魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから

恋月 みりん

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39章〜40章

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39.章 リヴァイヤサン─神龍しんりゅう




魔導士はすでに、詠唱をはじめている。



蒼古そうこなる神龍よ


光を天にかえし、形なす静寂をあらわ


大気に潜む無尽むじん湧水ゆうすい


清廉せいれんたる波濤はとうとなりて


千年の戦果となし、


咎人とがびと清浄せいじょうな、渦に飲み込め」



雷雲らいうんが立ち込め、いかずちをはらんだ黒煙が船体の周りを取り囲んだ。



「召喚獣 リヴァイアサン」



激しいいかずちが発光し、あたりを明るく照らす。


雷雲らいうんをまとった、リヴァイアサン─神龍が荒れた海原うなばらの空に、出現していた。


その、巨大な神龍は、こちらを認めると、


船べりの欄干らんかんを破壊しながら、船へ飛び込んでくる。


「きゃっ!」


船は大きくかたむき、カリナは滑り落ちないよう懸命に、手すりしがみつく。


神龍は水柱を、まき上げながら、魔力をめている。


{ タイダルウェイブ     }


ためていた膨大な水がうずをまき、水柱は合わさっていく。

それが巨大な壁になって立ち上がり、津波となって一気に船へと襲いかかった。

大波は容赦なく船内に侵入する。

船は木の葉のように水に巻かれ、大きく上下した。

船上にいる、死霊たちも波に飲み込まれ次々に、海に落ちた。


カリナはククルを助けようと、必死に手を伸ばした。


「ククル…!」

暴れるククルを捕まえると、なんとか欄干らんかんに掴まらせる。そこで、カリナの手が海水で滑ってしまった。


「きゃっ…!!」


カリナが船の欄干らんかんから滑り落ちる。


それを、さっと魔王がカリナの腕をつかみ、抱き上げた。


「…無事か?」


魔王は、カリナを引き上げると、少しホッとしたようだ。


「は…い…」


自分が落ちたかもしれない、暗い水面をみて、カリナはゾッとしている。



『このままでは、船は長くもたない。海洋に投げ出されれば、我はともかく、カリナが危ない…』


魔王はそう思案する。


その様子に、魔導士は高笑いをしている。


「ははっ…どうしました?カリナに、情でもわきましたか。」


魔王は魔導士を睨んだ。


魔導士カシウスは、心底楽しそうに嘲笑ちょうしょうする。


「もたもたしていると、船は海の藻屑もくずとなって、カリナも、残りの乗員も、みんな死んでしまいますよ。」



魔王は嫌がる、カリナを安全な船室に押し込める。


「魔王様…待って、わたし…!」


バタンと扉は閉じられた。


魔王は大きく、身をそらせて、一気に魔力を解放すると、漆黒の波動はどうをまとい、


目が眩むような、まばゆい黒炎を発する。


閃光せんこう(せんこう)がおさまると、魔王は、巨大な黒竜闇ドラゴンに変身した。




40.章 変身



魔王は黒炎をまとう、巨大な黒竜闇ドラゴンに身を変えた。


雷雲らいうん吹き荒び、高波が突き上げる、海洋の真ん中に、リヴァイアサンと闇ドラゴンが出現する。


神龍は雷雲をまといながら、こちらをうかがっている。


たける黒竜は、リヴァイアサンにむかい、咆哮ほうこうした。


神龍は、黒竜の明らかな殺意を認めると、


身をひるがえして、マストを破壊しながら黒竜に飛びかかる。


リヴァイアサンの勢いと、大口おおぐちに噛みつかれ、闇ドラゴンは、船から暗い海溝かいこうの底に、引きずり込まれてしまった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

あとがき


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!!」


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