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23 十歳のプレゼント
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そんなドキドキしたまま、街を歩いているととても綺麗な箱が売られているのが気になって足を止めた。その箱にはビーズのようなものが沢山貼られており、素敵な模様も描かれている。
「わぁ、綺麗な箱……これは何?」
「お嬢さん、この箱の中にはキャンディが入ってるんだよ。隣国の珍しいものだよ」
「へぇ……お菓子なのね!」
私は興味を持ち、目を輝かせて色んな種類の箱をキョロキョロと眺める。キラキラしていて素敵。
「ははは、お兄さん! あんたの彼女は随分素直で可愛らしいねぇ」
また彼女だと勘違いされてしまった。やっぱり手を繋いでいるのがだめなのだ。そう思い、自然に振り解こうとしたが、逆にアイザックにギュッと力を込められてしまった。
「そうだろう? 俺も可愛くて仕方がない」
「おお、お兄さん言うねぇ!」
店員さんはカカカ、と豪快に笑っている。アイザックったら……な、何を言っているのだろうか。
「どれがいい?」
「え? あー……これが一番綺麗かなって思った」
「じゃあ、これをくれ」
「はいよ、まいどあり」
そう言った彼はあっという間に支払いを済ませて、はいと私の手に箱をのせた。
「お嬢さん、買ってもらえてよかったね。美味しいから二人で仲良く食べな! ちなみにレモン味がおすすめだから」
店員さんはアイザックを横目でチラリと見て、ニッと笑いながら手を振っている。私も手を振り返して、とりあえずその場を去る。
「アイザック、キャンディありがとう」
「ん……それ十六歳の誕生日分」
「え?」
「俺、十歳からずっとリリーにプレゼントあげてないって気がついた。だから、今まで足りなかった分全部今日渡したい」
「そんな! いいよ」
「俺がしたいんだ。それに久々なら街を楽しめよ」
彼は本気なようで、その後もリボン、手鏡、ピアス、ヘアオイル、花束……私が気に入った物を全てプレゼントしてくれた。
「一日でこんなに沢山プレゼントを貰うなんて、どこかのお姫様になった気分ね」
「むしろこんな物でいいのか? 宝石店とか行くか?」
「そんなのいらないわ! 街で自分が気に入った物が最高なんじゃない」
私が笑顔になると、アイザックも嬉しそうに微笑んだ。
「私からも何かお返しさせて! 私も貴方に何年も誕生日プレゼントあげていないもの」
「俺は……リリーから欲しいものがある。七年分まとめて一つでいいから」
「いいわよ! 何が欲しいの?」
「まだ秘密。帰るまでに言う」
「何よそれーっ! 気になる」
私はアイザックをポカポカと殴る振りをする。
「はは、やめろよ。お! そろそろ時間だ。レストラン行かなきゃな」
「うん、楽しみだわ」
♢♢♢
予約した『オ・ソレイユ』に着いた。人気店のため少し遅めの時間に予約しゆっくりランチを取る計画だ。
「コースにしたけどよかったか?」
「もちろん。楽しみだわ」
席は個室になっており、大きな窓からは外の美しい庭が見える。なるほど、デートにピッタリの場所だわ。エミリーが婚約者と行くわけだと納得する。
「わぁ……すごい」
「確かに美味いな」
あまりに美味しくて、次々と運ばれてくる料理を食べる度にふにゃっと顔が蕩けそうになる。その私の顔を見つめているアイザックと目が合った。
「相変わらず、リリーは美味しそうに食べるな」
「だって……本当に美味しいんだもん」
「可愛い」
そんなことをサラッと言うため、私は驚いて飲んでいた水でゴホゴホ咳き込んでしまった。
「大丈夫かよ」
「だ、大丈夫」
――アイザックが変なことを言うからでしょうが!
楽しく話しながらのランチはとっても楽しかった。最後のデザートを食べていると、アイザックが真剣な顔をして私に話したいことがあると言ってきた。一体何の話なのだろうか?
「これはリリーにずっと渡したくて、渡せなかった物だ。実はこれは十歳の誕生日の時に渡そうと準備していたものなんだが……」
そう言って、私の前に近付いて来た彼は目の前で片膝をついて跪いた。
そして、彼がカパっと美しい小さな箱を開けると……そこには光り輝いている指輪が入っていた。
「アイザック・ハワードはリリー・スティアートを心から愛しています。俺と結婚してくれませんか? 必ず……必ず君を世界一幸せにするから」
私は驚いて口を開けたまま動けなくなった。アイザックが……私にプロポーズ?
これは本当のことなのだろうか。しかも十歳の時に渡す予定だったとはどういうこと?
「え……どういうこと」
「そのままの意味だよ。俺は君が好きだ」
「それは……幼馴染としてじゃ……」
「違う。リリーのことを一人の女性として好きだ」
「昔からずっと愛している」
彼は呆然とする私の手を取り、誓いのキスをした。
「わぁ、綺麗な箱……これは何?」
「お嬢さん、この箱の中にはキャンディが入ってるんだよ。隣国の珍しいものだよ」
「へぇ……お菓子なのね!」
私は興味を持ち、目を輝かせて色んな種類の箱をキョロキョロと眺める。キラキラしていて素敵。
「ははは、お兄さん! あんたの彼女は随分素直で可愛らしいねぇ」
また彼女だと勘違いされてしまった。やっぱり手を繋いでいるのがだめなのだ。そう思い、自然に振り解こうとしたが、逆にアイザックにギュッと力を込められてしまった。
「そうだろう? 俺も可愛くて仕方がない」
「おお、お兄さん言うねぇ!」
店員さんはカカカ、と豪快に笑っている。アイザックったら……な、何を言っているのだろうか。
「どれがいい?」
「え? あー……これが一番綺麗かなって思った」
「じゃあ、これをくれ」
「はいよ、まいどあり」
そう言った彼はあっという間に支払いを済ませて、はいと私の手に箱をのせた。
「お嬢さん、買ってもらえてよかったね。美味しいから二人で仲良く食べな! ちなみにレモン味がおすすめだから」
店員さんはアイザックを横目でチラリと見て、ニッと笑いながら手を振っている。私も手を振り返して、とりあえずその場を去る。
「アイザック、キャンディありがとう」
「ん……それ十六歳の誕生日分」
「え?」
「俺、十歳からずっとリリーにプレゼントあげてないって気がついた。だから、今まで足りなかった分全部今日渡したい」
「そんな! いいよ」
「俺がしたいんだ。それに久々なら街を楽しめよ」
彼は本気なようで、その後もリボン、手鏡、ピアス、ヘアオイル、花束……私が気に入った物を全てプレゼントしてくれた。
「一日でこんなに沢山プレゼントを貰うなんて、どこかのお姫様になった気分ね」
「むしろこんな物でいいのか? 宝石店とか行くか?」
「そんなのいらないわ! 街で自分が気に入った物が最高なんじゃない」
私が笑顔になると、アイザックも嬉しそうに微笑んだ。
「私からも何かお返しさせて! 私も貴方に何年も誕生日プレゼントあげていないもの」
「俺は……リリーから欲しいものがある。七年分まとめて一つでいいから」
「いいわよ! 何が欲しいの?」
「まだ秘密。帰るまでに言う」
「何よそれーっ! 気になる」
私はアイザックをポカポカと殴る振りをする。
「はは、やめろよ。お! そろそろ時間だ。レストラン行かなきゃな」
「うん、楽しみだわ」
♢♢♢
予約した『オ・ソレイユ』に着いた。人気店のため少し遅めの時間に予約しゆっくりランチを取る計画だ。
「コースにしたけどよかったか?」
「もちろん。楽しみだわ」
席は個室になっており、大きな窓からは外の美しい庭が見える。なるほど、デートにピッタリの場所だわ。エミリーが婚約者と行くわけだと納得する。
「わぁ……すごい」
「確かに美味いな」
あまりに美味しくて、次々と運ばれてくる料理を食べる度にふにゃっと顔が蕩けそうになる。その私の顔を見つめているアイザックと目が合った。
「相変わらず、リリーは美味しそうに食べるな」
「だって……本当に美味しいんだもん」
「可愛い」
そんなことをサラッと言うため、私は驚いて飲んでいた水でゴホゴホ咳き込んでしまった。
「大丈夫かよ」
「だ、大丈夫」
――アイザックが変なことを言うからでしょうが!
楽しく話しながらのランチはとっても楽しかった。最後のデザートを食べていると、アイザックが真剣な顔をして私に話したいことがあると言ってきた。一体何の話なのだろうか?
「これはリリーにずっと渡したくて、渡せなかった物だ。実はこれは十歳の誕生日の時に渡そうと準備していたものなんだが……」
そう言って、私の前に近付いて来た彼は目の前で片膝をついて跪いた。
そして、彼がカパっと美しい小さな箱を開けると……そこには光り輝いている指輪が入っていた。
「アイザック・ハワードはリリー・スティアートを心から愛しています。俺と結婚してくれませんか? 必ず……必ず君を世界一幸せにするから」
私は驚いて口を開けたまま動けなくなった。アイザックが……私にプロポーズ?
これは本当のことなのだろうか。しかも十歳の時に渡す予定だったとはどういうこと?
「え……どういうこと」
「そのままの意味だよ。俺は君が好きだ」
「それは……幼馴染としてじゃ……」
「違う。リリーのことを一人の女性として好きだ」
「昔からずっと愛している」
彼は呆然とする私の手を取り、誓いのキスをした。
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