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本編
22 お祝いの代償②【エルベルト視点】
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俺は泣いて怒っているクリスを前に戸惑っていた。いきなりどうしたというのか?
「他の女とはなんだ? 俺が君以外に触れるはずないだろう」
「嘘つき! 私が何も知らないと思って……酷いです。信じていたのに」
「いや、本当に知らない。誰にそんな嘘を言われたんだ?」
なぜクリスはこんな誤解をしているんだ?
「うっ……うっ……私は……遊びでも……例え……一夜限りでも嫌です」
「一夜限り? なんの話なんだ」
「チェルシーって女と一晩過ごしたのでしょう?しかもわざわざあんな高いホテルで! 本気ではありませんか」
チェルシー……? あっ……ジェフのか!
「あんな……口紅がついた名刺まで大事に取っておいて! お、お店の人だってわかっていますけれど……でも……許せません。私にはもう触れないでくださいませ。そういうことをしたいなら、チェルシー様にお相手をしてもらったらいかがですか」
彼女はプイッと顔を逸らした。これは大きな誤解になっているようだ。そういえば俺はあの請求書や名刺を机に置いたままだったな。
「クリス、誤解だよ。あれは俺じゃない。ジェフが利用した請求書だよ。ちょっと待っててくれ」
俺は彼女の頭を撫でて、自室に戻り請求書と名刺を持ってきた。
「ほら、請求書の日付を見てごらん? ジェフと別れた日だ。その日の夜は俺たちは翌朝まで愛し合ってたこと……君も覚えているだろ?」
「日付……?」
「ああ」
彼女は少し落ち着いたようで、うるうると涙を溜めた目で請求書を見た。
「本当だわ……」
「だろ? これは二つともあいつの利用した分だ。ちゃっかりしているあいつはそれを俺に払えと押し付けてきただけだ」
「でも……名刺は? 素敵な夜だったって」
「あれもジェフが貰った物だ。そのクラブの女性は色んな貴族の客を相手にするから、沢山の裏情報を知ってるらしくてね。もし聞きたい話があるなら、連絡してみろとくれただけだ」
確かにあれを見たら完全に浮気だと思うよな。しかも全く隠さず置いてあるなんて……彼女が酷く傷ついたのがわかる。名刺も捨てるべきだった。俺の配慮が足りなかったな。
「じゃあ、あの方とは何もないのですか?」
彼女はボーっとしている。
「ああ、そうだ。オリバーならこの件を知っている! 呼んでこようか? それでも君がまだ信じられぬなら……ジェフに説明をさせるから」
俺が必死にそう説明すると、彼女が俺の胸に抱きついてきた。
「いい。いいです……あなたを信じます」
「そうか。誤解させて悪かった。君を不安にさせるなら、あんな名刺すぐ捨てれば良かった」
「疑ってごめんなさい。お仕事に関わることなのにすみません。それに……勝手に拗ねて、怒ってしまって。これでは前のバネッサ様のと時と同じですわね。恥ずかしい」
彼女は顔を見られたくないのか俺の胸に顔を埋めたまま、うにうにと左右に頭を小さく動かしている。なんだその動きは。可愛い。
「俺は君が愛おしくて仕方がないのに、なぜ興味のない他の女の相手をしないといけない?」
「エル……」
「君だけだよ。一生君だけだ」
俺は彼女の顔をそっと手で包んで、優しく口付け微笑んだ。そして涙で濡れた目元にもキスを優しく落とした。
すると首に彼女の手が絡められ、グイッと引っ張られて強引に口付けをされた。彼女からのキスなんてレアだ。とても嬉しいな……なんて呑気なことを考えているとどんどん口付けが深くなった。
そしてキスしたままドンと強引に、彼女にベッドに押し倒された。
「んっ……!」
自然と自分の声が漏れて焦った。クリスからのキスは深くて柔らかく、的確に気持ちいいところを刺激してくる。こんなキスどこで覚えたんだ……と言いたいところだが、これは俺がする口付けにそっくりだ。
「エル……好き」
いつの間にか彼女は、キスがこんなに上手くなったらしい。自分が初心で清廉な彼女をそう変えたのだと、嬉しくて誇らしい気持ちと少しの罪悪感。
「クリス、ここからは俺にさせて」
「ん、嫌です。今日は私がしたいの。私が誰よりもエルを愛してるって伝えたい」
その言葉に心が震える。とても魅力的なお誘いだが、これ以上彼女にされたら耐えれそうにない。
「充分伝わってる。でも、君ばかりずるい。俺だって君への愛を伝えたいんだ」
そう言うと、彼女はぽっと頬を染めた。その照れた顔はいつもの可愛らしいクリスだ。
俺は少し強引に体制を反転させ、彼女をベッドに寝かせた。余裕がないのは許して欲しい。そこからは彼女を隅々まで愛した。
どうすれば伝わるのだろうか? 俺が君以外愛することはないということを。
「クリス、愛してるよ。可愛い」
「エル……エル……」
「ん?」
「好き。愛してる……他の人のところなんていかないでね」
「俺はクリスにしか……こんな気持ちにならない。忘れたのか。俺が君を妻に望んだんだよ?」
俺は彼女の頬をするりと撫で、甘く囁く。
「ええ……でも毎日一緒にいたら……いつか私に飽きちゃうかもしれないでしょ?」
「飽きる……ははは……」
彼女の言葉に俺はつい笑ってしまった。真剣にそう言った彼女は、俺が笑ったのでムッと拗ねた。
「ごめん。君があまりにあり得ないことを言うから笑ってしまった」
「……あり得ない?」
「クリスに飽きることなんてない。結婚してから、毎日俺の好きは更新されてるよ。きっと今日より明日のクリスの方がもっと好きになる」
クリスの白い肌が一気にピンクに染まる。ああ、やっぱり可愛い。
「だから安心して。俺の愛を疑う必要はない」
好きで好きで好きで……ずっと君に恋焦がれていたんだ。その君が俺の妻になってくれた。これ以上何を望む? 最高の幸せが傍にいるのに。
「愛してる」
愛を伝えるのに『愛してる』以上の言葉がないのがもどかしい。そのもどかしさを埋めるために、俺たちはまた一つになった。
「他の女とはなんだ? 俺が君以外に触れるはずないだろう」
「嘘つき! 私が何も知らないと思って……酷いです。信じていたのに」
「いや、本当に知らない。誰にそんな嘘を言われたんだ?」
なぜクリスはこんな誤解をしているんだ?
「うっ……うっ……私は……遊びでも……例え……一夜限りでも嫌です」
「一夜限り? なんの話なんだ」
「チェルシーって女と一晩過ごしたのでしょう?しかもわざわざあんな高いホテルで! 本気ではありませんか」
チェルシー……? あっ……ジェフのか!
「あんな……口紅がついた名刺まで大事に取っておいて! お、お店の人だってわかっていますけれど……でも……許せません。私にはもう触れないでくださいませ。そういうことをしたいなら、チェルシー様にお相手をしてもらったらいかがですか」
彼女はプイッと顔を逸らした。これは大きな誤解になっているようだ。そういえば俺はあの請求書や名刺を机に置いたままだったな。
「クリス、誤解だよ。あれは俺じゃない。ジェフが利用した請求書だよ。ちょっと待っててくれ」
俺は彼女の頭を撫でて、自室に戻り請求書と名刺を持ってきた。
「ほら、請求書の日付を見てごらん? ジェフと別れた日だ。その日の夜は俺たちは翌朝まで愛し合ってたこと……君も覚えているだろ?」
「日付……?」
「ああ」
彼女は少し落ち着いたようで、うるうると涙を溜めた目で請求書を見た。
「本当だわ……」
「だろ? これは二つともあいつの利用した分だ。ちゃっかりしているあいつはそれを俺に払えと押し付けてきただけだ」
「でも……名刺は? 素敵な夜だったって」
「あれもジェフが貰った物だ。そのクラブの女性は色んな貴族の客を相手にするから、沢山の裏情報を知ってるらしくてね。もし聞きたい話があるなら、連絡してみろとくれただけだ」
確かにあれを見たら完全に浮気だと思うよな。しかも全く隠さず置いてあるなんて……彼女が酷く傷ついたのがわかる。名刺も捨てるべきだった。俺の配慮が足りなかったな。
「じゃあ、あの方とは何もないのですか?」
彼女はボーっとしている。
「ああ、そうだ。オリバーならこの件を知っている! 呼んでこようか? それでも君がまだ信じられぬなら……ジェフに説明をさせるから」
俺が必死にそう説明すると、彼女が俺の胸に抱きついてきた。
「いい。いいです……あなたを信じます」
「そうか。誤解させて悪かった。君を不安にさせるなら、あんな名刺すぐ捨てれば良かった」
「疑ってごめんなさい。お仕事に関わることなのにすみません。それに……勝手に拗ねて、怒ってしまって。これでは前のバネッサ様のと時と同じですわね。恥ずかしい」
彼女は顔を見られたくないのか俺の胸に顔を埋めたまま、うにうにと左右に頭を小さく動かしている。なんだその動きは。可愛い。
「俺は君が愛おしくて仕方がないのに、なぜ興味のない他の女の相手をしないといけない?」
「エル……」
「君だけだよ。一生君だけだ」
俺は彼女の顔をそっと手で包んで、優しく口付け微笑んだ。そして涙で濡れた目元にもキスを優しく落とした。
すると首に彼女の手が絡められ、グイッと引っ張られて強引に口付けをされた。彼女からのキスなんてレアだ。とても嬉しいな……なんて呑気なことを考えているとどんどん口付けが深くなった。
そしてキスしたままドンと強引に、彼女にベッドに押し倒された。
「んっ……!」
自然と自分の声が漏れて焦った。クリスからのキスは深くて柔らかく、的確に気持ちいいところを刺激してくる。こんなキスどこで覚えたんだ……と言いたいところだが、これは俺がする口付けにそっくりだ。
「エル……好き」
いつの間にか彼女は、キスがこんなに上手くなったらしい。自分が初心で清廉な彼女をそう変えたのだと、嬉しくて誇らしい気持ちと少しの罪悪感。
「クリス、ここからは俺にさせて」
「ん、嫌です。今日は私がしたいの。私が誰よりもエルを愛してるって伝えたい」
その言葉に心が震える。とても魅力的なお誘いだが、これ以上彼女にされたら耐えれそうにない。
「充分伝わってる。でも、君ばかりずるい。俺だって君への愛を伝えたいんだ」
そう言うと、彼女はぽっと頬を染めた。その照れた顔はいつもの可愛らしいクリスだ。
俺は少し強引に体制を反転させ、彼女をベッドに寝かせた。余裕がないのは許して欲しい。そこからは彼女を隅々まで愛した。
どうすれば伝わるのだろうか? 俺が君以外愛することはないということを。
「クリス、愛してるよ。可愛い」
「エル……エル……」
「ん?」
「好き。愛してる……他の人のところなんていかないでね」
「俺はクリスにしか……こんな気持ちにならない。忘れたのか。俺が君を妻に望んだんだよ?」
俺は彼女の頬をするりと撫で、甘く囁く。
「ええ……でも毎日一緒にいたら……いつか私に飽きちゃうかもしれないでしょ?」
「飽きる……ははは……」
彼女の言葉に俺はつい笑ってしまった。真剣にそう言った彼女は、俺が笑ったのでムッと拗ねた。
「ごめん。君があまりにあり得ないことを言うから笑ってしまった」
「……あり得ない?」
「クリスに飽きることなんてない。結婚してから、毎日俺の好きは更新されてるよ。きっと今日より明日のクリスの方がもっと好きになる」
クリスの白い肌が一気にピンクに染まる。ああ、やっぱり可愛い。
「だから安心して。俺の愛を疑う必要はない」
好きで好きで好きで……ずっと君に恋焦がれていたんだ。その君が俺の妻になってくれた。これ以上何を望む? 最高の幸せが傍にいるのに。
「愛してる」
愛を伝えるのに『愛してる』以上の言葉がないのがもどかしい。そのもどかしさを埋めるために、俺たちはまた一つになった。
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