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第2章 成人祝いのパーティ
12話 夢見心地
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赤銅色の髪を結い上げて、髪飾りを刺して。
耳と胸元には普段つけない飾りをつけて。
ドレスは、おそらく外国の形のものだった。あんなに、肩と胸元が大きく露出したドレスはノイマン公国にもないから。
そう、ドレス。
女性らしさが強調された、初めて見るドレス。
僕のネクタイと同じ、夕日のオレンジを吸い込んだような色のドレスを、レーカは着ていた。
なんて、なんて美しい人だろうか。
こんなに美しい人がいるなんて。こんなに美しい人が、こんなにも近い距離にいるなんて。
「お集まりの皆様、ご臨席くださり心より感謝いたします。そして改めてご挨拶申し上げます。私がレーカ・ノイマンです」
海鳥のように遠くまで響く、澄んだ綺麗な声。
気高さを秘めた、優しい胡桃色の瞳。
僕が持ちうる全てを捧げて讃えたくなるほど、尊い存在の人。
君は、知らないのだろうけれど。
たくさんの人に囲まれながらも眩しい笑顔は良く見えて、君が、少しずつこちらへと移動してくる。
君が、僕の元へ歩いて来る。
あぁやはり太陽だ君は。
僕の太陽。僕の未来。僕の宝石。僕の、何よりも大切なレーカ。
姿が見えるだけで幸せだというのに、レーカは僕の目の前に来てくれた。
伏せた目とはにかむ様な笑みで、お父様とお母様に挨拶をしていた。
そして僕に、僕の方へと顔を向ける。
「シュン様、素敵なお召し物でございますね」
「あ、れ、レーカ様こそ、あの、素敵な装いで……」
「ありがとうございます。慣れないドレスでしたので実際に着てみるまでは心配していたのです」
よそ行きの喋り方よそ行きの笑顔。それでも君の微笑みは、僕の頭を真っ白にするには十分すぎて。
「本日ダンスのお相手をしてくださるとか。楽しみにしていますね」
「はい!」
反射的に普段の喋り方で答えてしまった。敬語はちゃんと使ってたから大丈夫。
なはず。
「ではまた後ほど」
優雅に一礼しながらクルッと向きを変えると、レーカからは良い匂いがした。
花の蜜のような華やかな香り。昔僕が調合した香油と似た、彼女のイメージにぴったりな香りだった。
それからパーティは多分良い雰囲気で進んだ。
レーカに見惚れすぎてお母様に3回ほど足を踏まれてしまったけど、パーティ自体は盛り上がっていた。多分。
飲み物は口にした。けれど食べ物は食べたんだか食べてないんだか自分でもよく分からないまま時間が過ぎて、そしてあの時間が訪れた。
うちの国で作った自動演奏の機械が、外国の艶やかな曲を流し始めたのが合図。
誰かと喋っていたレーカが、僕を見た。
「行きなさい」とお母様が囁いた。
拍子外れな心臓の音と、足裏に伝わる芝生の感触のむず痒さ。
僕に気づいて割れていく人の壁。
僕がたどり着くのを、胡桃色の瞳はじっと見つめてくれていた。
君の前で立ち止まり、右手を差し出す。
恭しく、君への敬意を込めて。
「レーカ様、私と踊っていただけませんか?」
「喜んで」
君の手が僕の手に重ねられ、その手を握った。
優しく握って、そして会場の中央に誘うと、僕たちの為だけの空間ができていた。
僕と君が踊るためだけの空間。
音楽も観客も、僕たちの為のもの。
レーカの手を握り直し、腰に手を添える。
君の手が僕の背に回されて、信じられないくらい近くに君の温もりを感じて。
浮足立つってこう言う事かって思った。足に力が入らないのに僕の足はちゃんと動いていた。
「もっとしっかり握らないとやり辛い」
「あ、ごめん」
レーカの顔がすぐ近くにあった。だからそっちは見ちゃいけないような気がした。
「これくらい?」
手を、しっかりと握る。
レーカの、僕よりも小さい手を。
「そう、腰もちゃんとホールドして」
腰に添えてただけの手を、腕全体を彼女の腰に密着させて、グッと引き寄せて。
「そう、それで良い」
彼女が微笑んでいるのが、声だけで分かった。
無意識に足が踏み出していくだけのリードに、彼女はちゃんと着いて来てくれた。
波に揺蕩うようなステップに、レーカは着いて来る。
身を任せるわけでもなく、でも逆らってぶつかるわけでもなく、ちゃんと自分で立ちながら僕に寄り添うように踊ってくれる。
君と踊るとダンスもこんなに楽しいなんて……。
こんなに、こんなに幸せだなんて……。
「見違えたな」
「え?」
「ちゃんと王子に見える」
「あ、りがとう……」
耳と胸元には普段つけない飾りをつけて。
ドレスは、おそらく外国の形のものだった。あんなに、肩と胸元が大きく露出したドレスはノイマン公国にもないから。
そう、ドレス。
女性らしさが強調された、初めて見るドレス。
僕のネクタイと同じ、夕日のオレンジを吸い込んだような色のドレスを、レーカは着ていた。
なんて、なんて美しい人だろうか。
こんなに美しい人がいるなんて。こんなに美しい人が、こんなにも近い距離にいるなんて。
「お集まりの皆様、ご臨席くださり心より感謝いたします。そして改めてご挨拶申し上げます。私がレーカ・ノイマンです」
海鳥のように遠くまで響く、澄んだ綺麗な声。
気高さを秘めた、優しい胡桃色の瞳。
僕が持ちうる全てを捧げて讃えたくなるほど、尊い存在の人。
君は、知らないのだろうけれど。
たくさんの人に囲まれながらも眩しい笑顔は良く見えて、君が、少しずつこちらへと移動してくる。
君が、僕の元へ歩いて来る。
あぁやはり太陽だ君は。
僕の太陽。僕の未来。僕の宝石。僕の、何よりも大切なレーカ。
姿が見えるだけで幸せだというのに、レーカは僕の目の前に来てくれた。
伏せた目とはにかむ様な笑みで、お父様とお母様に挨拶をしていた。
そして僕に、僕の方へと顔を向ける。
「シュン様、素敵なお召し物でございますね」
「あ、れ、レーカ様こそ、あの、素敵な装いで……」
「ありがとうございます。慣れないドレスでしたので実際に着てみるまでは心配していたのです」
よそ行きの喋り方よそ行きの笑顔。それでも君の微笑みは、僕の頭を真っ白にするには十分すぎて。
「本日ダンスのお相手をしてくださるとか。楽しみにしていますね」
「はい!」
反射的に普段の喋り方で答えてしまった。敬語はちゃんと使ってたから大丈夫。
なはず。
「ではまた後ほど」
優雅に一礼しながらクルッと向きを変えると、レーカからは良い匂いがした。
花の蜜のような華やかな香り。昔僕が調合した香油と似た、彼女のイメージにぴったりな香りだった。
それからパーティは多分良い雰囲気で進んだ。
レーカに見惚れすぎてお母様に3回ほど足を踏まれてしまったけど、パーティ自体は盛り上がっていた。多分。
飲み物は口にした。けれど食べ物は食べたんだか食べてないんだか自分でもよく分からないまま時間が過ぎて、そしてあの時間が訪れた。
うちの国で作った自動演奏の機械が、外国の艶やかな曲を流し始めたのが合図。
誰かと喋っていたレーカが、僕を見た。
「行きなさい」とお母様が囁いた。
拍子外れな心臓の音と、足裏に伝わる芝生の感触のむず痒さ。
僕に気づいて割れていく人の壁。
僕がたどり着くのを、胡桃色の瞳はじっと見つめてくれていた。
君の前で立ち止まり、右手を差し出す。
恭しく、君への敬意を込めて。
「レーカ様、私と踊っていただけませんか?」
「喜んで」
君の手が僕の手に重ねられ、その手を握った。
優しく握って、そして会場の中央に誘うと、僕たちの為だけの空間ができていた。
僕と君が踊るためだけの空間。
音楽も観客も、僕たちの為のもの。
レーカの手を握り直し、腰に手を添える。
君の手が僕の背に回されて、信じられないくらい近くに君の温もりを感じて。
浮足立つってこう言う事かって思った。足に力が入らないのに僕の足はちゃんと動いていた。
「もっとしっかり握らないとやり辛い」
「あ、ごめん」
レーカの顔がすぐ近くにあった。だからそっちは見ちゃいけないような気がした。
「これくらい?」
手を、しっかりと握る。
レーカの、僕よりも小さい手を。
「そう、腰もちゃんとホールドして」
腰に添えてただけの手を、腕全体を彼女の腰に密着させて、グッと引き寄せて。
「そう、それで良い」
彼女が微笑んでいるのが、声だけで分かった。
無意識に足が踏み出していくだけのリードに、彼女はちゃんと着いて来てくれた。
波に揺蕩うようなステップに、レーカは着いて来る。
身を任せるわけでもなく、でも逆らってぶつかるわけでもなく、ちゃんと自分で立ちながら僕に寄り添うように踊ってくれる。
君と踊るとダンスもこんなに楽しいなんて……。
こんなに、こんなに幸せだなんて……。
「見違えたな」
「え?」
「ちゃんと王子に見える」
「あ、りがとう……」
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