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アイザックの後ろから、お父様の姿も見えた。助けに来てくれたんだわ。
「リリーっ!」
お父様は私が組み敷かれている状況を見て、顔面蒼白になり怒りで体が震えている。
「ブライアン……リリーに何をしている」
「女神を貰いに来たに決まってるだろう」
「この人殺しが! お前の汚い手がリリーに触れていいはずがない」
「はっ、お前は相変わらずだな。そして、お前の彼女への愛情は間違っている。リリーは自分の能力も知らず、リリアンのことも何も聞かされていないのにこんなことになって……不憫でならないね」
「貴様……まさか話したのか」
「隠してどうする? 彼女に全てを話してちゃんと自分の立場を理解させるべきだろう?」
「黙れっ!!」
お父様はギロっとブライアンを睨みつけた。
「彼女はお前が父親ではないと知って泣いていた……本来ならこんな見知らぬ男から聞く話ではないのにな。現実から目を背けている弱いお前がリリーを守れるはずがない」
私の父ではないという言葉に、アイザックはかなり驚いた表情でお父様を見ている。
「可哀想なリリー……私が守ってあげるから」
ブライアンは二人に見せつけるように、私の頬にゆっくりとキスをした。「やめて」と抵抗する私にニッと笑い、チュッとわざわざリップ音まで立てて周りを挑発している。
「リリーに触れるな」
アイザックはブライアンに火玉を撃ったが、彼は何食わぬ顔でそれを受けとめ闇の魔法でかき消した。彼は怒りから身体中が炎に包まれている。
「考え無しに攻撃しやがって。危ないだろ? 私の愛しいリリーに当たって火傷したらどうするんだ」
「黙れ。いや、俺が口を開かなくさせてやる」
「お前如きに彼女は扱えない。身の程をわきまえろよ」
そしてブライアンは「危ないから後ろに隠れていなさい」と私に防御をかけ下がらせた。
「アイザック……安い挑発だ。一旦落ち着け」
「はい、わかっています」
そうして二人はそれぞれ闘うため魔力を溜めている。
「面倒だ、同時に来い。二人同時でも私には勝てない」
ブライアンはよほど自信があるのか、二人の前で腕を組んだまま突っ立っている。
「こいつは闇の魔法使いだ。特異体質だから、使うのも基本属性の魔法ではない。気をつけろ! 認めたくないが……かなり強い」
「ええ、すでにものすごく嫌な雰囲気がしますよ。立っているだけで体がビリビリして……だけど、そんなこと関係ないですから! リリーを助けます」
「吹雪!」
「烈火!」
ピキピキという凍る音とドーンという爆発音が同時に聞こえてくる。
お父様の魔法でブライアンの足を氷漬けにして身動きを止めてから、アイザックは炎魔法で上半身を攻撃した。
こんな魔法受けたらひとたまりもない……そう思ったその時、煙の中からブライアンが現れる。
「即席チームにしては、なかなかいいコンビネーションだ……だが私には効かない。煙いだけだ」
彼は砂埃で汚れた服をパンパンと払っている。もちろん無傷だ。
「これで無傷とか不死身かよ」
アイザックから冷や汗が流れる。
「チッ。だが、こいつはこれくらいじゃ効果がないことは想定内だ……」
お父様はあまり驚く様子もなく、無表情のままだ。
「おい! アイザック、防御かけろよ」
そう言った瞬間、部屋が寒くなり空気が凍る。
「永久凍土」
「氷柱」
「細雪」
お父様が連弾で氷魔法撃つ。力を加減をせずに魔法を使っているため部屋全体が凍りつき、天井からは氷の雨が降っている。バリアがなければ私は即死だ。
――うわーっ、バリアがあっても怖いよ……こんなお父様見たことない。私の前ではいつも優しいのに。
流石にブライアンの体も氷漬けになっていたが、パリーンという音と共にパラパラと体の氷が崩れ落ちた。
彼の頬と腕には一筋ずつ傷がついており、僅かに血が流れている。それをチラッと見て何故か笑った。
「ははは、私は十数年ぶりに自分の血を見た。デューク、昔より強くなったではないか」
「相変わらず……お前はふざけた魔力だ」
「あまり褒めるな、照れるだろ。では、私の魔法も披露しよう。アイザックは闇の魔法を知らないだろうからな」
「闇の拘束」
「闇の刃」
お父様の影が人型になり腕や足を拘束する。そして身動きを取らせぬまま、たくさんの黒い刃が防御を通り抜け体を突き刺した。
「ぐっ……」
お父様が痛みで膝をついてうずくまる。体中血だらけになっている。
「いや……お父様っ! お父様っ!!」
私は泣き叫びながら声をかける。
「どうしてこんなことを……もうやめて。私が欲しいのなら貴方に全部あげるから。お父様に……みんなに酷いことしないで」
私はブライアンに必死に訴えかける。彼は「君がそう言うのであれば殺さない」と言って攻撃をやめた。
「リリー、お前は……黙ってなさい。誰が……大事な娘をお前になんて渡すか……よ」
お父様はギッとブライアンを睨みつけ、血だらけのまま立ち上がった。
「ほお、まだ立てるか。だが、死にたくなければ寝てろ」
「私は……死んでもいい。リリーを守ると……姉上と約束したからな」
「リリーっ!」
お父様は私が組み敷かれている状況を見て、顔面蒼白になり怒りで体が震えている。
「ブライアン……リリーに何をしている」
「女神を貰いに来たに決まってるだろう」
「この人殺しが! お前の汚い手がリリーに触れていいはずがない」
「はっ、お前は相変わらずだな。そして、お前の彼女への愛情は間違っている。リリーは自分の能力も知らず、リリアンのことも何も聞かされていないのにこんなことになって……不憫でならないね」
「貴様……まさか話したのか」
「隠してどうする? 彼女に全てを話してちゃんと自分の立場を理解させるべきだろう?」
「黙れっ!!」
お父様はギロっとブライアンを睨みつけた。
「彼女はお前が父親ではないと知って泣いていた……本来ならこんな見知らぬ男から聞く話ではないのにな。現実から目を背けている弱いお前がリリーを守れるはずがない」
私の父ではないという言葉に、アイザックはかなり驚いた表情でお父様を見ている。
「可哀想なリリー……私が守ってあげるから」
ブライアンは二人に見せつけるように、私の頬にゆっくりとキスをした。「やめて」と抵抗する私にニッと笑い、チュッとわざわざリップ音まで立てて周りを挑発している。
「リリーに触れるな」
アイザックはブライアンに火玉を撃ったが、彼は何食わぬ顔でそれを受けとめ闇の魔法でかき消した。彼は怒りから身体中が炎に包まれている。
「考え無しに攻撃しやがって。危ないだろ? 私の愛しいリリーに当たって火傷したらどうするんだ」
「黙れ。いや、俺が口を開かなくさせてやる」
「お前如きに彼女は扱えない。身の程をわきまえろよ」
そしてブライアンは「危ないから後ろに隠れていなさい」と私に防御をかけ下がらせた。
「アイザック……安い挑発だ。一旦落ち着け」
「はい、わかっています」
そうして二人はそれぞれ闘うため魔力を溜めている。
「面倒だ、同時に来い。二人同時でも私には勝てない」
ブライアンはよほど自信があるのか、二人の前で腕を組んだまま突っ立っている。
「こいつは闇の魔法使いだ。特異体質だから、使うのも基本属性の魔法ではない。気をつけろ! 認めたくないが……かなり強い」
「ええ、すでにものすごく嫌な雰囲気がしますよ。立っているだけで体がビリビリして……だけど、そんなこと関係ないですから! リリーを助けます」
「吹雪!」
「烈火!」
ピキピキという凍る音とドーンという爆発音が同時に聞こえてくる。
お父様の魔法でブライアンの足を氷漬けにして身動きを止めてから、アイザックは炎魔法で上半身を攻撃した。
こんな魔法受けたらひとたまりもない……そう思ったその時、煙の中からブライアンが現れる。
「即席チームにしては、なかなかいいコンビネーションだ……だが私には効かない。煙いだけだ」
彼は砂埃で汚れた服をパンパンと払っている。もちろん無傷だ。
「これで無傷とか不死身かよ」
アイザックから冷や汗が流れる。
「チッ。だが、こいつはこれくらいじゃ効果がないことは想定内だ……」
お父様はあまり驚く様子もなく、無表情のままだ。
「おい! アイザック、防御かけろよ」
そう言った瞬間、部屋が寒くなり空気が凍る。
「永久凍土」
「氷柱」
「細雪」
お父様が連弾で氷魔法撃つ。力を加減をせずに魔法を使っているため部屋全体が凍りつき、天井からは氷の雨が降っている。バリアがなければ私は即死だ。
――うわーっ、バリアがあっても怖いよ……こんなお父様見たことない。私の前ではいつも優しいのに。
流石にブライアンの体も氷漬けになっていたが、パリーンという音と共にパラパラと体の氷が崩れ落ちた。
彼の頬と腕には一筋ずつ傷がついており、僅かに血が流れている。それをチラッと見て何故か笑った。
「ははは、私は十数年ぶりに自分の血を見た。デューク、昔より強くなったではないか」
「相変わらず……お前はふざけた魔力だ」
「あまり褒めるな、照れるだろ。では、私の魔法も披露しよう。アイザックは闇の魔法を知らないだろうからな」
「闇の拘束」
「闇の刃」
お父様の影が人型になり腕や足を拘束する。そして身動きを取らせぬまま、たくさんの黒い刃が防御を通り抜け体を突き刺した。
「ぐっ……」
お父様が痛みで膝をついてうずくまる。体中血だらけになっている。
「いや……お父様っ! お父様っ!!」
私は泣き叫びながら声をかける。
「どうしてこんなことを……もうやめて。私が欲しいのなら貴方に全部あげるから。お父様に……みんなに酷いことしないで」
私はブライアンに必死に訴えかける。彼は「君がそう言うのであれば殺さない」と言って攻撃をやめた。
「リリー、お前は……黙ってなさい。誰が……大事な娘をお前になんて渡すか……よ」
お父様はギッとブライアンを睨みつけ、血だらけのまま立ち上がった。
「ほお、まだ立てるか。だが、死にたくなければ寝てろ」
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