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第2章 成人祝いのパーティ
18話 ただそれだけの願い
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「いてっ!」
ガッ!と、ガンダーの容赦ないゲンコツが頭の上に降ってきて、目の前にキラキラと火花が散って。
頭が割れたかと思った。めちゃくちゃ痛かった。
衝撃が去っても拳がめり込んだであろうところがズキンズキンと悲鳴を上げていて、めちゃくちゃ痛くて。
え、本当に割れてないよね?僕の頭形変わってないよね?
頭頂部に手をやると、割れてはなかった。
けど、盛り上がってはいた。たんこぶができてた。
たんこぶをさすると痛みがちょっとマシになるから、さすり続けながらガンダーに怨めしい表情をして見せた。
「正気に戻ったか?」
「僕ずっと正気だよ」
「どアホ!見てみろ!」
ガンダーの怒鳴り声がたんこぶにズキズキ響く。
痛みに眉を顰めつつ言われた方を見ると、作業をしていたみんなが座り込んでいた。
それだけじゃなかった。その顔に各々疲労が色濃く滲んでいる事に、初めて気づいた。
1日と半分、ずっと同じ空間で作業していて、初めて気づいたんだ。
「一国の主になる予定の人間が、疲労で国民を殺す気かアホ」
「……ごめん」
周りと足並みを揃えるのが苦手で、いつも1人で熱中しすぎてしまう生まれつきの悪い癖。
それでも目的の為には他人の力が必要で、だから気を遣いながら無理をさせないように細心の注意を払って来たのに。
やらかしてしまった。ことを急いて目の前が見えなくなっていた。
たんこぶなんかの痛みより痛烈な自責の念に心臓が締め付けられる。
現実と言う壁の前に、僕はいつも無力だ。
「今日はもう上がりだ。作業の再開は明日、良いな?」
「……分かった」
肩を落とす僕の前で、ガンダーとクーリィが皆に解散を告げて周る。
置き去りにされた材料と工具達はまだ元気なのに、僕はまだまだ動けるのに。
早く仕上げないと、間に合わないかもしれないのに。
人が去り、どこか温度が下がったような作業スペースで、置いてあったハンマーを手に取って。
僕1人であっても、寝ずに作業を続ければ1週間は早く仕上がるだろうと、作業スケジュールを頭の中で組み直して。
そして、材料を手に……。
「おいボケナス。今すぐ手に握ってんの下ろさねぇとケツも腫らしてやるぞ」
ガンダーのダミ声が僕を現実に引き戻した。
反省し直しつつ手に持っていたものを下ろし、この作業場でのボスの顔色を伺うと、まだ怒った顔をしていた。
「……ごめんなさい」
「来い。うちでメシにすんぞ」
「はい」
ガンダーの家でシャワーを浴びさせてもらってからの朝食。
服はクーリィに借りた。着替えてから、元々着ていた服の汚れ方に驚いた。
「どうぞ召し上がれ」
「ありがとうございますミキさん」
クーリィの奥さんのミキさんは料理上手で優しくて、その上4人も子どもを育てている凄い人だ。
その上「美人で若い」と評判らしいしね。
「いいえ、いっぱい食べなね育ち盛りなんだから」
「はい!」
たまにご馳走になるけどミキさんの料理は「お母さんの料理」って感じで美味しくて好きだ。
ついつい沢山食べちゃって、ついつい寛いじゃう感じ。
絵に描いたような素敵な家族で少しだけ羨ましい。
「クーリィ、お前も次からこいつが暴走したらゲンコツ落としてやれ。そうでもしねぇと止まんねぇんだよ昔から」
「でも養父さん、流石にあれは……」
「いんだよ。こいつぁお前より下っ端なんだから」
ガンダーの養子のクーリィは、目の色も髪の色もガンダーと違う。
ミキさんはガンダーと同じ色だけど、他人だからやっぱり全然似てない。
全員血が繋がってないのに家族になってる。なのに心地よい不思議な感じ。
「この国では金賞持ちのお前より銀賞のこいつのが下だって前にも教えただろ。血筋も生まれも関係ねぇ、分かったな」
「理屈は分かってるけど……」
そもそもクーリィ、他国出身だし、うちの国の独特の文化が受け入れ難いのは仕方ない。
だから本当は僕がちゃんと配慮すべきなんだよなぁ……。
「ごめんねクーリィ。でも本当に僕の事は一般市民と思ってくれていいから」
「一般的な市民はあんな暴走しねぇけどな」
「ごめんなさい……」
本気で反省しながらも、ここしばらくは抑えきれていた焦燥感がまた頭をもたげてくる。
いつも僕を突き動かす原動力。君に、レーカに認められたいという、ただそれだけの願い。
僕が欲しいのはそれだけなのに。それだけ叶えば他には何もいらないのに。
なのにまだ届かない。
まるで星のように君はいつも遠すぎるから。
「あなたの健康も心配してるのよ」
ポンポンと、背中を優しく撫ぜてくれたミキさんはとても優しい目をしていた。
「お義父さんも夫も、私も、それ以外の人もみんな。あなたが頑張り過ぎて体を壊してしまうんじゃないかって心配なの」
ミキさんはそう言うと、視線を向こうに向けた。
そっちを見ると、やっぱり怒ったようなガンダーはご飯を食べ続けてたけど、クーリィはうんうんと頷いてくれていた。
ガッ!と、ガンダーの容赦ないゲンコツが頭の上に降ってきて、目の前にキラキラと火花が散って。
頭が割れたかと思った。めちゃくちゃ痛かった。
衝撃が去っても拳がめり込んだであろうところがズキンズキンと悲鳴を上げていて、めちゃくちゃ痛くて。
え、本当に割れてないよね?僕の頭形変わってないよね?
頭頂部に手をやると、割れてはなかった。
けど、盛り上がってはいた。たんこぶができてた。
たんこぶをさすると痛みがちょっとマシになるから、さすり続けながらガンダーに怨めしい表情をして見せた。
「正気に戻ったか?」
「僕ずっと正気だよ」
「どアホ!見てみろ!」
ガンダーの怒鳴り声がたんこぶにズキズキ響く。
痛みに眉を顰めつつ言われた方を見ると、作業をしていたみんなが座り込んでいた。
それだけじゃなかった。その顔に各々疲労が色濃く滲んでいる事に、初めて気づいた。
1日と半分、ずっと同じ空間で作業していて、初めて気づいたんだ。
「一国の主になる予定の人間が、疲労で国民を殺す気かアホ」
「……ごめん」
周りと足並みを揃えるのが苦手で、いつも1人で熱中しすぎてしまう生まれつきの悪い癖。
それでも目的の為には他人の力が必要で、だから気を遣いながら無理をさせないように細心の注意を払って来たのに。
やらかしてしまった。ことを急いて目の前が見えなくなっていた。
たんこぶなんかの痛みより痛烈な自責の念に心臓が締め付けられる。
現実と言う壁の前に、僕はいつも無力だ。
「今日はもう上がりだ。作業の再開は明日、良いな?」
「……分かった」
肩を落とす僕の前で、ガンダーとクーリィが皆に解散を告げて周る。
置き去りにされた材料と工具達はまだ元気なのに、僕はまだまだ動けるのに。
早く仕上げないと、間に合わないかもしれないのに。
人が去り、どこか温度が下がったような作業スペースで、置いてあったハンマーを手に取って。
僕1人であっても、寝ずに作業を続ければ1週間は早く仕上がるだろうと、作業スケジュールを頭の中で組み直して。
そして、材料を手に……。
「おいボケナス。今すぐ手に握ってんの下ろさねぇとケツも腫らしてやるぞ」
ガンダーのダミ声が僕を現実に引き戻した。
反省し直しつつ手に持っていたものを下ろし、この作業場でのボスの顔色を伺うと、まだ怒った顔をしていた。
「……ごめんなさい」
「来い。うちでメシにすんぞ」
「はい」
ガンダーの家でシャワーを浴びさせてもらってからの朝食。
服はクーリィに借りた。着替えてから、元々着ていた服の汚れ方に驚いた。
「どうぞ召し上がれ」
「ありがとうございますミキさん」
クーリィの奥さんのミキさんは料理上手で優しくて、その上4人も子どもを育てている凄い人だ。
その上「美人で若い」と評判らしいしね。
「いいえ、いっぱい食べなね育ち盛りなんだから」
「はい!」
たまにご馳走になるけどミキさんの料理は「お母さんの料理」って感じで美味しくて好きだ。
ついつい沢山食べちゃって、ついつい寛いじゃう感じ。
絵に描いたような素敵な家族で少しだけ羨ましい。
「クーリィ、お前も次からこいつが暴走したらゲンコツ落としてやれ。そうでもしねぇと止まんねぇんだよ昔から」
「でも養父さん、流石にあれは……」
「いんだよ。こいつぁお前より下っ端なんだから」
ガンダーの養子のクーリィは、目の色も髪の色もガンダーと違う。
ミキさんはガンダーと同じ色だけど、他人だからやっぱり全然似てない。
全員血が繋がってないのに家族になってる。なのに心地よい不思議な感じ。
「この国では金賞持ちのお前より銀賞のこいつのが下だって前にも教えただろ。血筋も生まれも関係ねぇ、分かったな」
「理屈は分かってるけど……」
そもそもクーリィ、他国出身だし、うちの国の独特の文化が受け入れ難いのは仕方ない。
だから本当は僕がちゃんと配慮すべきなんだよなぁ……。
「ごめんねクーリィ。でも本当に僕の事は一般市民と思ってくれていいから」
「一般的な市民はあんな暴走しねぇけどな」
「ごめんなさい……」
本気で反省しながらも、ここしばらくは抑えきれていた焦燥感がまた頭をもたげてくる。
いつも僕を突き動かす原動力。君に、レーカに認められたいという、ただそれだけの願い。
僕が欲しいのはそれだけなのに。それだけ叶えば他には何もいらないのに。
なのにまだ届かない。
まるで星のように君はいつも遠すぎるから。
「あなたの健康も心配してるのよ」
ポンポンと、背中を優しく撫ぜてくれたミキさんはとても優しい目をしていた。
「お義父さんも夫も、私も、それ以外の人もみんな。あなたが頑張り過ぎて体を壊してしまうんじゃないかって心配なの」
ミキさんはそう言うと、視線を向こうに向けた。
そっちを見ると、やっぱり怒ったようなガンダーはご飯を食べ続けてたけど、クーリィはうんうんと頷いてくれていた。
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