【完結】8年越しの初恋に破れたら、なぜか意地悪な幼馴染が急に優しくなりました。

大森 樹

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71 魔力量

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 私は今日は王宮に呼ばれている。今まで曖昧だった私の魔力を正しく測定し、能力を把握したいということだった。併せてブライアンの魔力量も改めて理解しておきたいそうで、一緒に来てくれと指示があった。

 彼一人だと反抗的なので私は監視係も兼ねているようだ。今日お父様も付き添いたいと言っていたが、どうしても外せない仕事があるらしく「くれぐれも気をつけて」と念を押され、こうして二人で王宮にいるのだ。

「君と一緒だと、くだらない検査も仕方ないから受けてやるかって気持ちになるな」
「受けるのは当たり前でしょ。どうして王命に背こうとするのよ」
「だって俺の魔力も、リリー魔力も規格外だろ? 測っても意味がないさ。知ってどうするのか理解に苦しむ。時間の無駄だね」
「いいから。行くわよ」

 私は、彼の手をぐいぐいと引っ張って歩いて行く。ブライアンはお父様より年上なのに、こういう言うことを聞かない子どもっぽい面倒なところがあって困るのだ。

「では計測をはじめる」

 実は私の魔力量は良くわかっていない。魔法学校入学時に申告が必要だがお父様は書類をばれないように偽造していたらしく、かなり量を少なめに報告したらしい。そして、私は普通科に入ることになったわけである。

 でも、私は実際魔法はほとんど使えないため誰にも「特異体質の魔法使い」だと疑われることはなかった。

 魔法省の職員に促されて、測定器にそっと手を添える。なんだかドキドキするな。

 触った瞬間にすごい勢いで数値が上がっていく。周囲からザワザワと驚いた声が聴こえる。これは変なのかな……?

 心配になりブライアンをチラリと見ると「気にするな」と笑ってくれた。

「この数値はすごいな」

 私はやはり莫大な魔力があるらしく、魔力量だけで見るとこの国の五位以内には入るそうだ。そして属性はエラーと表示されている。特異体質の場合はエラーになってしまうそうだ。

「やっぱりリリーの魔力量は、かなりすごいことがわかったな」

 ブライアンは不安な様子の私を、子どもをあやすようによしよしと優しく撫でた。

「次はブライアンだ」
「……はいはい」

 彼もだるそうに計測器に手を当てる。彼の値もすごい勢いでどんどんと数値が上がり、ピタッと止まった。

「……お前はやはり化け物だな。人間じゃない」
「フッ、お褒めいただいて光栄だね」

 彼はやはりこの国一番の魔力量だった。属性はやはりエラー。闇魔法も測定器では測れないからだ。
 
 そしてブライアンは笑って気にしていないようだが、私は職員の彼への言葉に不愉快になる。

「さっきの言葉は撤回してくださいませ。ブライアンに対して『化け物』なんて失礼ですわ」

 私はそう言った男をキッと睨んでそう言った。職員の男は何も言わずに私を睨み返し黙っている。

「……」

 部屋の空気がシーンと静まり返った。ただの小娘がこんなことを言うことは、生意気だとはわかっているが私は許せなかった。

 ブライアンは一瞬驚いた顔をしていたが……すぐに、くっくっくと楽しそうに笑い出した。

「リリー……やっぱりお前は最高だ」

 そう言って私の手をギュッと握った。

「もういいだろ。お前たちの言う通り魔力計測したんだし。こっちは大切な彼女との時間を邪魔されたくないんでね。失礼する」

 パチンと指を鳴らす音が聞こえたと思ったら……フッと体が浮き、気が付いたら美しい花畑の中にいた。

「ここは」
「綺麗だろ? ずっと君を連れてきたかった」
「すごい……お花がいっぱいね」

 さわさわと優しい風が吹き、見渡す限り花畑が広がっている。先程の重苦しい嫌な空気とは違ってとても気持ちが良い。

「ごめんね。結局、あの人謝ってくれなかったわ」
「君が怒ってくれて嬉しかった。私は昔から『化け物』扱いされてきたから……いつの間にかあんな言葉は当たり前って思ってしまってた」
「貴方は魔力が多いだけじゃない」
「そう言ってくれるのは君くらいだ」
「そりゃ口は悪いけど、ブライアンは心優しい普通の男性だわ」

 彼は私をギュッと抱きしめて、小声で「ありがとう」と言った。その声が震えているような気がして……私は背中に腕を回し、落ち着かせるようにトントンと優しく叩いた。彼が昔から強すぎる魔力に悩んでいたことを聞いていたから。

「君はあたたかいな」

 その言葉を聞いて彼の気持ちが落ち着いたのだと思い、私はそっと体を離そうと胸を手で押すがびくともしない。

「もう少しだけこのまま……お願い」

 駄々っ子のように我儘を言う彼を、どうしても突き放すことができずしばらくそのままでいた。

「困ったな。君をどんどん好きになる」

 切なく呟く言葉を聞いて、私は彼にきちんと話さなければと心に決める。

「私、アイザックと正式に婚約したの」
「そうか。おめでとう」

 彼はそっと体を離して少し哀しそうな顔をしたが、すぐに優しく微笑んでくれた。この人の『好き』や『愛してる』をどう捉えていいのかがわからない。私の困惑の表情を彼は見逃さなかった。

「安心しろ。確かに私は君が好きだし、愛しているが、恋仲になりたいわけじゃない」
「ごめんなさい……よくわからないわ。好きなら、ずっと一緒にいて結婚したいと思うものじゃないの?」
「愛の形はね、一つじゃない」
「一つじゃない……?」
「私も上手くは言えないけどね。リリーに家族以上の愛情を持っているのは確かだが、結婚したいわけじゃない」

 私が子どもだから、彼の言っていることがわからないのだろうか? それで本当に彼は幸せになれるのだろうか?

「君が幸せなことが私の幸せなんだ。だから、誰と結婚しようが、私が君を守ることはやめないよ」
「貴方は私を命懸けで守ってくれるのに……私が幸せならいいだけなんて! そんなのブライアンに何のメリットもないじゃない」

 ブライアンは驚いたような顔をした後、大きなため息をつき「嫌になるね」と天を仰いで呟いた。

『嫌よ。そんなことして……貴方にメリットがないじゃない。そんな迷惑ばかりかけられない』

「リリアンが同じことを言っていたよ。やっぱり血は争えないのかな」

 フッと哀しそうに笑った。

「メリットだって……? 本当に君は何もわかっていない。私はこの世に君が生きていればいいんだ。例え私のことを好きでなくても……他の男が好きでも。そんなことは些細なことだ、どうだっていい! 私の望みは君が幸せに生きることだ」

 彼は珍しく大声をあげて、激しく私に訴えた。あまりの迫力に私は驚いて声が出ない。

「……大声を出してすまない。私の気持ちを全てわかってくれとは言わない。ただ、君を守ることを許して欲しいだけだ」

 そう言って私の頭を優しく撫でた。そしてニヤリと悪戯っぽく微笑んだ。

「まあ、王の前で私の面倒みると言ったんだ。リリーは私を傍に置かざるを得ないさ。君を守るただの護衛とでも思ってくれたらいい」
「え……」
「王命を違える気か? 命の限りよろしく、
「ええーっ!」

 彼はもともとザックと結婚した後も私の傍に仕える気だったらしい。これはどうしたものかと、私は頭を抱えた。


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