まるでおとぎ話

志生帆 海

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番外編 『おとぎ話を聞かせてよ』6  (side 雪也)

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 洋館の二階にあるアーチを描く出窓から、僕は白薔薇の咲き乱れる中庭を見下ろしていた。

 白い薔薇の花が、夜空から降り注ぐ月光に照らされて、静寂の中、清々しい空気を生み出していた。きっと今……兄さまも隣の部屋から同じ光景を同じ気持ちで見ていることだろう。

 あれから今日までの日々を思い返せば、それはまるでおとぎ話のような出来事ばかり。

 兄さまと海里先生は正式にお付き合いをし出し、僕はそれを喜んだ。尊敬する頼もしい海里先生なら、きっと兄さまのことを守ってくださる。

 兄さまは家を守り、僕を守り……ずっとやってきた人だ。

 そんな兄さまが、羽を休める場所を作ってあげたかった。

 僕はまだ幼くて足手纏いでしかならないから、そんな場所を兄さまにプレゼントすることが出来ず、ずっともどかしかったんだ。

 やがてこの洋館をホテルと提携することによって安定した収入を得られるようになった。生活はみるみる落ち着いて……僕の治療も再開され、季節が巡る頃には心臓の手術をしていただけることになった。手術は怖いけれども、海里先生が執刀して下さるのだから、きっと大丈夫。

 兄さま……僕もちゃんと大人になりたい。

 大人になって兄さまの片腕になりたいんだ。

 

 その夢が叶うんだよ。

 それにしても奥手な兄さまは、海里先生と付き合うといっても、品行方正に出かけるのは昼がいいとか言って、いつも暗くなるまでには帰宅してしまうんだから、何も進展していないんじゃないかな。

 入院生活が長くて女性みたいに耳年増になってしまった僕の方が、海里先生のことを心配してしまうよ。

 でも……もう明日からは、きっとそんな心配はいらない。

 

 今宵は海里先生の誕生日だって知っている?

 兄さまのすべてを、きっと海里先生は強請るだろう。奪うだろう。

 今宵、二人は結ばれる──

 

 だから……まだ兄さまから見たら小さな子供のような僕は、早く眠ることにするよ。ふたりの邪魔をしないようにね。

 僕が布団の中でまどろみうとうとし出した時、一度海里先生が僕の部屋を覗いたのが分かった。ちゃんと寝ているか確認に来たのかな。

 ふふっ……やっぱり今日ふたりは結ばれるようだ。

 やがて風に乗って届くのは、庭先の白薔薇の香りと……ふたりが愛を紡ぐ声。

 これは最高の子守歌だね。

 そして、まるでおとぎ話のような物語だね。

 兄さま、海里先生、おめでとう!

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