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俺だけの手 1
「湊待ったか」
ホテルのロビーに颯爽と現れた航は、いつものジーンズではなくスーツ姿だった。
185cmという高身長にダークグレーの仕立てのよいスーツを着こなして、行き交う人が思わず見惚れる程の美丈夫。大理石の床に、近づく足音が小気味よく響いていた。
「いや……なんでスーツ?」
「あぁ今日は例のファン感謝デーで、全員スーツで出社しろってお達しだったからな」
「……あれか」
途端に一年前の嫌な記憶が過る。
プロ野球選手である航がユニホームを脱いでスーツ姿で登場したのは、球団母体である会社の株主相手のイベントだった。あの時の俺は……ファンの女性陣に囲まれ愛嬌を振りまく姿を、記者として遠くから見つめることしか出来なかった。
握手を求められればすぐに応え、写真にも笑顔で納まっていく様子を見るのが苦しくて、途中で逃げ出すように会場を後にしてしまった。
しょうがない。あれは仕事だと必死に言い聞かせたのに、一年経っても同じ気持ちになってしまうなんて、本当に成長しない。嫉妬深い自分が嫌になる。
「行くぞ」
「えっどこに?」
「おい、分かってるんだろ?」
ルームキーを事前に用意していたらしい航は、誰の目を気にすることもなく悠然と歩いて行く。
だが、そんな航の横に並んで歩く勇気はなくて、距離を置いて付いていくのがいつもの習慣だ。
はぁ、全く……男と男の恋はややこしい。
ホテルのロビーに颯爽と現れた航は、いつものジーンズではなくスーツ姿だった。
185cmという高身長にダークグレーの仕立てのよいスーツを着こなして、行き交う人が思わず見惚れる程の美丈夫。大理石の床に、近づく足音が小気味よく響いていた。
「いや……なんでスーツ?」
「あぁ今日は例のファン感謝デーで、全員スーツで出社しろってお達しだったからな」
「……あれか」
途端に一年前の嫌な記憶が過る。
プロ野球選手である航がユニホームを脱いでスーツ姿で登場したのは、球団母体である会社の株主相手のイベントだった。あの時の俺は……ファンの女性陣に囲まれ愛嬌を振りまく姿を、記者として遠くから見つめることしか出来なかった。
握手を求められればすぐに応え、写真にも笑顔で納まっていく様子を見るのが苦しくて、途中で逃げ出すように会場を後にしてしまった。
しょうがない。あれは仕事だと必死に言い聞かせたのに、一年経っても同じ気持ちになってしまうなんて、本当に成長しない。嫉妬深い自分が嫌になる。
「行くぞ」
「えっどこに?」
「おい、分かってるんだろ?」
ルームキーを事前に用意していたらしい航は、誰の目を気にすることもなく悠然と歩いて行く。
だが、そんな航の横に並んで歩く勇気はなくて、距離を置いて付いていくのがいつもの習慣だ。
はぁ、全く……男と男の恋はややこしい。
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