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小学生編
恋 ころりん 1
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五年前、月影寺。
「じゃあ明日から、この子をよろしく頼むよ。無理を言って悪いな」
「うちの寺がお役に立てるのなら良かったよ。それに小坊主になってくれる人を丁度探していたんだ」
中学をなんとか卒業した僕は、エスカレーター式で上がれる高校には進学しませんでした。
どうやら薄々気付いていましたが、僕は少し人と違うみたいです。ひとりで空想するのが大好きで、それでいって神社仏閣フェチで、特に仏さまが大好きなんですよ!
あの柔らかなお顔を拝顔するたびに、しあわせな気持ちでふわふわです。
だから進路相談で訴え続けました。
高校ではなく、お寺に勤めたいと。
両親も妹も学校の先生も呆れていましたが、あまりの熱心さに折れて、こうやって先生の知り合いのお寺で働かせてもらえることになったのです。
僕が明日からお勤めするのは、北鎌倉の山奥にある『月影寺』というお寺。
ここの住職は、とっても美しい人でびっくりしました。僕が知っているお坊さんは、皆、おじさんで、イガグリ頭でごっつい人ばかりだったのに、この人はとても若い。しかも俳優のような甘いマスクで、栗毛色の艶やかな髪も麗しいです!
思わず見惚れていると、目があってニコッと微笑まれましたよ。
「小森風太くん、僕は住職の張矢 翠です。明日から通ってくれるのを楽しみにしているよ」
「はい! 精一杯頑張ります。お寺で1日過ごせるなんて、憧れでした!」
「ふふっ、可愛いね」
よかった~ ご住職って気難しい人だと思っていたのに、全然違うんですね!
「翠、ありがとうな。久しぶりに会うのにいきなりこんな頼みをして」
「達哉の紹介だし、こんな可愛い小坊主さんなら大歓迎だよ。明日から楽しくなりそうだ」
「翠ならそう言ってくれると思ったよ。今時、高校に進学しないのには驚いたが、志のしっかりした子だよ」
そうそう言い忘れましたが、僕の通っていた中学の母体は、隣にある立派なお寺で、僕をここに連れてきてくれた先生は、そのお寺の住職です。
やはり人生はご縁ですね。
僕をここまで導いてくださった先生に向かって、合掌をした。
「先生、無理いって……ありがとうございます。そして月影寺のご住職さま、明日からどうぞよろしくお願いします!」
「待っているよ」
「あの……コレ、食べても?」
「あぁどうぞ」
目の前にある最中が、実はさっきから気になって仕方が無かったんです。うちは洋菓子ばかりで滅多に和菓子なんて食べさせてもらえなかったので新鮮です!
一口食べると、止まらないです!
パクっ! ムシャムシャ!
「○△□~‼ おおおお、美味しいですー!」
「あはっ、この子はワンちゃんみたいで可愛いねぇ、尻尾を振って喜んでいるみたいだ」
「ワン!」(えへへ、調子に乗りすぎですよね?)
「小森、コラっ、ふざけんな」
「だってすごく美味しいんですもん」
「良かったよ。ここでは食べ放題だよ」
「わーい、わーい」
「翠は食べても太らないからいいよな」
「達哉は少し太った?」
「かもな」
美味しい最中に、とても優しくて綺麗なご住職。
和やかな雰囲気に、僕の心はどこまでも凪いでいます。
ここなら、上手くやっていけそうです。
僕の居場所になるといいな。
****
九年前、江ノ島。
「なぁお前どうするんだよ?」
「え?」
「だから知花ちゃんのことだよ。卒業式で告白されたんだろう?」
「まぁな」
「彼女……ミス、由比ヶ浜高校だぜ! 断る理由なんてないじゃないか」
「うーん」
なんで俺なのか分からないが、学年一の美女、いや美人というより親しみのある可愛い女の子から、卒業式に告白されたのは事実だ。
飛び上がる程うれしかったのと同時に、衝撃だった。
『菅野良介くん。私はあなたを高校三年間ずっと見ていました。優しくて温かなあなたが好き! だから二十歳までの期間限定で付き合って下さい』
支離滅裂な告白過ぎて、頭から離れないよ。
遠巻きに見ていた奴らから冷やかされ、俺は即答出来なかった。
二十歳まで?
その真意を知りたくて。
そしてやがて本人の口から、既に病に冒されていて二十歳までしか生きられないと余命宣告をもらっていると告げられて、青天の霹靂だった。
穏やかな日常をただ生きてきた俺には……あまりに遠い世界を彼女は生きていた。
限り或る命を持つって、どんな気持ちだ?
それが本当なら、残された大切な時を過ごす相手が俺でいいのか。
特に取り柄もない俺が、こんなに切望されるのは初めてだ。
彼女のひたむきさに心を打たれ、告白されてから一ヶ月後、俺は考えに考えて告白を受け入れた。
一分一秒を大切に、生きてみたくなったんだ。
知花ちゃんと共に。
「じゃあ明日から、この子をよろしく頼むよ。無理を言って悪いな」
「うちの寺がお役に立てるのなら良かったよ。それに小坊主になってくれる人を丁度探していたんだ」
中学をなんとか卒業した僕は、エスカレーター式で上がれる高校には進学しませんでした。
どうやら薄々気付いていましたが、僕は少し人と違うみたいです。ひとりで空想するのが大好きで、それでいって神社仏閣フェチで、特に仏さまが大好きなんですよ!
あの柔らかなお顔を拝顔するたびに、しあわせな気持ちでふわふわです。
だから進路相談で訴え続けました。
高校ではなく、お寺に勤めたいと。
両親も妹も学校の先生も呆れていましたが、あまりの熱心さに折れて、こうやって先生の知り合いのお寺で働かせてもらえることになったのです。
僕が明日からお勤めするのは、北鎌倉の山奥にある『月影寺』というお寺。
ここの住職は、とっても美しい人でびっくりしました。僕が知っているお坊さんは、皆、おじさんで、イガグリ頭でごっつい人ばかりだったのに、この人はとても若い。しかも俳優のような甘いマスクで、栗毛色の艶やかな髪も麗しいです!
思わず見惚れていると、目があってニコッと微笑まれましたよ。
「小森風太くん、僕は住職の張矢 翠です。明日から通ってくれるのを楽しみにしているよ」
「はい! 精一杯頑張ります。お寺で1日過ごせるなんて、憧れでした!」
「ふふっ、可愛いね」
よかった~ ご住職って気難しい人だと思っていたのに、全然違うんですね!
「翠、ありがとうな。久しぶりに会うのにいきなりこんな頼みをして」
「達哉の紹介だし、こんな可愛い小坊主さんなら大歓迎だよ。明日から楽しくなりそうだ」
「翠ならそう言ってくれると思ったよ。今時、高校に進学しないのには驚いたが、志のしっかりした子だよ」
そうそう言い忘れましたが、僕の通っていた中学の母体は、隣にある立派なお寺で、僕をここに連れてきてくれた先生は、そのお寺の住職です。
やはり人生はご縁ですね。
僕をここまで導いてくださった先生に向かって、合掌をした。
「先生、無理いって……ありがとうございます。そして月影寺のご住職さま、明日からどうぞよろしくお願いします!」
「待っているよ」
「あの……コレ、食べても?」
「あぁどうぞ」
目の前にある最中が、実はさっきから気になって仕方が無かったんです。うちは洋菓子ばかりで滅多に和菓子なんて食べさせてもらえなかったので新鮮です!
一口食べると、止まらないです!
パクっ! ムシャムシャ!
「○△□~‼ おおおお、美味しいですー!」
「あはっ、この子はワンちゃんみたいで可愛いねぇ、尻尾を振って喜んでいるみたいだ」
「ワン!」(えへへ、調子に乗りすぎですよね?)
「小森、コラっ、ふざけんな」
「だってすごく美味しいんですもん」
「良かったよ。ここでは食べ放題だよ」
「わーい、わーい」
「翠は食べても太らないからいいよな」
「達哉は少し太った?」
「かもな」
美味しい最中に、とても優しくて綺麗なご住職。
和やかな雰囲気に、僕の心はどこまでも凪いでいます。
ここなら、上手くやっていけそうです。
僕の居場所になるといいな。
****
九年前、江ノ島。
「なぁお前どうするんだよ?」
「え?」
「だから知花ちゃんのことだよ。卒業式で告白されたんだろう?」
「まぁな」
「彼女……ミス、由比ヶ浜高校だぜ! 断る理由なんてないじゃないか」
「うーん」
なんで俺なのか分からないが、学年一の美女、いや美人というより親しみのある可愛い女の子から、卒業式に告白されたのは事実だ。
飛び上がる程うれしかったのと同時に、衝撃だった。
『菅野良介くん。私はあなたを高校三年間ずっと見ていました。優しくて温かなあなたが好き! だから二十歳までの期間限定で付き合って下さい』
支離滅裂な告白過ぎて、頭から離れないよ。
遠巻きに見ていた奴らから冷やかされ、俺は即答出来なかった。
二十歳まで?
その真意を知りたくて。
そしてやがて本人の口から、既に病に冒されていて二十歳までしか生きられないと余命宣告をもらっていると告げられて、青天の霹靂だった。
穏やかな日常をただ生きてきた俺には……あまりに遠い世界を彼女は生きていた。
限り或る命を持つって、どんな気持ちだ?
それが本当なら、残された大切な時を過ごす相手が俺でいいのか。
特に取り柄もない俺が、こんなに切望されるのは初めてだ。
彼女のひたむきさに心を打たれ、告白されてから一ヶ月後、俺は考えに考えて告白を受け入れた。
一分一秒を大切に、生きてみたくなったんだ。
知花ちゃんと共に。
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