深海 shinkai(改訂版)

志生帆 海

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その後の章

その後の二人 『僕の覚悟、君の想い』5

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 Kaiくんへは自分から口づけをした。
 そのことに彼は少し驚いたように彼は目を見開いた。

「優也さん、珍しいな。なんだか今日はすごく積極的だ」
「僕だって、男だ。僕だって君を欲しくなる」
「ふっいいの?そんなに煽って、俺だって男だよ。いつまでも『待て』は出来ない」

 僕から少し身を離して、Kaiくんは客間の壁をコンコンと叩いて何かを確認している。

「うん。この部屋の壁はしっかりしているな。これなら多少騒いでも大丈夫そうだ」
「え……なんで?」
「今から優也さんを抱くよ」
「え……あっ」

 そのまま、ベッドにドスンっと押し倒され、あっという間に立場が逆転してしまう。

「待って!下には両親もいるし……今日は……無理だっ」
「駄目だ。俺我慢できないから」

 狡い……僕だって、君を欲しくて堪らないのを知っているくせに。

「わかった。うん……いいよ……僕も欲しい。Kaiくんの勇気と元気が欲しい」

 明日から忙しくなるだろう。さっき両親と姉に話した韓国でのホテル経営の話を、会社の重役達にも認めてもらわないといけないのだから。

「いいよ優也さんにあげる。優也さんが韓国に無事来られるように全力で応援する」

 そこからはもう、口づけだけで会話した。
 僕からもKaiくんからも、双方で存分に求め合った。
 会えなかった分、寂しかった分、これから頑張る分、沢山欲しかった。

 僕はもう受け身なだけじゃない。気が付けばお互い衣類を脱ぎ捨てて、裸体になって躰を絡め合っていた。

 お互いの躰を手で舌で存分に愛撫しあい、高め合う。こんな積極的なSEXは初めてかと思うほど、僕は求めていた。

 腰を深く抱かれ脚を大きく開かれた上で、ぐぐっと圧力をかけるようにKaiくんの逞しいものが僕の中へと挿入されていく。

 仰向けになって見上げるKaiくんの精悍な躰は、本当にいつ見ても惚れ惚れする。うっすら汗ばんだ肌がしっとりと心地良くて、僕は彼の広い背に手をまわした。

 そこからグイグイと掴まっていないと振り落とされそうな程、揺さぶられていく。内壁を擦る質量が、僕を震わせ淫らにさせていく。

「うっ……くっ」
「苦しい?」
「大丈夫……だ」

 君のこと……何もかも受け止めよう。
 僕はもう深海に沈みこまない。

 二度とそうならないために、今後どうやって生きていけばいいか。
 君が手をとって引き上げてくれたあの日から、ずっと考えていた。

 二人の未来……どうすべきか。
 どうなるのが最上なのか。

 ソウルと日本とで離れて暮らした数ヶ月で、結論は出た。

 僕は君と肩を並べて歩きたい。
 僕だけの人生じゃない。
 離れて過ごすことよりも、君のすぐ横にいることを選びたい。

 そう思ったから…君のもとへ僕が行く。

 僕の意思で行く。
 僕は君を愛したい。

 君を……

 Kaiくん…いや…Kaiを。

「愛してる……Kai」

 絶頂の余韻の最中、僕を労わるように抱きしめる君の胸の中で、自然に、とても自然にそう口に出すことができた。

「え……優也さん今なんて?」

 Kaiは目を見開いて、あからさまに驚いていた。

「これからは、そう呼ばせてくれないか」
「うそだろ。本当に?凄く嬉しいよ。ずっとそう呼んで欲しかったから」
「その代わりKaiも僕のことを、優也と呼んでくれ」
「当たり前だよ。優也……ゆうや!あぁもう最高だ!幸せだ!」

 何度も何度も呼ばれた。
 優也と名前を呼ばれながら、何度も静かな絶頂を迎えた。

 僕達はもう……救ってあげた人でも、救われた人でもない。

 対等だ。
 対等なんだ。

 お互いの名前を、この先もこうやって呼び合っていこう。

 本当に人生は、何もかも挑戦だ。
 新しい一日は、新たに挑戦できるチャンスだと思えるようになった。

 僕は生まれ変わる。
 Kaiと共に生きていく。

 深海から抜け出た先には、明るい希望が満ちていた。

 どう生きるかは、僕次第だ。
 過去の別れも過ちも昇華して
 進む道はただひとつ。

 shin–kai

 君のすぐ横に並ぶこと。


『深海』完結







……

長い間読んでくださってありがとうございます。
これにて『深海』はちょうど100話で完結です!

ソウルでの二人の生活。

対等になれた分、小さな喧嘩もしたり、笑いあったり
一緒に泣いて喜んで、いつまでも仲良く生きていくことでしょう。

苦難の人生でも再起のチャンスってあると思います。
生き方は自分自身で決めるものですものね。

この二人は『重なる月』の方で今後もたまに登場します。

また他の作品でもお会いできたら嬉しいです。
よろしければこの作品に対する感想お待ちしています。
次回作への意欲につながります(〃▽〃)


追伸……あと8話ほど幸せな後日談があります。それも掲載していきます。完結マークはその後に載せますね。

志生帆 海より
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