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小学生編
青い車に乗って・地上編 7
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「お兄ちゃん、そーくんねちゃったみたいだよ」
「え? 宗吾さんならピンピンしているよ?」
「ちがうよ。そうくん」
「あっ、ごめん、ごめん」
芽生くんはパパと呼ぶのに、つい。
僕がとっておきの時にだけ呼ぶ「そうくん」を咄嗟に思い出すなんて、いよいよ重症だな。先週は運動会、今週も外出となかなかゆっくり宗吾さんと触れ合えていないからだ。
ソファに座っていた想くんは、駿くんの肩にもたれて目を瞑っていた。
うとうと、うとうと……
もう夢の中のようだ。
「お兄ちゃん、しーっだよね」
「少しお疲れなんだね。静かにしないとね」
「じゃあ外で遊ぶか。せっかくこんな自然豊かな土地に来たんだ」
「いいの?」
「あぁ、パパも発散したい! 最近身体を動かしていないからな」
宗吾さんがニヤリと笑って、僕を意味ありげに見る。
なんだか居たたまれないような恥ずかしい気持ちになってしまうよ。
「ぼ、僕も一緒に発散します」
「ははっ、瑞樹同じだったのか~」
僕たちは再びログハウス前の庭で、元気に遊んだ。
今度はキャッチボールだ。
宗吾さんも芽生くんも基本的に体力が有り余っているタイプで、僕も北国育ちで寒さには強いからまだまだいけると思ったが、僕だけ途中でバテてしまった。
うーん、おそるべし……宗吾さんと芽生くん。
それでも時計を見ると、小一時間は遊んでいた。
ログハウスに戻ると、ブランケットを被って眠っていた想くんが目覚め、帰りの運転をどうするか話し合っていた。
それを聞いた僕は、ある欲望を抱いてしまった。
ただ……こんな感情は殆ど使ったことながないので、言い出すまで時間がかかってしまった。
「あの、よかったら帰りは僕が運転しようか」
「えっ?」
唐突な申し出に、想くんと駿君が驚いて顔を見合わせた。
あぁ違うな、そうじゃない。
僕は心のままに、ありのままの気持ちを伝えることにした。
「運転をしてみたいというのが、本音なんだ」
行きに想くんがお母さんと楽しそうに喋りながら運転しているのを見続けて、憧れてしまったんだ。
仮初めでいい。
少しだけでいいから……
僕にも青い車を運転させてくれないかな?
君のお母さんを助手席に乗せて、この世を走ってみたいんだ。
あぁ……どうしよう?
今、僕はどんな顔をしている?
微笑みには、きっと隠しきれない寂しさが宿っているだろう。
恥ずかしくなり、そのまま目を伏せてしまった。
それでも隠す切れないよ。
思慕の気持ちが溢れてきてしまう。
故郷が恋しくなってしまう。
僕の様子をじっと見つめていた想くんが、控えめに口を開いた。
「瑞樹くんは、もしかして青い車に何か深い思い出が?」
想くんの瞳は静かな湖のように澄んでいて、僕の返事を全て受け入れてくれる気がした。
「……想くん、僕の夢を叶える手伝いをしてもらないかな?」
こんな風に頼むのも初めてだ。
こんなことを頼める友だちは初めてだ。
想くんは僕に寄り添ってくれた。
「僕のお母さんとドライブをして欲しいな」
「いいの? その……ごめん。君の大切なお母さんなのに」
「……僕はまだ眠気が取れなくて、よかったら任せてもいいかな?」
「あ……ありがとう」
そんな経緯で、僕は帰りの運転を任された。
想くんは芽生くんの隣に座り、想くんのお母さんは僕の横に。
あぁ、お母さんを助手席に乗せている。
これは夢にまで見た光景だ。
「瑞樹くん、運転よろしくね」
「はい」
お母さんがシートベルトをしたのを確認し、アクセルを踏み込む。
今から、僕だけでは叶えられない夢に踏み込んでいく。
「瑞樹くんのお母さんも、きっとこんな日を楽しみにしていたでしょうね」
「はい、小さい頃、母と約束したんです。いつか大人になったら青い車を買って乗せてあげるねって」
「まぁ、そうだったのね。あぁ……痛い程お母さんの気持ちが分かるわ。子育て中の母なら、誰でも息子が逞しく成長した姿を夢に抱くものよ」
「そうでしょうか」
「ええ、そうよ。今日はきっと天国から見守ってくれているのね」
「そんな気がします。あの……実は僕……歳を重ねたお母さんを想像出来なかったのですが、今日なんとなくイメージ出来て嬉しかったです」
「ふふ、私に重ねてくれていいのよ」
「すみません」
あまりに優し過ぎて泣けてしまうよ。
想くんと出逢って夢を叶えることが出来た。
「私でも、役に立つのね」
「僕に母の夢をみさせてくれました。もう叶わないと思っていたのに」
想くんのお母さんの言葉は慈悲深く、心にすっと入ってくる。
まるで……まるで……お母さんみたいに。
「瑞樹くん、人と人って、もたれ合って生きているのよね。あなたは宗吾さんと芽生くんに囲まれて、とても幸せなのね」
「はい、僕は二人に支えられています」
「いいわね。私と想もあなたに勇気と元気をもらったわ」
「僕から……?」
「えぇ、あなたは生き生きしているわ。毎日を丁寧に大切に生きているのね」
「あ……ありがとうございます」
想くんのお母さんからの言葉を噛みしめた。
まるで天国の母からのメッセージのように。
「天国のお母さんも今のあなたを見て、安心していると思うわ」
「そうでしょうか……そうだといいな」
瑞樹、大人になるまで傍にいられなくてごめんね。
でもいつも見守っているわ。
記憶の中でもあなたを抱きしめて、空からも抱きしめて。
青い車に乗せてくれてありがとう。
お友達も、お友達のご家族も大切にね。
「お母さん……」
「なぁに?」
「あ、すみません……僕っ」
「いいのよ。そう呼んでも」
「お母さん、ありがとう」
青い車はこの世を走っていく。
僕の人生と共に。
いつか……いつか……天国のお母さんにまた逢う日まで。
青い車に乗って・地上編 了
あとがき
****
『今も初恋、この先も初恋』とのクロスオーバーでした。
⇩(こちらとリンクしています)
https://estar.jp/novels/25931194/viewer?page=125
次回からはいよいよクリスマスの物語になります。
たぶん年内書いていそうです🎅🎄
「え? 宗吾さんならピンピンしているよ?」
「ちがうよ。そうくん」
「あっ、ごめん、ごめん」
芽生くんはパパと呼ぶのに、つい。
僕がとっておきの時にだけ呼ぶ「そうくん」を咄嗟に思い出すなんて、いよいよ重症だな。先週は運動会、今週も外出となかなかゆっくり宗吾さんと触れ合えていないからだ。
ソファに座っていた想くんは、駿くんの肩にもたれて目を瞑っていた。
うとうと、うとうと……
もう夢の中のようだ。
「お兄ちゃん、しーっだよね」
「少しお疲れなんだね。静かにしないとね」
「じゃあ外で遊ぶか。せっかくこんな自然豊かな土地に来たんだ」
「いいの?」
「あぁ、パパも発散したい! 最近身体を動かしていないからな」
宗吾さんがニヤリと笑って、僕を意味ありげに見る。
なんだか居たたまれないような恥ずかしい気持ちになってしまうよ。
「ぼ、僕も一緒に発散します」
「ははっ、瑞樹同じだったのか~」
僕たちは再びログハウス前の庭で、元気に遊んだ。
今度はキャッチボールだ。
宗吾さんも芽生くんも基本的に体力が有り余っているタイプで、僕も北国育ちで寒さには強いからまだまだいけると思ったが、僕だけ途中でバテてしまった。
うーん、おそるべし……宗吾さんと芽生くん。
それでも時計を見ると、小一時間は遊んでいた。
ログハウスに戻ると、ブランケットを被って眠っていた想くんが目覚め、帰りの運転をどうするか話し合っていた。
それを聞いた僕は、ある欲望を抱いてしまった。
ただ……こんな感情は殆ど使ったことながないので、言い出すまで時間がかかってしまった。
「あの、よかったら帰りは僕が運転しようか」
「えっ?」
唐突な申し出に、想くんと駿君が驚いて顔を見合わせた。
あぁ違うな、そうじゃない。
僕は心のままに、ありのままの気持ちを伝えることにした。
「運転をしてみたいというのが、本音なんだ」
行きに想くんがお母さんと楽しそうに喋りながら運転しているのを見続けて、憧れてしまったんだ。
仮初めでいい。
少しだけでいいから……
僕にも青い車を運転させてくれないかな?
君のお母さんを助手席に乗せて、この世を走ってみたいんだ。
あぁ……どうしよう?
今、僕はどんな顔をしている?
微笑みには、きっと隠しきれない寂しさが宿っているだろう。
恥ずかしくなり、そのまま目を伏せてしまった。
それでも隠す切れないよ。
思慕の気持ちが溢れてきてしまう。
故郷が恋しくなってしまう。
僕の様子をじっと見つめていた想くんが、控えめに口を開いた。
「瑞樹くんは、もしかして青い車に何か深い思い出が?」
想くんの瞳は静かな湖のように澄んでいて、僕の返事を全て受け入れてくれる気がした。
「……想くん、僕の夢を叶える手伝いをしてもらないかな?」
こんな風に頼むのも初めてだ。
こんなことを頼める友だちは初めてだ。
想くんは僕に寄り添ってくれた。
「僕のお母さんとドライブをして欲しいな」
「いいの? その……ごめん。君の大切なお母さんなのに」
「……僕はまだ眠気が取れなくて、よかったら任せてもいいかな?」
「あ……ありがとう」
そんな経緯で、僕は帰りの運転を任された。
想くんは芽生くんの隣に座り、想くんのお母さんは僕の横に。
あぁ、お母さんを助手席に乗せている。
これは夢にまで見た光景だ。
「瑞樹くん、運転よろしくね」
「はい」
お母さんがシートベルトをしたのを確認し、アクセルを踏み込む。
今から、僕だけでは叶えられない夢に踏み込んでいく。
「瑞樹くんのお母さんも、きっとこんな日を楽しみにしていたでしょうね」
「はい、小さい頃、母と約束したんです。いつか大人になったら青い車を買って乗せてあげるねって」
「まぁ、そうだったのね。あぁ……痛い程お母さんの気持ちが分かるわ。子育て中の母なら、誰でも息子が逞しく成長した姿を夢に抱くものよ」
「そうでしょうか」
「ええ、そうよ。今日はきっと天国から見守ってくれているのね」
「そんな気がします。あの……実は僕……歳を重ねたお母さんを想像出来なかったのですが、今日なんとなくイメージ出来て嬉しかったです」
「ふふ、私に重ねてくれていいのよ」
「すみません」
あまりに優し過ぎて泣けてしまうよ。
想くんと出逢って夢を叶えることが出来た。
「私でも、役に立つのね」
「僕に母の夢をみさせてくれました。もう叶わないと思っていたのに」
想くんのお母さんの言葉は慈悲深く、心にすっと入ってくる。
まるで……まるで……お母さんみたいに。
「瑞樹くん、人と人って、もたれ合って生きているのよね。あなたは宗吾さんと芽生くんに囲まれて、とても幸せなのね」
「はい、僕は二人に支えられています」
「いいわね。私と想もあなたに勇気と元気をもらったわ」
「僕から……?」
「えぇ、あなたは生き生きしているわ。毎日を丁寧に大切に生きているのね」
「あ……ありがとうございます」
想くんのお母さんからの言葉を噛みしめた。
まるで天国の母からのメッセージのように。
「天国のお母さんも今のあなたを見て、安心していると思うわ」
「そうでしょうか……そうだといいな」
瑞樹、大人になるまで傍にいられなくてごめんね。
でもいつも見守っているわ。
記憶の中でもあなたを抱きしめて、空からも抱きしめて。
青い車に乗せてくれてありがとう。
お友達も、お友達のご家族も大切にね。
「お母さん……」
「なぁに?」
「あ、すみません……僕っ」
「いいのよ。そう呼んでも」
「お母さん、ありがとう」
青い車はこの世を走っていく。
僕の人生と共に。
いつか……いつか……天国のお母さんにまた逢う日まで。
青い車に乗って・地上編 了
あとがき
****
『今も初恋、この先も初恋』とのクロスオーバーでした。
⇩(こちらとリンクしています)
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たぶん年内書いていそうです🎅🎄
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