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色は匂へど……
色は匂へど 8
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前置き
今日のシーンは『重なる月』雨の悪戯11と12を一緒に読まれると流の心の動きが見えるしかけです。
****
あの晩、僕が取った行動はあまりに衝動的であまりに大胆だった。
嵐に勇気づけられたのか、一緒に風呂に入ろうとしたり、自分の部屋を丈と洋くんに明け渡し、流の部屋で流の布団で共に眠ってしまった。
どうにかして流との距離を縮めたかったんだ。
丈と洋くんの仲睦まじい様子を日々目の当たりにし、我慢しきれなくなったのか。仏に仕える身、ずっと自分を律して生きてきたのに、流が関わると、僕の感情は嵐のように揺れ動いてしまうよ。
あの晩……
流の布団に入り、逞しい身体に寄り添うように眠った。
途中で我に返り無性に恥ずかしくなって、布団から抜け出ようとすると、流が肩を抱くように引き留めてくれた。
「なぁ……流、狭くないか。布団……悪かったな」
「狭くなんかないですよ。兄さんは喉が弱いのだから、ほら、肌掛けはしっかり被ってくださいよ」
まるで僕たち、兄弟ではないようだ。「兄さん」呼ばれているのに「翠」と呼ばれているようで目眩がした。
「……流、お前は」
「なんです?」
暗闇で至近距離で、流と目があった。
今、僕たちは息遣いが届くほど傍にいる。
このまま流の匂いに溶け込んでしまいたい。
僕は流を愛している。
長い長い遠回りをして、ようやく気付いけたことだ。
じっと流を見つめると、視線をサッと逸らされてしまった。
そこで我に返った。
もしかして……こんな言葉は、流を苦しめるだけなのか。
あぁ、流の心が見えたらいいのに。僕に兄以上の感情を抱いてくれていると感じるのは、僕の勝手な妄想なのか。
その場で面と向かって「愛している」など言えるはずもなく、またいつものように言葉を濁してしまった。
「僕は流にこうされるのが……好きだよ。流がいれば安心できる」
「好き」という言葉では足りない程の愛を育ててきたくせに。
翠……いつまでもこのままでいいのか。
僕たちはもういい年齢だ。
このまま、この人生を終わりにしていいのか。
この世の果てまで平行線で、一線を越えないでいいのか。
繰り返す波のように、何度も自問自答しながら深い眠りに落ちた。
その晩、僕が見た夢はとても人には言えない内容だった。
屋根を打ち続ける激しい雨の中、僕はいつの間にか一糸纏わぬ姿になっていた。
流は息遣いが届くほど近くにいてくれる。
満ち足りた気持ちで身体の力を抜くと、逞しい腕が僕を引き寄せてくれた。
僕はまどろんでいるようで、身体に力が入らなかった。
逞しい腕は、僕が眠りから覚めないようにと慎重にそっと抱きしめてきた。
待て……夢の中でも遠慮するのか。
僕の心は既に整っているのに……あの山を越える覚悟だって出来ている。
一緒に旅立ってみないか。
空高く舞い上がり、一つになってしまいたい。
僕の心はそれを望んでいる。
だから僕の方から逞しい身体を強く抱き寄せた。
「一線を越えよう」
そう望んでいると伝えたくて――
僕の夢は……まるで雨の悪戯のようだった。
朝起きると流はもう隣にはおらず、僕はきちんと浴衣を身に着け布団をすっぽり被って眠っていた。
だが僕の記憶は鮮明だった。
あの夢を辿ろう。
そんな強い気持ちが芽生えた朝だった。
今日のシーンは『重なる月』雨の悪戯11と12を一緒に読まれると流の心の動きが見えるしかけです。
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あの晩、僕が取った行動はあまりに衝動的であまりに大胆だった。
嵐に勇気づけられたのか、一緒に風呂に入ろうとしたり、自分の部屋を丈と洋くんに明け渡し、流の部屋で流の布団で共に眠ってしまった。
どうにかして流との距離を縮めたかったんだ。
丈と洋くんの仲睦まじい様子を日々目の当たりにし、我慢しきれなくなったのか。仏に仕える身、ずっと自分を律して生きてきたのに、流が関わると、僕の感情は嵐のように揺れ動いてしまうよ。
あの晩……
流の布団に入り、逞しい身体に寄り添うように眠った。
途中で我に返り無性に恥ずかしくなって、布団から抜け出ようとすると、流が肩を抱くように引き留めてくれた。
「なぁ……流、狭くないか。布団……悪かったな」
「狭くなんかないですよ。兄さんは喉が弱いのだから、ほら、肌掛けはしっかり被ってくださいよ」
まるで僕たち、兄弟ではないようだ。「兄さん」呼ばれているのに「翠」と呼ばれているようで目眩がした。
「……流、お前は」
「なんです?」
暗闇で至近距離で、流と目があった。
今、僕たちは息遣いが届くほど傍にいる。
このまま流の匂いに溶け込んでしまいたい。
僕は流を愛している。
長い長い遠回りをして、ようやく気付いけたことだ。
じっと流を見つめると、視線をサッと逸らされてしまった。
そこで我に返った。
もしかして……こんな言葉は、流を苦しめるだけなのか。
あぁ、流の心が見えたらいいのに。僕に兄以上の感情を抱いてくれていると感じるのは、僕の勝手な妄想なのか。
その場で面と向かって「愛している」など言えるはずもなく、またいつものように言葉を濁してしまった。
「僕は流にこうされるのが……好きだよ。流がいれば安心できる」
「好き」という言葉では足りない程の愛を育ててきたくせに。
翠……いつまでもこのままでいいのか。
僕たちはもういい年齢だ。
このまま、この人生を終わりにしていいのか。
この世の果てまで平行線で、一線を越えないでいいのか。
繰り返す波のように、何度も自問自答しながら深い眠りに落ちた。
その晩、僕が見た夢はとても人には言えない内容だった。
屋根を打ち続ける激しい雨の中、僕はいつの間にか一糸纏わぬ姿になっていた。
流は息遣いが届くほど近くにいてくれる。
満ち足りた気持ちで身体の力を抜くと、逞しい腕が僕を引き寄せてくれた。
僕はまどろんでいるようで、身体に力が入らなかった。
逞しい腕は、僕が眠りから覚めないようにと慎重にそっと抱きしめてきた。
待て……夢の中でも遠慮するのか。
僕の心は既に整っているのに……あの山を越える覚悟だって出来ている。
一緒に旅立ってみないか。
空高く舞い上がり、一つになってしまいたい。
僕の心はそれを望んでいる。
だから僕の方から逞しい身体を強く抱き寄せた。
「一線を越えよう」
そう望んでいると伝えたくて――
僕の夢は……まるで雨の悪戯のようだった。
朝起きると流はもう隣にはおらず、僕はきちんと浴衣を身に着け布団をすっぽり被って眠っていた。
だが僕の記憶は鮮明だった。
あの夢を辿ろう。
そんな強い気持ちが芽生えた朝だった。
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