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番外編
私の告白②
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翌朝。教室に入ると、クラスの半分くらいはもう登校していて、その中にはまこまこもいた。
窓際の席で、窓の外を眺めていた。
「まこまこ、おはよ」
通学カバンを背負ったまま、まこまこの隣に立つ。誰からどう見ても、仲がいい事が分かるように。
「しーちゃん・・・おはよ」
困ったように微笑むまこまこは、明らかにクラスメイトの視線を気にしていた。
だから、彼女の横の席の椅子を拝借した。
「昨日の夜話してた店だけどさ、土曜日行かない?」
「あの、しーちゃん」
「なに?」
「あんまり私に話しかけない方がいいかも」
何となくそう言われる気はしてた。でもそれも全部分かった上で、私はまこまこに話しかけたんだ。
「まこまこ私の事嫌いになったの?」
「そうじゃないけど」
「じゃあいいじゃん。で、土曜日行くの?行かないの?」
「・・・行きたい」
「決まり、ね。時間とかはまた後で決めよ」
「うん」
約束を取り付けたので椅子から立ち上がると、気のせいじゃないくらい視線が集まっているのが分かった。
でも無視して自分の席に付く。机の中にノートを移していっていると、私の隣に立つ人がいた。
「ねえ、坂下さん」
昨日のあの運動部の女子だ。今日は昨日はいなかった女子を1人引き連れている。
「なに?」
「昨日の話の続きなんだけど、あんまり横溝さんと仲良くしない方がいいよ」
「なんで?」
面倒臭い上に鬱陶しいから、手を動かしながら返事をした。
本当は無視したいくらいだったけど、それをすると後々もっと面倒臭い事になりそうだし。
「中学の時の話なんだけどね」
急に声を潜め出すその子。そんな一方的に内緒話みたいにされても、耳は寄せてあげないんだけど。
「横溝さん、友だちが片思いしてるって知ってて相手の男子寝取ったらしいよ」
「はあ?」
流石にこのカチンは抑えきれずに声に出た。
目つきも悪くなってしまったらしく、その悪口大好き女子2人に視線を向けると、怯えたような顔をされた。
「なに、それ?」
「ゆ、有名な話だから同中は知ってる話だよ」
「そうじゃない。それ言いふらしてどうしたいの?あんたは?」
「わ、私はただ、坂下さんが被害に合わないようにって・・・」
あまり大声は出していなくても、周りが察してざわつき始めたのが分かった。
私には関係ないけどね。
「そうやって正義ヅラして人の悪口言って回ってるんだ?」
「悪口って言うか、本当の事だから・・・」
「じゃあ何?あんたはその現場をその目で目撃したって事?」
「それは、してないけど・・・」
「は?見てないのに本当の事って何?」
「みんなそう言ってるから・・・」
「じゃあ、そのみんなが言ってたら白い物も黒くなるんだ?馬鹿なの?その頭何のために付いてんの?」
「ひ、酷い・・・っ!」
嫌い。こういう女の子は大嫌い。
人の悪口は嬉々として言いふらすくせに、自分が悪く言われたら被害者みたいに泣いて。泣けば許されると思って。
そんな女の子らしさが、大嫌い。
「良かったね。また悪口のネタが出来たよ。今度は『私何もしてないのに坂下さんから悪口言われた』って言って回るんでしょ?」
泣いてる女の子がいれば、外野が集まってくる。
そんな風にして、周りを味方につけるのが上手いのも、叫び出したいくらい嫌い。
「ちょっと、何してるの」
「泣かせてんじゃん、最悪」
「大丈夫?あっち行こ」
私は、泣かない。「よく分からないけど泣いてる女の子を助けた」という正義感に浸ってる奴らに、負けたくないから。
大衆に迎合する馬鹿なんかに、理解してもらおうとも思わないから。
「おい、どうした?何かあったか?」
最悪な雰囲気は、大人の登場によって多少マシになる。
それくらいで解決するような空気でもなかったけど。
「坂下さんが中野さんを泣かせてました」
「坂下、本当か?」
傍観者だったくせに、キッチリと正義ヅラする奴も嫌い。本当に、みんな大嫌い。
「泣いてるんならそうなんじゃないですか」
先生は全く悪くないけれど、思わず八つ当たりしちゃうほどに、その時の私は自分の気持ちを抑えきれなくなっていたんだ。
「ちゃんと来たな」
案の定呼び出された職員室で、おじいちゃん一歩手前の新任の先生は思ってたよりも優しく声をかけてくれた。
「ほら、座れ」
差し出された椅子に腰かけると、先生はまっすぐに私の方を見ていた。
「何があったか聞いてもいいか?」
正直、大人はあまり好きじゃなかった。けどこの先生は、どこか今までの先生達とは違うような、そんな雰囲気を感じた。
「親友の、悪口を言われて・・・言い返しただけです」
「そうか」
「私謝りませんから」
「親友って、どの子だ?」
「まこまこ・・・横溝 真子さんです」
「あー、あの子か」
てっきり、「泣かした子に謝れ」とか「仲直りしろ」とか言われるんだと思ってたのに、先生は腕を組んで唇を尖らせながら天井を見た。
なんか、子どもみたい。
少しそうやって何かを考えていて、その後私の方に視線を戻すと、先生はニヤリと笑った。
「よし、分かった。もう行っていいぞ」
「え」
同級生を泣かせて職員室に呼び出されたのに、「もう行っていい」?
怒るために、呼び出したわけじゃなかったって事?
「良いんですか?」
「だからいいって言ってるだろ」
早く行けとでも言うように手をシッシッと振って、先生は机の上のパソコンを触り始めてしまった。
私は、釈然としない気持ちのまま、言われた通りに職員室を後にするしかなかった。
窓際の席で、窓の外を眺めていた。
「まこまこ、おはよ」
通学カバンを背負ったまま、まこまこの隣に立つ。誰からどう見ても、仲がいい事が分かるように。
「しーちゃん・・・おはよ」
困ったように微笑むまこまこは、明らかにクラスメイトの視線を気にしていた。
だから、彼女の横の席の椅子を拝借した。
「昨日の夜話してた店だけどさ、土曜日行かない?」
「あの、しーちゃん」
「なに?」
「あんまり私に話しかけない方がいいかも」
何となくそう言われる気はしてた。でもそれも全部分かった上で、私はまこまこに話しかけたんだ。
「まこまこ私の事嫌いになったの?」
「そうじゃないけど」
「じゃあいいじゃん。で、土曜日行くの?行かないの?」
「・・・行きたい」
「決まり、ね。時間とかはまた後で決めよ」
「うん」
約束を取り付けたので椅子から立ち上がると、気のせいじゃないくらい視線が集まっているのが分かった。
でも無視して自分の席に付く。机の中にノートを移していっていると、私の隣に立つ人がいた。
「ねえ、坂下さん」
昨日のあの運動部の女子だ。今日は昨日はいなかった女子を1人引き連れている。
「なに?」
「昨日の話の続きなんだけど、あんまり横溝さんと仲良くしない方がいいよ」
「なんで?」
面倒臭い上に鬱陶しいから、手を動かしながら返事をした。
本当は無視したいくらいだったけど、それをすると後々もっと面倒臭い事になりそうだし。
「中学の時の話なんだけどね」
急に声を潜め出すその子。そんな一方的に内緒話みたいにされても、耳は寄せてあげないんだけど。
「横溝さん、友だちが片思いしてるって知ってて相手の男子寝取ったらしいよ」
「はあ?」
流石にこのカチンは抑えきれずに声に出た。
目つきも悪くなってしまったらしく、その悪口大好き女子2人に視線を向けると、怯えたような顔をされた。
「なに、それ?」
「ゆ、有名な話だから同中は知ってる話だよ」
「そうじゃない。それ言いふらしてどうしたいの?あんたは?」
「わ、私はただ、坂下さんが被害に合わないようにって・・・」
あまり大声は出していなくても、周りが察してざわつき始めたのが分かった。
私には関係ないけどね。
「そうやって正義ヅラして人の悪口言って回ってるんだ?」
「悪口って言うか、本当の事だから・・・」
「じゃあ何?あんたはその現場をその目で目撃したって事?」
「それは、してないけど・・・」
「は?見てないのに本当の事って何?」
「みんなそう言ってるから・・・」
「じゃあ、そのみんなが言ってたら白い物も黒くなるんだ?馬鹿なの?その頭何のために付いてんの?」
「ひ、酷い・・・っ!」
嫌い。こういう女の子は大嫌い。
人の悪口は嬉々として言いふらすくせに、自分が悪く言われたら被害者みたいに泣いて。泣けば許されると思って。
そんな女の子らしさが、大嫌い。
「良かったね。また悪口のネタが出来たよ。今度は『私何もしてないのに坂下さんから悪口言われた』って言って回るんでしょ?」
泣いてる女の子がいれば、外野が集まってくる。
そんな風にして、周りを味方につけるのが上手いのも、叫び出したいくらい嫌い。
「ちょっと、何してるの」
「泣かせてんじゃん、最悪」
「大丈夫?あっち行こ」
私は、泣かない。「よく分からないけど泣いてる女の子を助けた」という正義感に浸ってる奴らに、負けたくないから。
大衆に迎合する馬鹿なんかに、理解してもらおうとも思わないから。
「おい、どうした?何かあったか?」
最悪な雰囲気は、大人の登場によって多少マシになる。
それくらいで解決するような空気でもなかったけど。
「坂下さんが中野さんを泣かせてました」
「坂下、本当か?」
傍観者だったくせに、キッチリと正義ヅラする奴も嫌い。本当に、みんな大嫌い。
「泣いてるんならそうなんじゃないですか」
先生は全く悪くないけれど、思わず八つ当たりしちゃうほどに、その時の私は自分の気持ちを抑えきれなくなっていたんだ。
「ちゃんと来たな」
案の定呼び出された職員室で、おじいちゃん一歩手前の新任の先生は思ってたよりも優しく声をかけてくれた。
「ほら、座れ」
差し出された椅子に腰かけると、先生はまっすぐに私の方を見ていた。
「何があったか聞いてもいいか?」
正直、大人はあまり好きじゃなかった。けどこの先生は、どこか今までの先生達とは違うような、そんな雰囲気を感じた。
「親友の、悪口を言われて・・・言い返しただけです」
「そうか」
「私謝りませんから」
「親友って、どの子だ?」
「まこまこ・・・横溝 真子さんです」
「あー、あの子か」
てっきり、「泣かした子に謝れ」とか「仲直りしろ」とか言われるんだと思ってたのに、先生は腕を組んで唇を尖らせながら天井を見た。
なんか、子どもみたい。
少しそうやって何かを考えていて、その後私の方に視線を戻すと、先生はニヤリと笑った。
「よし、分かった。もう行っていいぞ」
「え」
同級生を泣かせて職員室に呼び出されたのに、「もう行っていい」?
怒るために、呼び出したわけじゃなかったって事?
「良いんですか?」
「だからいいって言ってるだろ」
早く行けとでも言うように手をシッシッと振って、先生は机の上のパソコンを触り始めてしまった。
私は、釈然としない気持ちのまま、言われた通りに職員室を後にするしかなかった。
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