幸せな存在 ~歩み寄る恋をしよう~

志生帆 海

文字の大きさ
1,856 / 1,865
小学生編

しあわせ図鑑 50

しおりを挟む
 瑞樹が盛り付けたサラダを、そっとテーブルに置く。

 その美しい横顔を、つい目で追ってしまう。

 この可愛くて綺麗で凛々しい男が、俺の恋人なんだ。

 胸の奥が、誇らしくなる。

 瑞樹は、ただ甘いとか可愛いとかだけの存在じゃない。最近は特に、芯の強さや落ち着いた気品まで備えるようになった。

 ちゃんと自分の足で立って、人に向き合い、丁寧に心を込められる男だ。

 その優しさと強さのバランスが、本当にいい。

 ……また惚れ直したよ、と胸の内で呟く。

「おっ……」

 ふと視界の端で光るものがあり、瑞樹の左手に視線が吸い寄せられる。

 きめ細かくて細いのに、しっかりと骨ばった男の手。その薬指に、俺とお揃いのプラチナのリングが静かに輝いている。

 指輪をしてくれてる。

 それだけのことで、胸の奥がじんと熱くなる。

 同性同士のリングなんて、まだ世間では当たり前ではない。

 余計な詮索されるのは面倒だ。

 だから俺たちは普段は、家に置いて出かけることにした。

 だけど、この旅行中は……

 瑞樹は、当たり前のように、ずっとつけてくれている。

 もちろん俺の指にも、同じものがある。

 瑞樹が「つけたい」と思ってくれる。その気持ちと事実が嬉しいのさ!

「瑞樹は旅行では指輪をしてくれるんだよな」

 おっと、つい口に出てしまった。

 瑞樹は恥ずかしそうに目元を染めながらも、俺から目をそらさずに答える。

「あっ、はい、今回はプライベートなので……」

 その姿を見て思う。
 瑞樹はもう守られてばかりの男じゃない。
 俺と肩を並べて歩く男になったと。

「似合う! もちろん俺もしているさ!」

 俺は瑞樹の左手にそっと自分の手を重ねた。
 骨が少し浮き出た、あたたかい男の手。
 頼りなく見えて、実はきっと誰よりも強い手。
 あの時の傷跡が残っている手だけど、瑞樹はもう気にしていない。
 その強さごと、愛しい。

 気づけば自然な流れで、瑞樹の柔らかな頬にキスをしていた。軽く触れただけなのに、瑞樹はびくっとして顔を真っ赤にする。

「ちょ、宗吾さん……!」

 ああ、本当に。こういうところが、たまらなく可愛くて愛しいんだ。男のくせに、なんて言葉は俺には一度も浮かばない。むしろ男だからこそ、こんな素直な反応をする瑞樹が好きだ。照れながらも俺を拒まないのが、嬉しくてたまらない。

 その時、芽生が爆弾を落とす。

「パパとお兄ちゃんはね、いっつも仲良しで、ギューとか、ちゅーとかするんだ!」

 はははっ、流石俺の息子だ。

 瑞樹はさらに真っ赤になり、俺は思わず笑みを浮かべた。

 それが事実だからな。

 ここは瑞樹の実家だ。

 胸を張って「家族です」と言える場所だ。

 芽生が自然に俺たちの関係を受け入れてくれているのも嬉しかった。 

 義父さんもお義母さんも笑ってくれる。

 その輪の中に、俺も自然にいる。

 この家で、家族の一員として肩の力を抜いていられることが嬉しい。

 瑞樹が自分に自信を持てるようになったからか。俺も、前よりずっとこの家に馴染めている。

 瑞樹は男で、俺も男だ。俺たちは同性で愛し合っている。この関係を当たり前に受け入れてくれる場所がる。

 それがこんなにも温かいことを、しみじみと感じる。

 瑞樹、大好きだ。
 愛している。

 胸の奥でそっと呟きながら、瑞樹の横顔をもう一度見つめた。
しおりを挟む
感想 85

あなたにおすすめの小説

青い炎

瑞原唯子
BL
今日、僕は同時にふたつの失恋をした——。 もともと叶うことのない想いだった。 にもかかわらず、胸の内で静かな激情の炎を燃やし続けてきた。 これからもこの想いを燻らせていくのだろう。 仲睦まじい二人を誰よりも近くで見守りながら。

楽な片恋

藍川 東
BL
 蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。  ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。  それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……  早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。  ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。  平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。  高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。  優一朗のひとことさえなければ…………

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

愛と猛毒(仮)

万里
BL
オフィスビルの非常階段。冷え切った踊り場で煙草をくゆらせる水原七瀬(みずはらななせ)は、部下たちのやり取りを静かに見守っていた。 そこでは村上和弥(むらかみかずや)が、長年想い続けてきた和泉に別れを告げられていた。和泉は「ありがとう」と優しく微笑みながらも、決意をもって彼を突き放す。和弥は矜持を守ろうと、営業スマイルを貼り付けて必死に言葉を紡ぐが、その姿は痛々しいほどに惨めだった。 和泉が去った後、七瀬は姿を現し、冷徹な言葉で和弥を追い詰める。 「お前はただの予備だった」「純愛なんて綺麗な言葉で誤魔化してるだけだ」――七瀬の毒舌は、和弥の心を抉り、憎悪を引き出す。和弥は「嫌いだ」と叫び、七瀬を突き放して階段を駆け下りていく。 「……本当、バカだよな。お前も、俺も」 七瀬は独り言を漏らすと、和弥が触れた手首を愛おしそうに、そして自嘲気味に強く握りしめた。 その指先に残る熱は、嫌悪という仮面の下で燃え盛る執着の証だった。 毒を吐き続けることでしか伝えられない――「好きだ」という言葉を、七瀬は永遠に飲み込んだまま、胸の奥で腐らせていた。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

たとえ運命じゃなくても、僕は

mimi
BL
「僕は自分の気持ちを信じたい。 たとえ運命から背を背けようとも」 音楽大学に通うΩの青年・相田ひなた。 努力家の先輩αと、 運命の番だと告げられた天才α。 運命か、愛情か―― 選ぶのは、僕自身だ。 ※直接的な描写はありません。

向日葵畑で手を繋ごう

舞々
BL
琥珀は付き合っていた彼氏に「やっぱり男とは手が繋げない」とフラれてしまい、そこから更に人を避けて生きるようになった。笑うことさえなくなった琥珀を心配した母親は、琥珀の夏休み期間だけ自分の生まれ故郷である秩父へと送り出す。そこで久しぶりに再会した悠介は、琥珀のことを子ども扱いするものの、事あるごとに自然と手を繋いでくれる。秩父の自然に触れながら、琥珀はいつしか明るく優しい悠介に惹かれていったのだった。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...