君の国と僕の国

藤ノ千里

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第2章 成人祝いのパーティ

13話 目覚めの時間

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 レーカに褒められることなんて滅多にないからステップを踏み間違えちゃって。けど、レーカはちゃんと着いてきてくれた。
「おい」
「ごめん」
「まぁ、突貫練習の割には踊れてる方だけどな」
「え、なんで知ってるの?」
 思わずレーカを見たら、レーカもこっちを見ていて。
 いたずらな笑みで見ていて。
「勘だ」
 可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて。
 全身の血がぶわっと上半身に集まって、赤くなる前の顔を慌てて逸らした。
「れ、レーカは、その、凄い綺麗だね」
 思わず本心が口から溢れ出て、焦った。
 ダンスを乱さないように気をつけてるせいでいつもより口下手だ僕。
「あ、色、色が凄く綺麗で、似合ってる……!海風に靡いた君の髪の色みたいで」
「……ありがとう」
 握った手の熱から、飛び出しそうな心臓の音から、君への想いが伝わってしまいそう。
 僕今、どんな顔してる?
「凄い大人っぽいし、凄い格好いいね」
「お前もあと2ヶ月で成人だろ?」
「うん」
「偉業とやらはクリアできそうなのか?」
「うん、問題ないよ。お披露目には招待してもいい?」
 突然、レーカの足が止まった。
 そして彼女が、僕から1歩離れる。
 手が、腕が、体が1歩分遠ざかる。
 まるで僕たちの間に壁でもあるみたいに。
「それについては」
「失礼いたします!!」
 緊迫感のある声に何事かと振り返る。
 レーカの声を遮ったのは、ノイマンの船服を着た人だった。
 確か彼は航海省の……。
「陛下に緊急のご報告です!死の海にて正体不明の船影あり!入港を希望している模様!」
 レーカの父君であるノーマン王は、報告を受け厳しい顔をした。
 各国のお客人が一斉にざわめき立つ。
「国旗は?」
「未だ確認できておりません!しかし船影から武装はしていない可能性が高く」
「ご報告申し上げます!」
 またまた駆け込んできた同じ格好の人。
 彼は顔見知りだ。しかも若いけれど力のある、頼りになる船員だ。
「ロッツランド王国の国旗を掲げた船が入港を求めています!いかがいたしましょう?」
「速やかに許可を」
「「はっ!」」
 船員2人が走って行くのを追いかけるように、レーカはノーマン王へ駆け寄った。
 風に乗ってふわりと、彼女の香りだけが僕に届く。
 ユーリィ王妃が使者を宥め始める向こう側で、レーカはノーマン王と少し言葉を交わし、そして二人で城の方へと歩いていった。
 おそらく、船に乗って来たであろうロッツランド王国からのお客様をお迎えする為。
 ノイマンの船しか渡れなかったはずの「死の海」を超えてきた相手を、見定めに行くため。


------
 城のすぐ目の前にあるこの国唯一の港。
 そこに着港したその船は、我が国最大の船よりひと回り大きく、変わった形の帆を付けていた。
 真新しい船体から降りてくる船員。
 そしてその中に、見逃す事の出来ない顔があった。
「シモン・ロッツランド。第2王子です」
「……分かった」
 小さく囁きお父様に伝えながら、体裁は保った。
 第2王子とはいえ、相手方は大国の皇太子。
 噂によると御年20で、以前の婚約はお相手の国政を鑑みて破棄されたとか。そして現在は、婚約相手を選り好みされているとか。
 歳以外は真偽が不明だが、婚約者が居ないという事実だけは確認している。
「入港許可を頂き感謝いたします。こちら」
「シモン・ロッツランドです、ノーマン王。突然のお伺いにも関わらずお出迎えいただき心より感謝いたします」
 従者を押しのけるようにしてお父様に握手を求めるシモン様は、金の髪に金の目といういかにもなお姿であられた。
 下船したばかりであるのに正装をされていらっしゃるのも、父の手を握った直後にハグをされるのも、板に着いた仰々しさでいらっしゃった。
「こちらこそ、わざわざおいで下さり歓迎いたします、シモン様」
 お父様は動じない。
 一国の王として相応しき貫禄で返答されておられ、どこかの馬鹿にも見習って貰いたいものだ。
「姫君の成人を祝うパーティと伺い、支度に少し手間取ってしまいました。遅ればせながら祝いの席に参加させていただいても?」
「もちろんです。ですが、その前に紹介をさせて下さい。娘のレーカです」
 お父様の導きで、金の目がこちらを向く。
 朗らかな表情とは裏腹に、鋭く、人を値踏みするかのような目が。
「初めまして、レーカ・ノイマンと申します。以後お見知り置き下さいませ」
 スカートの裾をつまみ、膝を少し曲げ、相手を真っ直ぐに見ながら挨拶をした。
 頭は下げなかった。それが最適だと判断したから。
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