589 / 1,865
成就編
気持ちも新たに 15
しおりを挟む
「あれ? 話し中ですね」
「きっと向こうでも新年の挨拶を、しているのだろう」
「そうですね。じゃあ潤に……あれ? こっちもだ」
「なんだ。きっと潤と広樹が話しているんだな」
「あ、なるほど。それなら良かったです」
広樹兄さんと潤。二人の兄弟間に僕が突然入ったことにより、築けなかったものがあるかもしれないと、ずっと負い目に思っていた。
しかし最近の二人は気を許し合い、いい雰囲気なので、嬉しくなる。
僕はやはり、人と人が仲良くやっている姿を見るのが好きだな。自分の意見や正義を絶対に曲げず他人に流されない生き方も、もちろん立派だ。だが個々が別々の声を上げて、どこまでも相容れず離れてしまうよりも、個々の意見の折り合いをつけ、歩み寄っていきたいと願ってしまうんだ。
これは……偽善的で優しすぎると言われるかもしれない……想論だとも。
しかし所詮……人は皆違って、それぞれの個性を持っているバラバラな存在だ。その人達が一つの星で、一つの地上で生きていくためには、やはり歩み寄り、譲歩がなくては、空しい世の中になってしまいそうで怖いんだ。
大切な人を失った僕だから……そう願ってしまうのかもしれない。
「瑞樹? 正月早々、難しい顔をしているな。どうした?」
「あ、いえ……何でもありません」
「ふぅ、やっぱり君はまだまだ周りに気を遣い過ぎだ。ほら、リラックスしろ」
「え、あっ……もう!」
宗吾さんがこたつの中でまた僕に触れてきた。今度は太ももの内側に手が入って来そうで、飛び上がった。
やっぱり、こたつは危険だ!
「で、電話するので、大人しくしてくださいよ」
「そうかぁ」
「……こたつ、もう片付けますよ」
「えぇ! それは困る!」
「くすっ」
僕たちのやりとりを聞いていた芽生くんが、目を丸くした。
「パパ、それはダメだよ!」
「そうだよね。芽生くん助けて! パパを見張っておいて」
「はい! たいちょう! ボクにオマカセクダサイ!」
芽生くんはうれしそうにこたつ布団に潜り込んで、宗吾さんの足裏をくすぐった。
「わっ、よせ! 芽生! はははっ!」
****
「兄さん、瑞樹です。明けましておめでとうございます」
「おぉ! 瑞樹か。明けましておめでとう。なんだ? 随分周りが賑やかだな」
「あ、宗吾さんと芽生くんが、ちょっと……」
僕の隣で宗吾さんが芽生くんを抱きかかえて、「この悪戯っ子め」と笑っている。
「へぇ、仲良し家族でいいな。俺も早く父親になりたいよ」
「いよいよ今年は兄さんも、お父さんになるんだね」
「ついでに瑞樹は叔父さんだぞ」
「なんだか照れ臭いな。っと、それより兄さん、大きな蟹が届いたよ」
「無事届いたか。気に入ってくれたか」
「びっくりした。あんなに、いいの?」
「お前、好きだろ?」
「ありがとう。みんなで食べるよ」
「おぅ! 好きなように好きなだけ食べろよ。そうだ、さっき潤から連絡があったぞ」
やはり潤と電話をしていたようだ。
「瑞樹、本気で軽井沢に行くのか」
「あ……うん」
兄さんには、心配されるかもしれない。いや、怒られるかも……。
あの事件直後、函館から入院先の病院に駆けつけてくれた兄さんの蒼白な顔を思い出してしまった。覚悟の上、反応を待つと、それは意外なものだった。
「よし、行ってこい!」
何とも言えない心地になった。兄さんの大きくて温かい手によって、背中を力強く押して貰った気分だ。
「あ、あの……本当に行っていいの?」
「もちろんだ。瑞樹が行きたい時がついに来たんだな。それが嬉しくてな。今年最初のいいニュースだ」
「あ……っ」
僕のあの辛い事件を踏まえて、いいニュースだと言ってくれる兄さんが大好きで、また感極まってしまう。もう……僕の涙腺は最近どうなっている?
「う……っ」
「あー待て待て、泣くなよ。新年早々泣かせるつもりじゃ」
「兄さん……大好きだよ」
「あー? あぁ、馬鹿! 変な告白すんなぁー。隣で宗吾が睨んでいるだろう!」
「え?」
視線を感じて横を向くと、宗吾さんが睨んでいるわけではないが……じとっとした目つきになっていた。
「えっと……この好きは違くて」
「ちょっと受話器を借りるぞ」
「広樹か。瑞樹はもらった!」
「プッ、おいおい何、正義の味方みたいな台詞を吐いているんだ?」
そ、そうですよ! もう……大人げない!
「あ、そうか。芽生とアニメを見過ぎたな。明けましておめでとう」
「おう! 今年もメンコイ我が弟のことをしっかり頼むぜ。それから蟹をひとり占めすんなよ。瑞樹だけじゃなく蟹まで。ん? 変な日本語だな。とにかくあの蟹は瑞樹の好物だ。沢山食べさせろ」
「ははっ、了解だ」
****
「宗吾さん、蟹、食べきれないから持って行きませんか」
「実家に?」
「はい。お母さんと一緒に食べたいなって」
「……瑞樹、サンキュ。いつも母を気に掛けてくれて」
新年の挨拶と芽生くんのお年玉をもらうために、宗吾さんの実家に出掛ける準備をした。
「どうせなら、賑やかに、大勢で食べたくなりました」
「そうだな、その方が美味しいな」
「はい!」
大きな蟹を担いでお母さんの家に到着すると、正月飾りとシンプルな門松が飾られていた。
この前来たときは、クリスマスリースだったのに、不思議な感じだ。
年末年始って、こんなに賑やかだったのか。クリスマスが終わって寂しい気持ちになるのも束の間、すぐに大晦日お正月と、家族のイベントが続く。
家族が集う時間が増え、冬の厳しい寒さを和らげてくれる。
僕もまたお母さんと兄さんとみっちゃんがいる函館に帰ろう。
潤が待つ軽井沢にも早く行きたい。
今の僕と繋がってくれている人たちとの交流を、今年はもっと楽しみたい。
新年の希望を胸に、門を潜った。
「きっと向こうでも新年の挨拶を、しているのだろう」
「そうですね。じゃあ潤に……あれ? こっちもだ」
「なんだ。きっと潤と広樹が話しているんだな」
「あ、なるほど。それなら良かったです」
広樹兄さんと潤。二人の兄弟間に僕が突然入ったことにより、築けなかったものがあるかもしれないと、ずっと負い目に思っていた。
しかし最近の二人は気を許し合い、いい雰囲気なので、嬉しくなる。
僕はやはり、人と人が仲良くやっている姿を見るのが好きだな。自分の意見や正義を絶対に曲げず他人に流されない生き方も、もちろん立派だ。だが個々が別々の声を上げて、どこまでも相容れず離れてしまうよりも、個々の意見の折り合いをつけ、歩み寄っていきたいと願ってしまうんだ。
これは……偽善的で優しすぎると言われるかもしれない……想論だとも。
しかし所詮……人は皆違って、それぞれの個性を持っているバラバラな存在だ。その人達が一つの星で、一つの地上で生きていくためには、やはり歩み寄り、譲歩がなくては、空しい世の中になってしまいそうで怖いんだ。
大切な人を失った僕だから……そう願ってしまうのかもしれない。
「瑞樹? 正月早々、難しい顔をしているな。どうした?」
「あ、いえ……何でもありません」
「ふぅ、やっぱり君はまだまだ周りに気を遣い過ぎだ。ほら、リラックスしろ」
「え、あっ……もう!」
宗吾さんがこたつの中でまた僕に触れてきた。今度は太ももの内側に手が入って来そうで、飛び上がった。
やっぱり、こたつは危険だ!
「で、電話するので、大人しくしてくださいよ」
「そうかぁ」
「……こたつ、もう片付けますよ」
「えぇ! それは困る!」
「くすっ」
僕たちのやりとりを聞いていた芽生くんが、目を丸くした。
「パパ、それはダメだよ!」
「そうだよね。芽生くん助けて! パパを見張っておいて」
「はい! たいちょう! ボクにオマカセクダサイ!」
芽生くんはうれしそうにこたつ布団に潜り込んで、宗吾さんの足裏をくすぐった。
「わっ、よせ! 芽生! はははっ!」
****
「兄さん、瑞樹です。明けましておめでとうございます」
「おぉ! 瑞樹か。明けましておめでとう。なんだ? 随分周りが賑やかだな」
「あ、宗吾さんと芽生くんが、ちょっと……」
僕の隣で宗吾さんが芽生くんを抱きかかえて、「この悪戯っ子め」と笑っている。
「へぇ、仲良し家族でいいな。俺も早く父親になりたいよ」
「いよいよ今年は兄さんも、お父さんになるんだね」
「ついでに瑞樹は叔父さんだぞ」
「なんだか照れ臭いな。っと、それより兄さん、大きな蟹が届いたよ」
「無事届いたか。気に入ってくれたか」
「びっくりした。あんなに、いいの?」
「お前、好きだろ?」
「ありがとう。みんなで食べるよ」
「おぅ! 好きなように好きなだけ食べろよ。そうだ、さっき潤から連絡があったぞ」
やはり潤と電話をしていたようだ。
「瑞樹、本気で軽井沢に行くのか」
「あ……うん」
兄さんには、心配されるかもしれない。いや、怒られるかも……。
あの事件直後、函館から入院先の病院に駆けつけてくれた兄さんの蒼白な顔を思い出してしまった。覚悟の上、反応を待つと、それは意外なものだった。
「よし、行ってこい!」
何とも言えない心地になった。兄さんの大きくて温かい手によって、背中を力強く押して貰った気分だ。
「あ、あの……本当に行っていいの?」
「もちろんだ。瑞樹が行きたい時がついに来たんだな。それが嬉しくてな。今年最初のいいニュースだ」
「あ……っ」
僕のあの辛い事件を踏まえて、いいニュースだと言ってくれる兄さんが大好きで、また感極まってしまう。もう……僕の涙腺は最近どうなっている?
「う……っ」
「あー待て待て、泣くなよ。新年早々泣かせるつもりじゃ」
「兄さん……大好きだよ」
「あー? あぁ、馬鹿! 変な告白すんなぁー。隣で宗吾が睨んでいるだろう!」
「え?」
視線を感じて横を向くと、宗吾さんが睨んでいるわけではないが……じとっとした目つきになっていた。
「えっと……この好きは違くて」
「ちょっと受話器を借りるぞ」
「広樹か。瑞樹はもらった!」
「プッ、おいおい何、正義の味方みたいな台詞を吐いているんだ?」
そ、そうですよ! もう……大人げない!
「あ、そうか。芽生とアニメを見過ぎたな。明けましておめでとう」
「おう! 今年もメンコイ我が弟のことをしっかり頼むぜ。それから蟹をひとり占めすんなよ。瑞樹だけじゃなく蟹まで。ん? 変な日本語だな。とにかくあの蟹は瑞樹の好物だ。沢山食べさせろ」
「ははっ、了解だ」
****
「宗吾さん、蟹、食べきれないから持って行きませんか」
「実家に?」
「はい。お母さんと一緒に食べたいなって」
「……瑞樹、サンキュ。いつも母を気に掛けてくれて」
新年の挨拶と芽生くんのお年玉をもらうために、宗吾さんの実家に出掛ける準備をした。
「どうせなら、賑やかに、大勢で食べたくなりました」
「そうだな、その方が美味しいな」
「はい!」
大きな蟹を担いでお母さんの家に到着すると、正月飾りとシンプルな門松が飾られていた。
この前来たときは、クリスマスリースだったのに、不思議な感じだ。
年末年始って、こんなに賑やかだったのか。クリスマスが終わって寂しい気持ちになるのも束の間、すぐに大晦日お正月と、家族のイベントが続く。
家族が集う時間が増え、冬の厳しい寒さを和らげてくれる。
僕もまたお母さんと兄さんとみっちゃんがいる函館に帰ろう。
潤が待つ軽井沢にも早く行きたい。
今の僕と繋がってくれている人たちとの交流を、今年はもっと楽しみたい。
新年の希望を胸に、門を潜った。
11
あなたにおすすめの小説
優しく恋心奪われて
静羽(しずは)
BL
新人社員の湊 海翔(みなと かいと)は大手企業に就職した。
情報処理システム課に配属された。
毎日作成した書類を営業課に届けている。
新人社員の湊 海翔(みなと かいと)は大手企業に就職した。
情報処理システム課で毎日作成した書類を営業課に届けている。
そこには営業課に所属するやり手社員、綾瀬 遥斗(あやせ はると)の姿があった。
顔見知りになった二人は、会社の歓迎会で席が隣になったことで打ち解け遥斗は湊に一目惚れしていた事、自分のセクシャリティを打ち明けた。
動揺しつつも受け入れたいと思う湊。
そのタイミングで大学時代に憧れていた先輩・朝霧 恒一(あさぎり こういち)と卒業後初めて再会し、湊の心は二人の間で揺れ動く。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
届かない「ただいま」
AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。
「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。
これは「優しさが奪った日常」の物語。
この冬を超えたら恋でいい
天気
BL
夜の街で、凪は人生の底にいた。
古いアパートに帰る途中、父の残した借金の取り立てに絡まれ、逃げ場を失う。
そこに現れたのは、大手企業の社長・鷹宮だった。
偶然の救い。年齢も立場も違う二人は、その夜を境に交わることになる。
事情を多く語らない凪は、不幸が当たり前のように身にまとい、誰かに頼ることを知らない。
一方の鷹宮は、完璧な成功者として生きてきた男だった。
危険から守るため、鷹宮は凪を一時的に自宅へ迎え入れる。
冬の同居生活の中で、凪は少しずつ日常を取り戻していく。
大学へ通い、温かい食事をし、夜を一人で怯えずに眠る。
しかし、守られることに慣れない凪は、距離が近づくほどに自分から一歩引いてしまう。
それは、失うことを恐れる、健気で不器用な選択だった。
一方、鷹宮は気づいてしまう。
凪が笑うだけで、胸が満たされることに。
そんな自分の感情から凪を守るつもりで引いた距離が、
凪を遠ざけてしまう。
近づきたい。
けれど、踏み込めば壊してしまうかもしれない。
互いを思うほど、すれ違いは深くなる。
2人はこの冬を越えることができるのかーー
双葉の恋 -crossroads of fate-
真田晃
BL
バイト先である、小さな喫茶店。
いつもの席でいつもの珈琲を注文する営業マンの彼に、僕は淡い想いを寄せていた。
しかし、恋人に酷い捨てられ方をされた過去があり、その傷が未だ癒えずにいる。
営業マンの彼、誠のと距離が縮まる中、僕を捨てた元彼、悠と突然の再会。
僕を捨てた筈なのに。変わらぬ態度と初めて見る殆さに、無下に突き放す事が出来ずにいた。
誠との関係が進展していく中、悠と過ごす内に次第に明らかになっていくあの日の『真実』。
それは余りに残酷な運命で、僕の想像を遥かに越えるものだった──
※これは、フィクションです。
想像で描かれたものであり、現実とは異なります。
**
旧概要
バイト先の喫茶店にいつも来る
スーツ姿の気になる彼。
僕をこの道に引き込んでおきながら
結婚してしまった元彼。
その間で悪戯に揺れ動く、僕の運命のお話。
僕たちの行く末は、なんと、お題次第!?
(お題次第で話が進みますので、詳細に書けなかったり、飛んだり、やきもきする所があるかと思います…ご了承を)
*ブログにて、キャライメージ画を載せております。(メーカーで作成)
もしご興味がありましたら、見てやって下さい。
あるアプリでお題小説チャレンジをしています
毎日チームリーダーが3つのお題を出し、それを全て使ってSSを作ります
その中で生まれたお話
何だか勿体ないので上げる事にしました
見切り発車で始まった為、どうなるか作者もわかりません…
毎日更新出来るように頑張ります!
注:タイトルにあるのがお題です
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる