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発展編
実らせたい想い 17
「え……何を?」
「いいから、これを開けて見ろ」
宗吾さんは真剣な表情を浮かべていた。
「……はい」
箱の中には、まるで土のような風合いのガラス製花器が入っていた。
「あっこれは花瓶……」
「そうだ。瑞樹のためにニューヨークで買った土産だ。だから好きに使えばいい」
「宗吾さん……」
彼の気遣いが身に沁みる。早速、了承を得よう。いかなる事があろうと彼女は依頼主にかわりはない。
「あの……この花瓶を使って花を生け直してもいいですか」
「……もう、勝手にすればいいわ」
彼女はもう怒っておらず、芽生くんから受け取ったマドンナリリーを手にしっかりと握っていた。
もしかして……これはフラワー・セラピーの効果なのか。
花によって心を癒やすのを『フラワーセラピー』という。僕はその分野に以前から興味を持っていて、大学でも入社してかも継続して学んで来た。
人は美しい花に触れることにより、心身のバランスが整えられ心が和み、疲れが癒える性質があるそうだ。実際にストレスや悩みから解放される術の一つとして、介護や医療などの専門機関でも用いられている方法だ。
僕が今回のアレンジメントに庭百合(マドンナリリー)を用いたのは、芽生くんのお母さんという立場に敬意を払ったからだ。この世に産み出してくれた母親のことを、芽生くんが憎んではならない。だから……和解への願いを込めた。
本当にこんな効果が本当にあるなんて、救われた気持ちになる。芽生くんと宗吾さんのお母さんまで駆けつけてくれるなんて、宗吾さん……僕はもう一人ではないのですね。
「さぁ瑞樹、急げ! パーティー開始時間が迫っているぞ」
「あっはい」
そこからは一気に集中した。
今の自分が出来ることをしよう。ベストを尽くそう!
一度崩された花を一本一本確認しながら、枝や葉の傷みを整え生き返らせていく。 宗吾さんが買ってきてくれた花瓶に手早く生け直していくと、まるで大地に根ざしたように生き生きと輝きだした。
「すごい……ママ、見て! お兄ちゃんの手って魔法みたいだね」
「……そうね」
最後は中央に真っ赤な薔薇を入れるだけ。先ほど踏まれないように宗吾さんが守ってくれた花を生け込もうとしたら、突然玲子さんに制された。
「待って!そこは……やっぱり違う花にするわ」
「……ですが」
「いいから、私にやらせて」
「あっ……はい」
驚いたことに玲子さんは純白のマドンナリリーをアレンジメントの中央に埋め込んだ。大地から湧き出るように咲く白い花。そこからの溶けていく淡いピンクのグラデーション。
嫉妬は消え……母性に似た優しさで満ちたアレンジメントへと一変した。
僕が最初に持ってきたのとはまったく違うスタンドフラワーになったが、これによってネイルサロンの雰囲気も、一気に和らいだ。
「……悔しいけれども、こっちの方がいいわね」
「……ありがとうございます」
「この調子でテーブルのアレンジメントもお願いね」
「承知しました」
テーブル花も白で統一した。とにかく時間がないので、素早く臨機応変な行動を心がけた。
ようやく最後のテーブル装花を終えて宗吾さんを探すと、玲子さんと熱心に話している姿が見えた。その姿に少しだけ切なさが込み上げてきてしまう。しかし僕と目が合うと宗吾さんは玲子さんの元を離れ、すぐに僕の元に来てくれた。なんだかそんな些細なことが、身に沁みて嬉しく感じた。
「瑞樹、頑張ったな」
「宗吾さん……あの、何だかいろいろ申し訳ありません」
「何を謝る?」
「だって……お邪魔じゃ……前の奥様と……」
(お似合いだと思いました)とは言えなかった。すると宗吾さんが軽く微笑みながら、僕の額をコツンっと指ではじいた。
「馬鹿だな。瑞樹が心配するようなことは何もないよ。でもそんな顔をしてもらえるのは嬉しいな」
「いいから、これを開けて見ろ」
宗吾さんは真剣な表情を浮かべていた。
「……はい」
箱の中には、まるで土のような風合いのガラス製花器が入っていた。
「あっこれは花瓶……」
「そうだ。瑞樹のためにニューヨークで買った土産だ。だから好きに使えばいい」
「宗吾さん……」
彼の気遣いが身に沁みる。早速、了承を得よう。いかなる事があろうと彼女は依頼主にかわりはない。
「あの……この花瓶を使って花を生け直してもいいですか」
「……もう、勝手にすればいいわ」
彼女はもう怒っておらず、芽生くんから受け取ったマドンナリリーを手にしっかりと握っていた。
もしかして……これはフラワー・セラピーの効果なのか。
花によって心を癒やすのを『フラワーセラピー』という。僕はその分野に以前から興味を持っていて、大学でも入社してかも継続して学んで来た。
人は美しい花に触れることにより、心身のバランスが整えられ心が和み、疲れが癒える性質があるそうだ。実際にストレスや悩みから解放される術の一つとして、介護や医療などの専門機関でも用いられている方法だ。
僕が今回のアレンジメントに庭百合(マドンナリリー)を用いたのは、芽生くんのお母さんという立場に敬意を払ったからだ。この世に産み出してくれた母親のことを、芽生くんが憎んではならない。だから……和解への願いを込めた。
本当にこんな効果が本当にあるなんて、救われた気持ちになる。芽生くんと宗吾さんのお母さんまで駆けつけてくれるなんて、宗吾さん……僕はもう一人ではないのですね。
「さぁ瑞樹、急げ! パーティー開始時間が迫っているぞ」
「あっはい」
そこからは一気に集中した。
今の自分が出来ることをしよう。ベストを尽くそう!
一度崩された花を一本一本確認しながら、枝や葉の傷みを整え生き返らせていく。 宗吾さんが買ってきてくれた花瓶に手早く生け直していくと、まるで大地に根ざしたように生き生きと輝きだした。
「すごい……ママ、見て! お兄ちゃんの手って魔法みたいだね」
「……そうね」
最後は中央に真っ赤な薔薇を入れるだけ。先ほど踏まれないように宗吾さんが守ってくれた花を生け込もうとしたら、突然玲子さんに制された。
「待って!そこは……やっぱり違う花にするわ」
「……ですが」
「いいから、私にやらせて」
「あっ……はい」
驚いたことに玲子さんは純白のマドンナリリーをアレンジメントの中央に埋め込んだ。大地から湧き出るように咲く白い花。そこからの溶けていく淡いピンクのグラデーション。
嫉妬は消え……母性に似た優しさで満ちたアレンジメントへと一変した。
僕が最初に持ってきたのとはまったく違うスタンドフラワーになったが、これによってネイルサロンの雰囲気も、一気に和らいだ。
「……悔しいけれども、こっちの方がいいわね」
「……ありがとうございます」
「この調子でテーブルのアレンジメントもお願いね」
「承知しました」
テーブル花も白で統一した。とにかく時間がないので、素早く臨機応変な行動を心がけた。
ようやく最後のテーブル装花を終えて宗吾さんを探すと、玲子さんと熱心に話している姿が見えた。その姿に少しだけ切なさが込み上げてきてしまう。しかし僕と目が合うと宗吾さんは玲子さんの元を離れ、すぐに僕の元に来てくれた。なんだかそんな些細なことが、身に沁みて嬉しく感じた。
「瑞樹、頑張ったな」
「宗吾さん……あの、何だかいろいろ申し訳ありません」
「何を謝る?」
「だって……お邪魔じゃ……前の奥様と……」
(お似合いだと思いました)とは言えなかった。すると宗吾さんが軽く微笑みながら、僕の額をコツンっと指ではじいた。
「馬鹿だな。瑞樹が心配するようなことは何もないよ。でもそんな顔をしてもらえるのは嬉しいな」
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