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第1章
春の虹 ~接吻~
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少しの時が経った。
冬の冷たい空気は去り、春の暖かい空気が私たちの周りに流れ出した。張り詰めていた時は緩やかに穏やかに進みだしていた。
あれからヨウとは、私の私邸でお互いの時が合う時に歩み寄り、王宮で顔を合わせれば、そっと誰にも分らぬよう約束をする仲になっていた。
「ヨウ、今宵も屋敷に来るか」
「ジョウ、ありがとう。行かせてもらうよ」
心と身体に傷を深く負っているヨウを、私は癒してあげたかった。
ヨウは私の元では失われた時間を取り戻すか如く、まだ幼さが残る少年のように振舞っていた。たわいもない話をして微笑み合い、時には互いに異国の本を読み漁り、没頭して時間を忘れてしまうこともあった。
今日もそんなヨウの傍に座り横から本を覗きこむと、驚いたことにヨウの方から口づけをしてくれた。ヨウの手はまだ冷たかったが、唇はとても暖かく心地良いものだった。
クチュ……クチュ……
「んっ……」
いつも帰り際にそっと私からする口付けとは違い、ヨウからの口づけには熱い想いが込められていて、動揺した。
「ヨウ……?」
まだ早い。私はまずヨウの心を治してあげたい。身体の傷は心が癒えてからの方が良いだろう。私は早まる気持ちをぐっと我慢しヨウの肩にそっと手を置いて、求めあっていた唇を離した。
「まだ無理するな」
****
「ジョウ、今の俺にとってお前と共に過ごす時が心地良い。王の近衛隊長として任務をこなす時の緊張感や疲労がすべて癒されていくようだ」
「そうか。それならば嬉しいよ。近頃のお前は前より幼く感じることが多いよ。無邪気に笑うようになったしな」
「そうかな、それは……十六歳で父を失ってから一気に駆け上った俺の人生を巻き戻しているかのように、お前の前では何も起こる前の無邪気な俺に戻れるからかもしれない」
「今度の王とは……その……何もないのか?」
ジョウの心配が身に染みた。やはり気にしていたのだな。
「あぁ幸い今度の新しい王はまだ十二歳と、とても幼くて可愛らしいお方だ。今度は大丈夫だ。あのようなことには決してならない。王はまるで俺のことを兄のように無邪気に慕ってくれている。俺も近衛隊長としてしかとお守りしたいと心から想っているから……安心しろ」
「そうか。それなら安心だ」
「今、俺はとても心が落ち着いているよ。ジョウ……お前が俺の心を守ってくれているのが感じ取れるからだよ」
「近頃……夢は見るか?うなされていただろう、前はよく」
「いや、そういえば見なくなった。お前と共にこうやって過ごすうちに自然とあの悪夢から解放されたようだ」
ジョウとはこんな風になんでも話し合った。
ジョウは俺の身体の傷よりも、まず心の傷を治したいと切に願い、このような安らぎの場所と時間を与えてくれたのだ。
だが……いつもお前は帰り際に控えめにそっと口付けをしてくれるが、最近それでは物足りない。もっともっと熱くお前と口づけを交わしてみたいという想いが俺の中から湧き上がってくる。
俺はジョウのことが愛おしい。
君の心の治療の効果はあったようだ。俺の方からこんなにもお前が欲しくなるなんて。だから今日は思い切って、俺の方から口付けをしてしまった。
お前との口づけは甘く離れがたく思わず夢中になって求めてしまい、やがて下半身が疼くのを感じた。もうこのまま先へ進んでもいいと思った瞬間に、お前は口づけを途中でとめた。
何故だ?
お前は三年も前王と関係を持った俺のことを、心の奥底では……やはり汚れていると思っているのか。確かに無理矢理から始まった関係だったが、三年だ、三年もの間、関係を持てば……身体は嫌でも反応してしまうものだ。
飼いならされた俺の身体は、今すぐにでもお前を求めている。
お前に嫌われたくない。知られたくない。
だから俺からはこれ以上求められない。
今宵もひとり疼く夜を過ごさねばならないのか。
お前が俺を抱いてくれる日がいつかは来るのだろうか。
それは夢のまた夢だ……今はまだ。
冬の冷たい空気は去り、春の暖かい空気が私たちの周りに流れ出した。張り詰めていた時は緩やかに穏やかに進みだしていた。
あれからヨウとは、私の私邸でお互いの時が合う時に歩み寄り、王宮で顔を合わせれば、そっと誰にも分らぬよう約束をする仲になっていた。
「ヨウ、今宵も屋敷に来るか」
「ジョウ、ありがとう。行かせてもらうよ」
心と身体に傷を深く負っているヨウを、私は癒してあげたかった。
ヨウは私の元では失われた時間を取り戻すか如く、まだ幼さが残る少年のように振舞っていた。たわいもない話をして微笑み合い、時には互いに異国の本を読み漁り、没頭して時間を忘れてしまうこともあった。
今日もそんなヨウの傍に座り横から本を覗きこむと、驚いたことにヨウの方から口づけをしてくれた。ヨウの手はまだ冷たかったが、唇はとても暖かく心地良いものだった。
クチュ……クチュ……
「んっ……」
いつも帰り際にそっと私からする口付けとは違い、ヨウからの口づけには熱い想いが込められていて、動揺した。
「ヨウ……?」
まだ早い。私はまずヨウの心を治してあげたい。身体の傷は心が癒えてからの方が良いだろう。私は早まる気持ちをぐっと我慢しヨウの肩にそっと手を置いて、求めあっていた唇を離した。
「まだ無理するな」
****
「ジョウ、今の俺にとってお前と共に過ごす時が心地良い。王の近衛隊長として任務をこなす時の緊張感や疲労がすべて癒されていくようだ」
「そうか。それならば嬉しいよ。近頃のお前は前より幼く感じることが多いよ。無邪気に笑うようになったしな」
「そうかな、それは……十六歳で父を失ってから一気に駆け上った俺の人生を巻き戻しているかのように、お前の前では何も起こる前の無邪気な俺に戻れるからかもしれない」
「今度の王とは……その……何もないのか?」
ジョウの心配が身に染みた。やはり気にしていたのだな。
「あぁ幸い今度の新しい王はまだ十二歳と、とても幼くて可愛らしいお方だ。今度は大丈夫だ。あのようなことには決してならない。王はまるで俺のことを兄のように無邪気に慕ってくれている。俺も近衛隊長としてしかとお守りしたいと心から想っているから……安心しろ」
「そうか。それなら安心だ」
「今、俺はとても心が落ち着いているよ。ジョウ……お前が俺の心を守ってくれているのが感じ取れるからだよ」
「近頃……夢は見るか?うなされていただろう、前はよく」
「いや、そういえば見なくなった。お前と共にこうやって過ごすうちに自然とあの悪夢から解放されたようだ」
ジョウとはこんな風になんでも話し合った。
ジョウは俺の身体の傷よりも、まず心の傷を治したいと切に願い、このような安らぎの場所と時間を与えてくれたのだ。
だが……いつもお前は帰り際に控えめにそっと口付けをしてくれるが、最近それでは物足りない。もっともっと熱くお前と口づけを交わしてみたいという想いが俺の中から湧き上がってくる。
俺はジョウのことが愛おしい。
君の心の治療の効果はあったようだ。俺の方からこんなにもお前が欲しくなるなんて。だから今日は思い切って、俺の方から口付けをしてしまった。
お前との口づけは甘く離れがたく思わず夢中になって求めてしまい、やがて下半身が疼くのを感じた。もうこのまま先へ進んでもいいと思った瞬間に、お前は口づけを途中でとめた。
何故だ?
お前は三年も前王と関係を持った俺のことを、心の奥底では……やはり汚れていると思っているのか。確かに無理矢理から始まった関係だったが、三年だ、三年もの間、関係を持てば……身体は嫌でも反応してしまうものだ。
飼いならされた俺の身体は、今すぐにでもお前を求めている。
お前に嫌われたくない。知られたくない。
だから俺からはこれ以上求められない。
今宵もひとり疼く夜を過ごさねばならないのか。
お前が俺を抱いてくれる日がいつかは来るのだろうか。
それは夢のまた夢だ……今はまだ。
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