幸せな存在 ~歩み寄る恋をしよう~

志生帆 海

文字の大きさ
530 / 1,865
成就編

恋満ちる 28

しおりを挟む
「おばあちゃん、ただいま。これみて!」
「まぁ、立派な刀だこと。パパに買ってもらったの? 」
「えっとね、おにいちゃんにあって、かってもらったんだ! いいでしょう!」

 部屋に戻ると、母は和室でテレビを観て寛いでいた。

「まぁ、結局瑞樹くんに会えたのね。よかったわね」
「あのね、おにいちゃんね、おしごと、すごくがんばっていたよ」
「そうなのね。瑞樹くんはいつも目の前のことに一生懸命だものね」
 
 確かに瑞樹は、どんな仕事でも手を抜かずに真摯に向き合うし、締め切りや約束もきちんと守るので、社内で信頼度が高いのも納得だ。

 だがなぁ、あんな余興にも本気で向き合うとは、ハラハラしたぞ。あの完璧な女装姿には驚いた。

「さぁ芽生、そろそろ眠らないと」
「はーい。カタナ、だっこして、ねてもいい? 」
「くすっ、パパの小さい頃と同じね」
「えぇ? 俺、そんなことしたか 」
「覚えていない? 憲吾とチャンバラをして遊んでいたわ」
「あぁ、そうだったな。障子を破いて、よく叱られたような」
「あなたも、ヤンチャだったわね」
「ははっ」

 これは瑞樹にも夏樹くんが生きていれば訪れるはずだった、幼い兄弟の想い出だ。大切にしないとな。

「パパー、今日はおばあちゃんとねてもいい? 」
「あぁいいぞ」

 部屋は和洋室だった。ツインベッドと6畳の和室という広めな作りで、本来ならば四人部屋のようだ。

「母さんがベッドを使う? 」
「そうねぇ……やっぱり畳で眠りたいわ。芽生は畳でも大丈夫? 」
「タタミーすき。ボクのおうちには、ないからね」

 すでに和室の方には、布団が敷かれていた。

 ということは、俺は今宵は寂しくツインベッドで一人寝か。

 あーこんな時、瑞樹がいればと思うのは贅沢か。

 無性に瑞樹に会いたくなってきたぞ。

 俺の部屋番号は教えたが、君の部屋番号も聞けばよかった。そもそもあの金森という男と同室なんて、大丈夫か。菅野くんによると『酔い潰すから問題ない』と言っていたが……うむむ。

 俺が思案している間に、母さんと芽生は、そそくさと布団に潜っていた。
 
「おいおい、もう眠るのか。まだ10時前だぞ」
「もう十分遅いわよ。年寄りと子供は早寝早起きなのよ。宗吾はまだ眠くないの? 」
「あぁ」
「ならもう一度大浴場に行ってくれば? 」
「そうだな、瑞樹の騒動で酔いもすっかり覚めちまったよ」
「騒動って、何かあった? 」
「いや、もう大丈夫だよ。じゃあ風呂に行ってくるよ。先に寝ていてくれ」
「パパ、おやすみなさい」
「おやすみ」
 


 俺は大浴場に向かって、ふらりと歩き出した。

 一人寝は寂しいが、今宵ばかりは仕方がない。

 そもそも家で留守番のはずが箱根まで押しかけて、瑞樹に会えただけでも、感謝しないとな。だが一人になった気楽さからか、せめて脳内で君に触れたくて、歩きながら今日の出来事を反芻してしまった。

 今日は『みずきスペシャル・デー』だった。

 まず風呂場で入浴中の君を盗み見した。客観的に見るのは新鮮だったし、下半身を洗うシーンは相当エロかったぞ。

 そして、まさかの女装姿!! 

 俺の『瑞樹レーダー』は故障中だったのか、一瞬、君だと気づかなくて真剣に戸惑った。でも瑞樹本人で本当に良かった。彼が女だったらよかったとは、微塵にも思わなかった。もちろん女装姿は最高に可愛いが、やっぱり俺は男の瑞樹が好きなんだと再認識出来たよ。

 で、今日は何のご褒美なのか、まさかの瑞樹自らがスカートをたくし上げて、パンツを見せてくれるとは!! あれはまずい。思わず上を向く程、ツンと来た。

 興奮して鼻血が出そうになるとか……俺、一体今、いくつだよ!

 君といると、まるで好きな子を前に心が浮き立つ思春期の少年だ。

 だが、俺は永遠にこんな若々しい気持ちを持ち続けていきたい。

 10年後もきっと、同じことを思っている。そう確信できるよ。

 君と暮らせば暮らすほど、深まるの想いと満ちる恋。

 頭の中を瑞樹で満杯にして歩いていると、突然……背後から声をかけられた。
 
 
しおりを挟む
感想 85

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

白花の檻(はっかのおり)

AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。 その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。 この出会いは祝福か、或いは呪いか。 受け――リュシアン。 祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。 柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。 攻め――アーヴィス。 リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。 黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。 王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

自分勝手な恋

すずかけあおい
BL
高校の卒業式後に幼馴染の拓斗から告白された。 拓斗への感情が恋愛感情かどうか迷った俺は拓斗を振った。 時が過ぎ、気まぐれで会いに行くと、拓斗には恋人ができていた。 馬鹿な俺は今更自覚する。 拓斗が好きだ、と――。

処理中です...