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出逢いの章
共に歩む道 2
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「優也さん、それじゃ行ってくるよ」
「うん……いってらっしゃい」
「そんな寂しそうな顔しないで、あーもう一緒に連れて行きたくなるだろ」
溜息交じりに呟くKaiくんに、玄関先できゅっと抱きしめられた。
「あっ……」
僕よりずっと背が高いKaiくんに腰を持ちあげられるように抱かれると、いつもつま先立ちになるので、足が宙に浮いてしまいそうになる。地に足が着いていないと、どこか不安な気持ちになってしまう。
離れ難いな。
もっとくっつきたくて、僕の方も少し背伸びをしてKaiくんの広い肩に手を回した。するとKaiくんも僕の気持ちを汲んでくれたのか、顎を掴んでキスを落としてくれた。
目を閉じて、僕はそれを受け入れる。
重なる唇が、そっとなぞるように僕の口を吸っていく。
あぁKaiくんとのキスは温かい。
もっと欲しくて温もりが欲しくて、半開きになっていく唇はひどく欲張りだ。そのまま舌を絡め合うキスをする。
「甘いな、優也さんのここ。たまらないよ」
Kaiくんの指が、そっと僕の唇の上に触れた。
「ん……Kaiくん、気を付けて」
「大丈夫。ちゃんと帰って来るから」
「……うん」
「俺のこと信じて。絶対優也さんを一人にさせない」
「うん」
ニューヨークへは、ホテルの仕事で急な出張だ。それは分かっているのに何故だろう……何かが不安だった。Kaiくんと付き合いだして、初めて離れるせいだろうか。一体何だろう。このモヤモヤとした気持ち。
Kaiくんは、どこか急いているような気がした。そんな素振りに、まだ僕に話してくれていない何かがあるような不安が沸いて来る。そっと不安げに見上げると、Kaiくんがふっと微笑みながら、今度は僕の前髪を掻き分けて額にキスをしてくれた。
「大丈夫。優也さんには俺がいる。離れていても心は近いはずだ」
触れてくれた場所から、優しい気持ち……おおらかな感情がゆったりと染み込んでくるようだ。
「じゃあ行くよ。優也さん仕事無理しないで、何かあったら携帯に連絡して。いや何もなくてもメールくらいして欲しいな」
「うん、分かった」
まったくこれじゃ、どちらが年上だか分からなくなるな。
Kaiくんの背中が見えなくなるまで、窓から見送った。
何度も振り返りながら明るい笑顔で大きく手を振ってくれるKaiくん。本当に君は優しくて温かい人だね。角を曲がり姿が見えなくなると、急に酷く心細い気持ちになってしまった。
出張の朝わざわざ僕の家に立ち寄ってくれたのに、結局キスどまりだったな。Kaiくんと付き合って数か月経ったが、キスから先には進んでいない。
翔に抱かれ続け男に慣れ切った躰をKaiくんに知られたくなかったから、ほっとしていたはずなのに、僕の心って奴は本当にふしだらだ。
Kaiくんにキスされる度、腰を抱かれる度にもっと続きを……そう強請るように沸き起こる感情を持て余しているのだから。こんなあさましい感情、Kaiくんが知ったら幻滅するだろうか。
もうとっくに見えなくなってしまったのに恋人の背中が名残惜しく、いつまでも窓の外を見ることをやめられなかった。
「うん……いってらっしゃい」
「そんな寂しそうな顔しないで、あーもう一緒に連れて行きたくなるだろ」
溜息交じりに呟くKaiくんに、玄関先できゅっと抱きしめられた。
「あっ……」
僕よりずっと背が高いKaiくんに腰を持ちあげられるように抱かれると、いつもつま先立ちになるので、足が宙に浮いてしまいそうになる。地に足が着いていないと、どこか不安な気持ちになってしまう。
離れ難いな。
もっとくっつきたくて、僕の方も少し背伸びをしてKaiくんの広い肩に手を回した。するとKaiくんも僕の気持ちを汲んでくれたのか、顎を掴んでキスを落としてくれた。
目を閉じて、僕はそれを受け入れる。
重なる唇が、そっとなぞるように僕の口を吸っていく。
あぁKaiくんとのキスは温かい。
もっと欲しくて温もりが欲しくて、半開きになっていく唇はひどく欲張りだ。そのまま舌を絡め合うキスをする。
「甘いな、優也さんのここ。たまらないよ」
Kaiくんの指が、そっと僕の唇の上に触れた。
「ん……Kaiくん、気を付けて」
「大丈夫。ちゃんと帰って来るから」
「……うん」
「俺のこと信じて。絶対優也さんを一人にさせない」
「うん」
ニューヨークへは、ホテルの仕事で急な出張だ。それは分かっているのに何故だろう……何かが不安だった。Kaiくんと付き合いだして、初めて離れるせいだろうか。一体何だろう。このモヤモヤとした気持ち。
Kaiくんは、どこか急いているような気がした。そんな素振りに、まだ僕に話してくれていない何かがあるような不安が沸いて来る。そっと不安げに見上げると、Kaiくんがふっと微笑みながら、今度は僕の前髪を掻き分けて額にキスをしてくれた。
「大丈夫。優也さんには俺がいる。離れていても心は近いはずだ」
触れてくれた場所から、優しい気持ち……おおらかな感情がゆったりと染み込んでくるようだ。
「じゃあ行くよ。優也さん仕事無理しないで、何かあったら携帯に連絡して。いや何もなくてもメールくらいして欲しいな」
「うん、分かった」
まったくこれじゃ、どちらが年上だか分からなくなるな。
Kaiくんの背中が見えなくなるまで、窓から見送った。
何度も振り返りながら明るい笑顔で大きく手を振ってくれるKaiくん。本当に君は優しくて温かい人だね。角を曲がり姿が見えなくなると、急に酷く心細い気持ちになってしまった。
出張の朝わざわざ僕の家に立ち寄ってくれたのに、結局キスどまりだったな。Kaiくんと付き合って数か月経ったが、キスから先には進んでいない。
翔に抱かれ続け男に慣れ切った躰をKaiくんに知られたくなかったから、ほっとしていたはずなのに、僕の心って奴は本当にふしだらだ。
Kaiくんにキスされる度、腰を抱かれる度にもっと続きを……そう強請るように沸き起こる感情を持て余しているのだから。こんなあさましい感情、Kaiくんが知ったら幻滅するだろうか。
もうとっくに見えなくなってしまったのに恋人の背中が名残惜しく、いつまでも窓の外を見ることをやめられなかった。
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