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小学生編
夏の余韻 1 (クロスオーバーのおまけの話)
しおりを挟む「さぁ、いつき、行くわよね」
「いっくん、パパと手を繋ごう。そろそろ帰らないと渋滞に巻き込まれてしまうんだ」
「ううん……でもぉ……まって、もういちどだけ、めーくぅん!」
いっくんがタタッとボクの所にもどってきてくれて、ギュッとだきついてくれたよ。わぁ、くすぐったいな。あったかいな。
「めーくん、だいしゅきだよぅ、またあそんでね」
うるうる目のいっくんに、ボクもうるうるだよ。
「ぜったいにまたあえるよ。ボクもいっくんのこと大好きだもん」
「わぁ、めーくん、めーくん、いっくんのおにーちゃん!」
「えへへ」
でもね、ニコニコ笑顔でおわかれしたよ。
だってしばらくあえなんだもん。
いっくんには笑顔を思い出してほしいから。
いっくん、車の中からもずっと手をふってくれた。
「めーくん、めーくん、バイバイ」
「いっくん、またね!」
ボクも見えなくなるまで、手をブンブン元気にふったよ。
いっくんが、こんなにボクをしたってくれるなんて、うれしいなぁ。
クラスのみんなには妹や弟がいてにぎたかだけど、ボクにはいなかったから、いっくんがいてくれて、うれしい。
おにいちゃんって、いいね。
「あぁ……帰ってしまったね。芽生くん……僕たちもそろそろ帰ろうか」
お兄ちゃんが優しく手をつないでくれた。
「お兄ちゃん」
「ん? どうしたの?」
「ボク、いっくんにお兄ちゃんって呼ばれるの、うれしかったよ。お兄ちゃんもいつも同じ気持ちなの?」
お兄ちゃんはふわっとお花のようにやさしく笑ってくれた。
「そうだよ。芽生くんが僕をそう呼んでくれるのが、とても嬉しいよ」
「ボク、これからもずっとずっとお兄ちゃんって呼ぶよ」
「……そうだといいな」
「えへへ」
お兄ちゃんにくっつくと、くすぐったそうに笑ってくれた。
「瑞樹くんたちも、そろそろ帰るのかな?」
「あ、翠さん。あの……月影寺の結界は最高でした。改めて、ありがとうございます」
「良かったよ。そう言ってもらえるのが一番嬉しいよ。あれ? 芽生くん目の端に涙が……いっくんとお別れさみしかったのかい?」
スイさんに顔をのぞき込まれちゃたら、うそはつけないよ。
わらってお別れしようとがんばったけど、ちょっぴり泣いちゃった。
「……すこしさみしかったです。本当にまた会えるかなって」
「そうか、正直でいいね。仏教にはね『会うは別れの始め、別れは出会いの縁』という言葉があるんだよ。いっくんと芽生くんの縁はずっと続いていくから大丈夫だよ」
「えん……?」
「そう、とても大切なことだよ。糸と糸の結び目みたいにね。芽生くんと瑞樹くんがギュッと手を繋いでいるのも『縁』を感じるよ」
「あ、ありがとうございます」
「ごめんね。難しいことを話してしまったかな? とにかく大丈夫。いっくんとはまた会えるよ。また遊びにおいで、小僧くん」
「わぁ、はい! おやぶんとこもりんくんもいるし、またきます」
「芽生くんはしっかりしているね。君は去年よりぐっと成長したね。いい子だ」
スイさんが頭を撫でてくれたよ。
「芽生、良かったな。御利益あるぞ~」
「そうかな?」
「あぁ、あるさ~ あるさ~ きっとあるさ!」
そういえば、パパもお兄ちゃんも朝からごきげんだね。
このお寺は夢の国みたいだから、パパとお兄ちゃんにとっても夢のように楽しい時間だったんだね。
車に乗り込むと、とっても暑かった。
「わぁ~ 暑いよ、これ、ぬいでいい?」
「えぇ?」
「いいぞー!」
汗がドバッと出たから、Tシャツぬいじゃった。
となりに座るお兄ちゃんもおでこに大粒の汗をかいているよ。
なのにボタンを一番上までとめて、くるしそうだよ。
「お兄ちゃんもぬげばいいのに?」
「え! それはちょっと……」
「どうして?」
「ええっとね、今、僕は修行中なんだ」
「えー もうお寺から出たのに?」
「うーん、まだ続いているんだ。そう、そうなんだよ」
お兄ちゃん、なんだか必死だね。
こまったお顔!
あー さては、またパパが困らせたんだな。
「パパー お兄ちゃんをこまらせたでしょ」
「えー なんのことだ?」
「うそついてもバレバレだよ」
「どうしてだ?」
「だってお鼻のした、びよーんだもん」
「え! 参ったな」
「くすっ、くすくす、芽生くんってば」
「はははっ、芽生がパワーアップしたな。小僧体験をしたもんな」
「えへへ」
車の中はいつもの会話。
にぎやかで明るいボクの家族!
****
「パパぁー パパぁ、いっくんねおうちにかえったらねぇ、えにっきをかくよ」
「あぁ、沢山書けそうか」
「うん、いっぱいかくよ」
「そうか、頑張れ!」
「だからね、いまのうちにねんねしとく」
「もう寝ちゃうのか」
「いっくんね、ワープするの」
「そうか、そうか」
いっくん、芽生坊との別れを寂しがって、大泣きするかと思ったが、大丈夫だったな。
ほっと胸を撫で下ろしていると、オレを泣かすようなことを……
「パパぁ、いっくん、めーくんとのおわかれ……ほんとは、しゅごく、さみしかったんだ」
「わかるよ。ますます仲良し兄弟になったんだもんな」
「でもね、いっくん、パパがいるからがんばる! だってパパもみーくんとのおわかれ、ほんとえーんえーんだったでしょ?」
「いっくん……」
「パパには、もう、いっくんがいるから、しゃみしくないよ」
ヤバい、また泣きそうだ。
いっくんの言葉はいつだって真っ直ぐで純粋で優しくて健気で可愛い。
いっくんは舌足らずで年齢より幼く見られがちだが、菫を支えて生きて来たしっかりした子なんだ。
「いっくん、大好きだ!」
「いっくんも! いっくんもパパ、だいしゅきだよ」
一度路肩に寄せて、深呼吸した。
「潤くん、どうしたの?」
菫が心配そうに声をかける。
オレは首を横に振って、明るく笑った。
「すみれ、楽しかったな! オレたち幸せだな!」
「うん、潤くんが運んでくれた縁よ、ありがとう」
「パパ、たのしいかぞくりょこうだったねぇ」
「あぁ、最高だった。さてと……オレたちの家に帰るか」
「うん!」
振り返っていっくんの頭を撫でてやった。
いっくんはくすぐったそうに、うれしそうに笑ってくれた。
「よし、出発だ!」
呼吸を整えて、安全運転をしよう。
また会う日を楽しみに。
****
いっくんね、おてらのなつやすみのえ、がんばってかいたよ。
とくにすいしゃんのおちりはぷりんぷりんにね。
パパもママも、ちょっとこまったおかおしてたけど、いっくんとってもじょうずにかけたから、すいしゃんのおてがみにもかいちゃった!
きっとよろこんでくれるよね?
「いつき、おはよー! ひさしぶりだな。りょこうたのしかったか」
「いっくん、おてらで、ちゃんときもだめししてきたよ」
「へー! じゃあ、おばけみたか? こわかっただろう? ないただろ?」
ええっと、
「おばけはみたよ」
「おぉ! どんなおばけだった?」
「えっとね、おちりのおばけだったよ」
「え! こわかっただろう。おしりだけなんてホラーだな」
「ううん、かわいかったよ」
「え? でも、ないただろ?」
「ううん、いっぱいわらったよ」
そうこたえると、キョトンとされちゃった。
「いつきって、すごいな! かっこいいんだな、みなおしたぞ」
「えへへ、しょうかな?」
「いっしょにあそぼうぜ」
「うん! サッカーもできるよ」
「へぇ、いつのまに」
「あ、あのね、めーくんに……」
「めーくんってだれ?」
「おにいちゃんにおしえてもらったんだ」
「へぇ、よかったな!」
「うん!」
おともだちといっしょにあそべるの、うれちいな。
めーくんがサッカーおしえてくれたから、いっくんね、みんなとたくさんあそべるようになったよ。
「めーくん、ありがとう! おにーちゃん、だいしゅき!」
おそらにむかって、おおきなこえでさけんだよ。
めーくんにとどくかな?
きっと、とどくよ!
しんじてるもん!
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