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第2章 成人祝いのパーティ
11話 パーティへの参加
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王族としての、最も格式の高い服なんて見るのも着るのも初めてで。
今日の為に誂えたという、薄い水色のシャツにグレーのジャケット。僕の目と髪と同系色を使っているのはそういう趣向なのだろうか。
けれど胸元は、ネクタイはオレンジ色だった。
夕日みたいに突き抜けるようなオレンジ色。綺麗な色だった。
着替えた後は生まれて初めて髪の毛もセットされた。
女性のように髪に油を付けて、前髪をしっかりと撫でつけられたどころかカチカチに固められたせいで髪がヘルメットのようになってしまって。
その上あろうことか化粧までされた。
いや、女性のお化粧に比べればこんなの化粧の内に入らないと言われそうだけど。でもさ、僕の意志に関係なくよく分からないものを顔に塗られたり顔を筆ではたかれたり何か描かれたりして、逃げ出さなかったのを褒めて欲しいくらいだったよね。
そんな我慢があって完成した、ハンザ国王子の装い。
姿鏡を見るとそこには見慣れない男性が立っていた。
「うわ……」
男性の顔が物凄く嫌そうに歪む。するとすかさずお尻をはたかれた。
「そんな顔しない!笑顔!」
「……こう?」
取ってつけたような笑顔を鏡越しに見て、ハルナは満足そうだった。
「そうそう。そうしてればちゃんとイケメンに見えるんですから」
「イケメンかぁ……」
人の美醜はよく分からない。苦労の末の皴を、努力の末の傷を美しく思うのは僕だけのようで、世間一般ではこんな風にあまり特徴のない顔がイケメンとされるのだと言うのだから。
「出発まではまだ時間がありますが、それまでは」
「分かってるよダンスだろ」
色々な予定を後回しにして取り組んできたダンスの練習。
男性相手だと上手く踊れるのに、女性を相手にした途端ガタガタで一時期は「ダンスは辞退した方が」とまで言われた。
けれど、それについては何とか解決した。だから今日のおさらいの練習で完璧になるはずなんだ。
「ダンスの時ってこの服のままなの?」
「えぇ、本番と同じ状態での練習ですので。ただ練習のお相手の女性が『もう無理』だそうで」
「……え?」
「今日のお相手は男性だそうです。頑張ってらしてください」
「えぇえ??」
これは、まずい、かもしれない……。
まずいかもしれない……!!!
滅多に使わない馬車で移動したノイマン公国。
王城の敷地内で馬車から降りると、浮き足立ったような活気がここからでも分かった。
お父様とお母様に続いて、王城の正面玄関へ。すると猛々しい演奏が、うっすらと聞こえてきた。
ノイマン公国特有の、縦長の太鼓と手のひらサイズの打楽器、あとワイルドな大笛と……え、うちの国の楽器が混ざってるけど……。
まぁ、いいか。あれについては厳密に権利とかがある訳じゃないし。
会場だと言う中庭に近づくにつれて人のざわめきも聞こえてきた。
演奏団の前を横切ると、開け放たれた扉の向こうに一目でそれと分かる景色も見えてきた。
パーティ会場だ。
それも、初めて見る規模の、とても上品なお祭りって感じの。
感嘆が漏れそうになったけど、すんでのところで堪えた。
今日の僕はハンザの王子。気品が大事。
にこやかにそして優雅に。
無駄口は叩かないように。
マナーの先生のお陰と、壁になってくれるお父様とお母様のお陰で、聞き馴染みのない国の使者の方々へのご挨拶は上々。
イントネーションを除けば言葉の大部分がそのまま通じるのって、とても助かる。
大陸の主要な言葉とこっちの言葉が似ているお陰だ。この言語を選択してくれたご先祖様に感謝しなきゃ。
「これからの時期はこの香水の原料である花が一面に咲き乱れてとても綺麗なんですよ。ぜひ今度我が国にいらっしゃってください。ご案内させていただきます」
背が低く童顔で、笑顔が得意なお母様は使者の方にも人気だ。
と言うか、お父様が口下手だからお母様がカバーしてるのか。
「光栄です。私も大陸の出身なのですが、残念な事にあまり国外には出た事がなかったので」
「エリ王妃は大陸ご出身なんですね……どちらの国なのですか?」
「ふふ、秘密です。今度お会いする機会がありましたらその時お話いたしますわ」
普段は怖いのに、よそ行きのお母様はとてもお可愛らしい。
そしてお母様のお可愛らしさに、この使者の方も射抜かれてしまったらしい。
僕たちがペコリと頭を下げても、不動でいらっしゃった。可哀想なことに。
これが最後の使者だったので、僕たちは中央近くまで移動した。
挨拶をしながら軽食をつまんだ程度だったので、ちょっと小腹が空いていて、だからもう少し何か食べようとお父様が仰って。
そんな時だった。
ワッと歓声が城の方から聞こえてきた。
そして間もなく、お城の、中庭へ続く扉の向こうから、その人は現れた。
王族としての、最も格式の高い服なんて見るのも着るのも初めてで。
今日の為に誂えたという、薄い水色のシャツにグレーのジャケット。僕の目と髪と同系色を使っているのはそういう趣向なのだろうか。
けれど胸元は、ネクタイはオレンジ色だった。
夕日みたいに突き抜けるようなオレンジ色。綺麗な色だった。
着替えた後は生まれて初めて髪の毛もセットされた。
女性のように髪に油を付けて、前髪をしっかりと撫でつけられたどころかカチカチに固められたせいで髪がヘルメットのようになってしまって。
その上あろうことか化粧までされた。
いや、女性のお化粧に比べればこんなの化粧の内に入らないと言われそうだけど。でもさ、僕の意志に関係なくよく分からないものを顔に塗られたり顔を筆ではたかれたり何か描かれたりして、逃げ出さなかったのを褒めて欲しいくらいだったよね。
そんな我慢があって完成した、ハンザ国王子の装い。
姿鏡を見るとそこには見慣れない男性が立っていた。
「うわ……」
男性の顔が物凄く嫌そうに歪む。するとすかさずお尻をはたかれた。
「そんな顔しない!笑顔!」
「……こう?」
取ってつけたような笑顔を鏡越しに見て、ハルナは満足そうだった。
「そうそう。そうしてればちゃんとイケメンに見えるんですから」
「イケメンかぁ……」
人の美醜はよく分からない。苦労の末の皴を、努力の末の傷を美しく思うのは僕だけのようで、世間一般ではこんな風にあまり特徴のない顔がイケメンとされるのだと言うのだから。
「出発まではまだ時間がありますが、それまでは」
「分かってるよダンスだろ」
色々な予定を後回しにして取り組んできたダンスの練習。
男性相手だと上手く踊れるのに、女性を相手にした途端ガタガタで一時期は「ダンスは辞退した方が」とまで言われた。
けれど、それについては何とか解決した。だから今日のおさらいの練習で完璧になるはずなんだ。
「ダンスの時ってこの服のままなの?」
「えぇ、本番と同じ状態での練習ですので。ただ練習のお相手の女性が『もう無理』だそうで」
「……え?」
「今日のお相手は男性だそうです。頑張ってらしてください」
「えぇえ??」
これは、まずい、かもしれない……。
まずいかもしれない……!!!
滅多に使わない馬車で移動したノイマン公国。
王城の敷地内で馬車から降りると、浮き足立ったような活気がここからでも分かった。
お父様とお母様に続いて、王城の正面玄関へ。すると猛々しい演奏が、うっすらと聞こえてきた。
ノイマン公国特有の、縦長の太鼓と手のひらサイズの打楽器、あとワイルドな大笛と……え、うちの国の楽器が混ざってるけど……。
まぁ、いいか。あれについては厳密に権利とかがある訳じゃないし。
会場だと言う中庭に近づくにつれて人のざわめきも聞こえてきた。
演奏団の前を横切ると、開け放たれた扉の向こうに一目でそれと分かる景色も見えてきた。
パーティ会場だ。
それも、初めて見る規模の、とても上品なお祭りって感じの。
感嘆が漏れそうになったけど、すんでのところで堪えた。
今日の僕はハンザの王子。気品が大事。
にこやかにそして優雅に。
無駄口は叩かないように。
マナーの先生のお陰と、壁になってくれるお父様とお母様のお陰で、聞き馴染みのない国の使者の方々へのご挨拶は上々。
イントネーションを除けば言葉の大部分がそのまま通じるのって、とても助かる。
大陸の主要な言葉とこっちの言葉が似ているお陰だ。この言語を選択してくれたご先祖様に感謝しなきゃ。
「これからの時期はこの香水の原料である花が一面に咲き乱れてとても綺麗なんですよ。ぜひ今度我が国にいらっしゃってください。ご案内させていただきます」
背が低く童顔で、笑顔が得意なお母様は使者の方にも人気だ。
と言うか、お父様が口下手だからお母様がカバーしてるのか。
「光栄です。私も大陸の出身なのですが、残念な事にあまり国外には出た事がなかったので」
「エリ王妃は大陸ご出身なんですね……どちらの国なのですか?」
「ふふ、秘密です。今度お会いする機会がありましたらその時お話いたしますわ」
普段は怖いのに、よそ行きのお母様はとてもお可愛らしい。
そしてお母様のお可愛らしさに、この使者の方も射抜かれてしまったらしい。
僕たちがペコリと頭を下げても、不動でいらっしゃった。可哀想なことに。
これが最後の使者だったので、僕たちは中央近くまで移動した。
挨拶をしながら軽食をつまんだ程度だったので、ちょっと小腹が空いていて、だからもう少し何か食べようとお父様が仰って。
そんな時だった。
ワッと歓声が城の方から聞こえてきた。
そして間もなく、お城の、中庭へ続く扉の向こうから、その人は現れた。
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