ColorcrustProject「いるはずのいない君に色のない花束を」

秋乃空銀杏

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六章「もしもまだ夢の続きを見られるなら、これからもきっと」

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♦柊諷♦
夏休み前だというのに、憂鬱だ。
俺の日常に何が起きているのだろうか?
そんな事ばかり考えている。
夢か現実か分からない。
最初に未来の夢を見た時は、ただ楽しんでやろうとも、退屈だった日常のスパイスにしては丁度いいものだった。
2回目に未来の夢を見た時は、俺はまたここに来たのか、少しワクワクした気持ちを心に秘めていた。
だけど、夢か現実か分からないあの世界で、変わってしまった世界を知ってしまった。
あいつらと約束したあの日、俺は未来なんてどうなるか分からない、だけどこれからも一緒に。
天坂の夢を叶えてやろうと。
俺はそう思った。
思っていた筈だった。
本当に、俺がタイムリープしたのなら俺はこいつらとの夢を先に、未来を先に見たという事になる。
夢であって欲しい。
だけど、その夢はすぐに終わってしまう。
その世界で俺は天坂と司に会った。
俺が創りあげた空想の世界だとしても、俺は2人に会ったのだ。
いや、本当に会ったのだろうか?
俺は、天坂朱里のことを、あいつの顔とは思えない、空をそのまま映したようなオレンジ色に染まっていた酷く寂し気な顔を、思い出す。
俺が創りあげた幻でも、何か意味があって創り出してくれた幻なのだろう。俺は、そう信じる事に決めた。
朝、俺はこんなような事をボーッと考えていた。
いつもの時間帯よりより早く学校へ行く準備をして出てきてしまった。
夏だというのに、風が少し肌寒く感じる。
薄い霧が、ドラマの演出のような地面からでているかのように俺の足元を薄めていた。
俺だけが、この世界に取り残されているかのように。
人気すら殆どなく、住宅街の建物がズラっと並んでいた。
少し、早く出すぎてしまったようだ。
と、俺は急に思い出したかのように、ボーッとしている意識が自我を取り戻すかのように、俺は目を覚ました。
いつも朝早く学校の図書室で本を読むのに学校に行くのにいつも意識していることを今思い出してしまった。
皮肉にも、笑ってしまった。
公園に寄って、少し本を読んでから学校に行くか。
どんな世界に俺が居たって、あいつらと一緒なら、俺が居る意味を教えてくれるのだろう。 
きっと、これからも。
♦横木千咲♦
私はいつもの時間帯に朱里と話しながら学校に向かっていた。
七月の中旬なのに、既に真夏の様に暑かった。
外は日差しが強く、生徒達もブレザーを脱いで夏服の袖をまくって登校していた。
玄関は既に賑わっていて、皆、今日はこれから始まるのだと思わせるように元気よく挨拶を交わしている人達も多かったのだが、同時に「今日あっついねー」を挨拶代わりに使っている人も同じくらい多かった。
夏休み、何しよう。
ふとそう考える。
上靴を履き朱里と教室に向かった。
朱里や司と柊君とかとも会って一緒に遊びたいな、
なんて浮かれていた。
「なつやすみ、どうする?」
隣から私の顔を見上げるかのように私の背丈よりふた周りくらい朱里が、顔を近ずけて来た。
可愛い。
女子の私でも朱里の整った顔にはときめいてしまうくらい可愛いかった。
天然なのも可愛いけど天然過ぎるのがなー、なんて思う。
「そーだねー、どっか行きたいねー。朱里はどこに行きたい?」
私は夏休みが始まるというワクワクを朱里と共有できる喜びから電話をとった時のお母さんばりに声を高くして目を見開いて朱里に迫った。
「私?私ねー、九尾祭り行きたい!」
朱里も同じ位のテンションでわざわざわ足を止めて私にそう言った。
町最大のイベント、九尾祭り。
「やっぱそこ外せないよねー、柊君と司誘ってみよっか」
私は笑顔で朱里にそう言った。
私達はそのまま、九尾祭りについて思うことを色々話しながら教室のドアを開けた。
すると突然、朱里が話をやめた。
私がどうしたのだろう?と朱里の顔をみて、何かをみて止まっていたから、私もその朱里の視線の先に目をやった。
いつものように賑やかなクラスメイト達の中で一人、違う世界の住人のような雰囲気を纏っている人が居た。
その場所だけが静かに見えるかのように、彼は本を読んでいた。
本を読んでいるだけでここまで絵になる人物なんて、他に居ないだろう。
恋愛感情が特にない私からしても、一瞬魅入ってしまった。
またちらっと朱里の顔をみると、その頬は少し朱く染まっていた。
朱里は本当にいつも、どう考えてるかわかりやすい。いつも真っ直ぐで、決して間違えない。
きっと、これからも。
♦坂上司♦
この学校の夏休みは長い。
7月22日から、10月の中旬まである。
その間コースによって、オープンキャンパス等色々あるのだが、俺達のコースは最初の方に少しあるくらいで特にないから、後半に部活やら遊びやら勉強にやらに専念できるのだ。
部活…か、俺はバスケ部に所属していてレギュラーメンバーなのだが、夏休み中に大会らしい大規模な大会は特にない。
暇になるなー。
夏休みは、何して過ごそうか。
勿論あいつらとはたまに遊ぶんだろうが、何かが足りない気がするのだ。
なんだろう。
忙しくなるきっかけ?のようなものが欲しい。
昔からじっとしている事が嫌いな俺には、この答えを探すのは斬新で色々考えてしまう。
旅行…、海、西瓜、焼肉、色々夏っぽい事を考えたが、やっぱり何かが違う。
肝試し…お化け…。
バスケ部忙しいだろうか?
途中、要らない事まで考えてしまう。
あれ?あ!部活だ!
部活を作ろう!
バスケ部の夏休みはそれほど忙しくないし、俺達で何か部活を作ればいいんだ!
そう思ったら、行動は早かった。
「そらー!部活つくろーぜー!」
昼休み、昼食を既に終えていた諷にうざ絡みするように机の前に行ってこの言葉を流れるように放った。
「部活って…なんの?」
そらが不機嫌そうにそう言う。
「わからん」
俺はありのままの思った感想を諷に言った。
「お前……マジで言ってんの…」
「最高だろ!楽しそうだろ!」
俺が騒いでいるのを察知したのか、天坂と千咲が寄ってきた。
「司の案にしてはいいじゃん!何部作んの!?」
「まだ決めてない!だけど部活作ろーぜ!」
千咲と俺は意気投合するかのようにノリノリで話した。
「オカルト部とかどう?心霊スポット巡りみたいなのとか?」
「おぉ、いいなそれ!夏っぽいし!」
「なぁ、お前らもやるだろ?」
天坂と諷はただ固まっていた。
「よーし!決定!」
と、
俺はその場のノリとテンションで勝手に決めた。
長い長い夏休みが始まる。
俺はこいつらと過ごしていくのだろう。夢を叶えるまで、そして、夢を叶えた後も。
これからも、きっと。
♦天坂朱里♦
私に夢の続きをみる資格がないことなんて分かってる。仕方ないから。「役割」は誰にでもあって、
順番は誰にでも回ってくる。
私の役割はあそこで終わり、あの場所で終わり。
もう順番も回ってこない。
幸せになる順番なんて、回ってこない。
そう考えると、何だか胸が痛くなる。
ごめん。
この三文字を皆に伝えたい。
私にはやらないといけない「役割」がまだ残っている。
だから…嘘をついて…ごめん。
夢を見させてあげられなくてごめん。
約束、守れなくてごめん。
直接、謝れなくてごめん。
謝る資格も私にはきっとないのだろう。
自分にしか残らない自分のページを、自分が見返すきっかけもないけれど、その時最後に楽しめたなって思える事ができる、たんなる自分のわがままだ。
最低で、最悪かも知れない。
あと……もう少しで。
私の「順番」が来る。
もしもこんな事を考えなくてよくて、皆の事だけを考えていいのなら、夢の続きを見させてあげられるのなら。
その時は、きっと。
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