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1 愛の告白
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「君だけを愛している」
「サム、もちろん私も愛しているわ」
私、伯爵令嬢のリリー・スティアートは八年前からずっと好きだった男の愛の囁きを初めて聴いている。この大柄の男からどうやって、蕩けるような甘い声が出るのかと不思議に思いながらぼーっとしてしまう。
ちゅっ、ちゅっと熱い口付けを何度も交わし、幸せそうに見つめ合っている。私はこの様子をこれ以上見ていることができず、目を逸らして下を向いた。
――そう、私がずっと好きだった男は目の前で別の女に愛を囁き、口付けを交わしているのだ。
ああ……下を向いたのは間違いだった。なぜなら、ボタボタととめどなく涙が溢れてくるからだ。
「嘘つき……元気な子が好きって言ってたのに」
『俺は君の元気でお転婆なところ好きだよ。可愛いし、こっちまで元気になる』
愛されている彼女はどこからどう見ても貴族令嬢そのものの。女性らしくて清楚な感じだ。こういうタイプが好きなら早くそう言って欲しかった。お前には見込みがないから諦めろと……
彼と付き合っていたわけでも、婚約していたわけではない。私の一方的な片想い。まさか、告白する前に終わってしまうなんて。
「あまりに滑稽だわ……」
私は耐えきれなくなり、溢れる涙もそのままにその場を走り去る。
ああ……彼に見て欲しくて背伸びして履いたいつもより高めのヒールの靴はなんて走りにくいのかしら。サムに綺麗と言って欲しくてお化粧も髪も時間をかけたし、ドレスも大人っぽい物に新調したのに、もう全てどうでも良くなった。
私は何年も前に彼に貰ったブレスレットを大事にして毎日のように付けていた。馬鹿だ。本当に私だけが……好きだったんだ。
ベシャっ
私はヒールが引っかかってこけてしまった。足から血が出ているのかドレスが赤く染まる。それでも痛みを感じないのは……心の方が痛いからなのかしら。
「リリー! お前……これはどうしたんだ? なぜ泣いて……」
最悪だ。目の前には目を見開き驚いた顔をしてるアイザックが立っていた。こいつは私が泣き顔を一番見られたくない相手だ。彼は私と犬猿の仲で、いつも喧嘩ばかりしている幼馴染。今日の私はとことん運がないみたい。
彼は私がサムを好きだと言うたびに「大人のサムさんが、お前なんてガキを相手にするはずないから諦めろ」と言っていた。そう、本当に彼の言う通りだったのだ。
彼は周りの様子をぐるっと確認し……庭にいるサムと恋人の逢瀬に気が付き、眉を顰めた。
「アイザック……なによ、振られた私を揶揄いに来たの?」
「リリー……」
「貴方の……言う通りだった。私……わ……たし」
アイザックの前で泣きたくなどないのに、涙腺が崩壊している。もうだめだ。ボロボロと涙が止まらない。こんな状態の私を流石に放置はできないようで、アイザックは私に手を差し伸べた。
渋々、私も手を借りて立ち上がる。その瞬間、足に痛みが走り顔が歪む。そして……私が立ち上がった後も何故か彼は手を離してくれない。
「ありがとう。でも、もう離して……一人になりたい」
「嫌だ」
そう言った彼はグッと腕を引き、私を抱き寄せた。
「なっ! やめてよ」
いきなり抱き締められて私は混乱する。アイザックと喧嘩することはあれど、こんなことされるなんて意味がわからない。
「やめない。好きなだけここで泣けよ。他の奴等に泣き顔見られたくねぇだろ? こうやって顔隠しといてやるから」
いつも意地悪な彼の優しさに……また涙が出てくる。なんでこんな時だけ……私を甘やかすのか。
「っく……ひっく……好きだったのに」
「ああ、知ってる」
「明るい子が好きって言ったのに」
「そうだな」
「嘘つき……ひっく……っく」
アイザックは涙でぐちゃぐちゃで脈絡のない愚痴をうん、うんと頷きながら聴いてくれている。しかも、優しく抱き締め頭を撫でながら慰めてくれている。
こんなに優しいなんてアイザックらしくない。いや……違うか。幼い頃の彼は優しくて可愛くて大好きだったはずなのだが、いつの間にか今のように喧嘩をする関係に変わってしまったのだ。そう思いながら、私は泣き疲れて意識を失った。
「サム、もちろん私も愛しているわ」
私、伯爵令嬢のリリー・スティアートは八年前からずっと好きだった男の愛の囁きを初めて聴いている。この大柄の男からどうやって、蕩けるような甘い声が出るのかと不思議に思いながらぼーっとしてしまう。
ちゅっ、ちゅっと熱い口付けを何度も交わし、幸せそうに見つめ合っている。私はこの様子をこれ以上見ていることができず、目を逸らして下を向いた。
――そう、私がずっと好きだった男は目の前で別の女に愛を囁き、口付けを交わしているのだ。
ああ……下を向いたのは間違いだった。なぜなら、ボタボタととめどなく涙が溢れてくるからだ。
「嘘つき……元気な子が好きって言ってたのに」
『俺は君の元気でお転婆なところ好きだよ。可愛いし、こっちまで元気になる』
愛されている彼女はどこからどう見ても貴族令嬢そのものの。女性らしくて清楚な感じだ。こういうタイプが好きなら早くそう言って欲しかった。お前には見込みがないから諦めろと……
彼と付き合っていたわけでも、婚約していたわけではない。私の一方的な片想い。まさか、告白する前に終わってしまうなんて。
「あまりに滑稽だわ……」
私は耐えきれなくなり、溢れる涙もそのままにその場を走り去る。
ああ……彼に見て欲しくて背伸びして履いたいつもより高めのヒールの靴はなんて走りにくいのかしら。サムに綺麗と言って欲しくてお化粧も髪も時間をかけたし、ドレスも大人っぽい物に新調したのに、もう全てどうでも良くなった。
私は何年も前に彼に貰ったブレスレットを大事にして毎日のように付けていた。馬鹿だ。本当に私だけが……好きだったんだ。
ベシャっ
私はヒールが引っかかってこけてしまった。足から血が出ているのかドレスが赤く染まる。それでも痛みを感じないのは……心の方が痛いからなのかしら。
「リリー! お前……これはどうしたんだ? なぜ泣いて……」
最悪だ。目の前には目を見開き驚いた顔をしてるアイザックが立っていた。こいつは私が泣き顔を一番見られたくない相手だ。彼は私と犬猿の仲で、いつも喧嘩ばかりしている幼馴染。今日の私はとことん運がないみたい。
彼は私がサムを好きだと言うたびに「大人のサムさんが、お前なんてガキを相手にするはずないから諦めろ」と言っていた。そう、本当に彼の言う通りだったのだ。
彼は周りの様子をぐるっと確認し……庭にいるサムと恋人の逢瀬に気が付き、眉を顰めた。
「アイザック……なによ、振られた私を揶揄いに来たの?」
「リリー……」
「貴方の……言う通りだった。私……わ……たし」
アイザックの前で泣きたくなどないのに、涙腺が崩壊している。もうだめだ。ボロボロと涙が止まらない。こんな状態の私を流石に放置はできないようで、アイザックは私に手を差し伸べた。
渋々、私も手を借りて立ち上がる。その瞬間、足に痛みが走り顔が歪む。そして……私が立ち上がった後も何故か彼は手を離してくれない。
「ありがとう。でも、もう離して……一人になりたい」
「嫌だ」
そう言った彼はグッと腕を引き、私を抱き寄せた。
「なっ! やめてよ」
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いつも意地悪な彼の優しさに……また涙が出てくる。なんでこんな時だけ……私を甘やかすのか。
「っく……ひっく……好きだったのに」
「ああ、知ってる」
「明るい子が好きって言ったのに」
「そうだな」
「嘘つき……ひっく……っく」
アイザックは涙でぐちゃぐちゃで脈絡のない愚痴をうん、うんと頷きながら聴いてくれている。しかも、優しく抱き締め頭を撫でながら慰めてくれている。
こんなに優しいなんてアイザックらしくない。いや……違うか。幼い頃の彼は優しくて可愛くて大好きだったはずなのだが、いつの間にか今のように喧嘩をする関係に変わってしまったのだ。そう思いながら、私は泣き疲れて意識を失った。
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