-luan-tara, Azuu Laka-a shi-luan Raama Warina.」
 アズー君の返事に、訴えていた男性の表情が怒気に染まる。
 殴りかかろうとしていた。体の大きい男性2人に拘束されなければ、殴っていたんだと思う。
「Nia Yuma-Warina!」
 押さえつけられ、抵抗こそしていなかったけど、男性は何か嫌な言葉を言っているようだった。
 隣のシアちゃんが俯いたから、何を言ったのか聞くことも出来なかったけど。
「Tani Sia Yuma Sie Lun-o Sie Tani-a shi-luan!」
 アズー君の大きな声が響いて、彼のこんな声は初めて聞いた事に気づいた。
 怒っている声に聞こえた。
 でも彼は、辛そうに見えた。アズー君の姿で、ムワキのような大人びた表情をしながら。一見、悪い事をした人を叱っているような、そんな表情をしながら。
 なのに、私には彼が辛そうに見えた。
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