15 / 43
第2章
第15話 怒りたいわけじゃないのに
第二調査局――そのロビーは、音がよく響いた。
誰かの足音、誰かの溜息、軽く咳払いするだけで、その広い空間に遠慮は無しと駆け回る。
光をよく通す高窓が清潔感を、しっかりとした石造りの床が冷たさを、控えめな装飾は武骨さを表していた。
隅に置かれたただ一鉢の観葉植物だけが、春の陽気と、そして人が存在する空間だという事実を漂わせていた。
受付には角ばった眼鏡をかけたどこか老けた男。
仏頂面を張り付けたような顔は、初老にも見えるし若輩に見えなくもない。
その前で声を荒げるのは、少々ふくよかな若い娘。
ケープのリボンを胸に携え、桜の花びらを模した髪留めが、ストロベリーブラウンの髪に良く似合う。
ハルネ・サフランだった。
男は諦め半分、苛立ち半分の様子であしらってはいるものの、ハルネは一歩も引く様子はない。
そして何度目かの言葉の応酬が、今また始まろうとしていた。
―――――――
ギルドで調査局の場所を聞いたあたしは、迷わず第二調査局の建物へと向かった。
人の出入りが激しそうな第一調査局と違い、どこか静かな雰囲気漂う第二調査局は、少しだけ入るのを躊躇させた。
ええい、ここまで来たんだから腹を決めろと扉をくぐる。
受付で面会の旨を伝え、面会書類を渡した所で押し問答が始まり……今に至る。
「だからぁ……アポは無いんだろ? 副局長は忙しいんだ。帰った帰った」
「だからちゃんと面会の書類も書いたでしょ! 会わせなさいよ!」
「相手がゼオファルド卿だと知ってたら、書類なんぞ書かせなかったよ。 ほら、帰れ」
くそー……相手にするのも面倒だって感じの感情色してくれちゃって……
何か無いかな、手札……
生活が……お店がかかってるんだから!
あたしだっておいそれと引くわけには行かないのよ!
「そうだ、事情聴取! 昨日、ヴァルグレイのオジさまが、あたしの店に来たの聞いてない? その時の事件で言うのを忘れてた事があったの! 本人に伝えたいの!」
もちろんブラフだ。
とにかく会いさえすれば……
「事件ん~?? ……面会書類の署名は『ハルネ・サフラン』……そういえば……いや、やっぱり知らん! そのうちそっちに捜査員が行くだろう、そいつらに聞け! 俺の手を煩わせるな!」
ムカっ!
こいつ今……――閃きの白い感情色を出したクセに……知らないフリしたな!
こいつじゃダメだ。 話にならない。
どうしよう……どうしよう!
このままじゃお店が……サフラン香房が……
うううぅ……
「おっ! ハル姐さんじゃないッスか! 探しやしたよ!」
押し問答で気付かなかった。
いつの間にか、入り口からブルーの制服を着た一人の調査局員が、あたしに話しかけてきていた。
この人はたしか……
「レルガさん!」
そうだっ!!
「レルガさん! あたし、ヴァルグレイさんに話してない事あるの! 話したいの! お願い、取り次いで!」
「え? ええ??」
なんでレルガさんがここにいるのか、あたしを探してたのか分からない。
けど……これを利用するんだ!
「いいよね!?」
「あ、ハイ。 わかったッス……俺もそのつもりだったんでいいっスよ」
やった! 第一関門クリア!!
「そういうワケでこの子は俺が預かるんで。 いいッスよね?」
「レ、レルガ捜査官! は、ハッ! 了解であります!」
―――――――
「実は今朝早く、サフラン香房の方に寄らせてもらったッス。 調べたい事もあるし、掃除も手伝えって命令だったっスからね……」
レルガさんが事の顛末を教えてくれている。
けれど、あたしの耳には全く入ってこない。
オジさま……ヴァルグレイのオジさま……やっと会える。
自然と歩みが速くなる。
会って……会って、話すんだ。
……どうして営業停止なんてひどい事するの?
……あたしの事、ちょっとでも気に入ってくれたんじゃなかったの?
やっぱり気のせいだったの……?
どうやら副局長室は応接室とは違う専用の部屋で、奥まった所にあるようだった。
遠い。 遠い。 早く着け。
早く着いて…………ううん、着かないで……
「掃除は正直面倒ッスけど、噂の美人姉妹と一緒なら逆に役得ッスからね! 張り切って朝早くから向かったんッスけど、どうやらハル姐さんとは、すれ違っちまったみたいで……いやね、俺もおかしいと思うんスよ。 即日急に営業停止だなんて……」
一生懸命レルガさんが話しかけてくれている。
けれど、やっぱりあたしの耳には全く入ってこない。
靴音はどんどん速くなる。
まるで今のあたしの鼓動のように、コツコツ、トクトク、加速を増していく。
どうして裏切ったのさ……
どうしてあたしからお店を取り上げるの……?
ひどいよ……あんまりだよ……
好きになれると思ったのに、理想だったのに、なんでこんなひどい事するの?
あんな気持ち初めてだったのに……通じ合ったって思えたのに!
――そんなものは全部、お前の勘違いだ。
ちがうっ!!!! 勘違いじゃないもん!!
あんなに幸せな気持ちをくれたのに……!
あんなに優しく涙を拭ってくれたのに……!!
「ここッスよ」
いつの間にか、目的の扉に辿り着く。
レルガさんは無遠慮に、そして気軽に扉をノックする。
この扉の向こうにオジさまが………
――コンコン
「レルガっスー。 副局長、入りますよー?」
「――入れ」
扉越しに聞こえたオジさまの声。
……ヒュっと、自分の息を飲む音が聞こえた。
その呼吸を整える間もなく……
扉は開かれた。
―――――――
そこは、一人の私室としては少々広い部屋だった。
落ち着いた色の木目の戸棚には、整然ときっちりと資料が並べられ、床にはチリ一つない様子。
隅に観葉植物が一つ。
ロビーと同じものだろうか?
……普段のハルネなら、もう少し部屋を観察する余裕があっただろう。
しかし今の彼女の瞳は、とある壮年の男に釘付けだった。
奥まった所にある業務用の机に座り、書類を読んでいたばかりと思しきヴァルグレイは、こちらをなんとも思わぬように一瞥しただけで、こう言った。
「……やはり君か」
――ぶわっ!
噴き上がった怒りで背中が総毛立つ。
叫び出したいところを、詰まった喉がそれを許さない。
「何それ……あたしが来るの、知ってたの……?」
押し殺すように声を絞り出す。
「……ここに来ることが無いよう、レルガを寄越したはずだが?」
「へぇ、すいやせん、入れ違いまして……」
そう答えるレルガさんを他所に、オジさまは興味が無いとばかりに、再び書類に目を落とす。
その態度に再びカチンと来て、キレた。
「ちょっとっ!! それだけ!? ちゃんと説明してよ!! 貴方の仕業なんでしょう!!?」
オジさまは、まるで聞こえていないとばかりに動かない。
「ゼオファルド卿……ちょっとは説明してあげても……」
そんなオジさまの態度をあんまりと思ったのか、レルガさんが助け船を出してくれた。
「必要ない。 レルガ、何をしている? さっさと店に戻れ」
「……へい。 じゃあ、ハル姐さん、またいずれ……」
レルガさんが気を使って、ドアの音を鳴らさぬようゆっくりと扉を閉めてくれたのも、この時のあたしは気付けない。
部屋には、あたしとオジさまの二人きりになった。
沈黙が支配する時間が過ぎる。 まるでこの部屋には人など存在しないよう。
「…………」
「…………」
……なんで何も喋らないの?
あたしみたいな木っ端市民に言う事なんか何も無いってワケ?
再び苛立ちが募り、口を開こうとした刹那……
「……そこで何をしている? 早く店に戻れ」
ギリッ! 歯を食いしばる音。
オジさまのそのなんでもないような冷たい言葉に、一気に感情が……怒りが吹き上がった。
「何さっ! 何でよ! なんで営業停止なのよ!! 急にっ! 何の説明もなく!! 酷いよ! あたしの大事なモノ……取り上げないでよっ!!」
酷いよ……
オジさま、あたしの味方じゃなかったの?
お店の味方じゃなかったの??
助けてくれたじゃない……
抱き寄せて、くれたじゃんか……優しく、抱いてくれて……
あったかいコートも掛けてくれて……
あんなに、優しくしてくれて…………全部、ウソだったの?
「営業停止にしたのは必要なためだ。 それ以上詳しく言う必要は、無い」
無い……
無い……無い……
……あたしへの気持ちも無いって事なの?
なんでそんな突き放すのさ……どうしてそんなに冷たいの?
あたしが傷つくって分からないの?
だったら……どうして、こんな気持ちにさせたのよ!?
なんで優しくしたのよ! だったらずっと冷たいままでいてよ!!
もう好きになっちゃったのに……オジさまもあたしを気に入ってくれてるって思ったのに!!
こんなあたしでも……太ってるあたしでも……選んでくれるって期待したのに!!
あたしを特別に思ってくれるかもって、期待したのに!!
涙を拭いてくれた時も、あんなに幸せをくれたのに……!
あたしから……お店も、幸せも、取り上げないでよぉ………
ついぞ、涙が零れ始める。
オジさまは何も言葉を続けない。
何も届かない。 あたしの気持ちは届かない。
あたしは下を向いたまま、涙を落とす。
まるで親に叱られた子供のよう。
なんの涙かは分からない。
あたしの感情はグチャグチャだった。
自分で自分を制御できない。
なんでこんなに腹が立つの?
なんでこんなに悲しいの?
好きなのに、ムカツく!!
好みなのに、嫌い!!!
この人しかいないって思ったのに!
運命かもってトキメいたのに……
オジさまの事もっと知りたかったのに……
いっぱい知って、何が好きなのか、知りたかったのに……
あたしの事も、いっぱい知ってもらって……
初恋なのに……恋人になれるかもって……
いっぱい、いっぱい……甘やかしてあげたかったのに!
……オジさまは、一体、何を考えてるの?
ねえオジさま、ただの仕事だったの?
あたしの事、気に入ってくれてたんじゃなかったの?
ねえオジさま、一体、今、どんな感情なの?
ねえ…………どうして……?
なんで……どうして……?
どうして…………感情色が、視えないのよぉぉ~~~ッ!!!!
なんでさ! どうして?
今!! 一番、知りたいの!! オジさまの感情!!
肝心な時に! なんでさ!? なんで視えないの!?
いくらオジさまを凝視しても、何の色も浮かんでこない。
何の温度も感じない。
こんな事、今まで一度も無かったのに!!
今使えないで、いつ使うのよっ!!
使えない異能に腹が立つ!
期待した自分に腹が立つ!!
視えないオジさまが一番腹が立つ!!!!
涙はますます止まらない。
歯を食いしばって奔流する感情に耐える。
すると、いつの間に席から立ったのか。
琥珀色の瞳が、すぐ近くに……
オジさまは、昨日のハンカチを手に携え、こちらに向かって手を伸ばすところだった。
―――ギリッ!!
「何さ! いらないわよ!! そんなもの!!」
バシっ! とオジさまの手を払いのける。
もういい、分かった。
オジさまには頼らない。
好きになったのも間違いだった!
全部あたしの勘違いだった!!
結局頼れるのは自分なんだ!
お店だって、人間関係だって、今までだってそうして回して、生きてきたんだ!
あたしなら、一人だって、出来るんだっ!!
「もういい! オジさまには頼らない! 結局ノクセラ草なんでしょ?! あたしが犯人捕まえて! ここに持ってくればいいんでしょう!!? そうすればほら、円満解決! あたしもハッピー! オジさまもハッピー! それで、満足よねっ!??」
そうと決まればさっさと調査だ。
こんなところにいられるか。
「ふん! 邪魔したわね! ばいばい!」
――バタンっ!
あえて乱暴に扉を閉めてやる。
へんだ、ざまあみろ。
そのまま、あたしの店の入り口みたいに壊れてしまえばいいんだ。
さあ、これからだ。 やる事だ。
……ノクセラ草、それがキーワードだ。
だとしたらまずは……リゼラちゃんち!
―――――――
「入るわよー。 ヴァルグレイ?」
魔女帽を被り、魔法省の制服を身に纏った、若い……いや少しばかり歳を重ねた美しい女性が、副局長室の扉を叩いた。
その麗しい手には書類が一枚、握られている。
「何してんの、アンタ?」
机の傍で、何をせず、ぼーっと立ち尽くしているように見えるヴァルグレイ・ゼオファルドの姿を見て、リオーネは意味ありげな視線を送る。
「はは~~~ん、さては、今そこでスレちがった、カワイイぽちゃ猫ちゃんと何かあったわね?」
「何もない」
即答するところが怪しい、と睨むも……
「ま、どうせアンタに聞いたところで、何か答えてくれるワケないわよね」
「……何の用だ、リオーネ」
どうせ答えをくれるはずもない。
即座に諦める選択を選べる程度には理解がある仲の二人は、口調だけは気安い。
「ああ、ほら、受付行ったらさ。 ついでに雑用頼まれちゃって~。 何の用かといえば、これ、いわゆる一つの面会書類ね~」
恭しく、そしてわざとらしく、副局長の机に書類を置くリオーネ。
「…………」
「ふーん、ハルネ・サフランちゃんか~。 ぷにぷにしてて凄く可愛らしい子だったわね。 10年早かったらアタシが食べちゃいたいくらい」
「馬鹿な事を言うな」
「あれま珍しい。 鬼のヴァルグレイが即ツッコミをくれたよ。 こりゃ明日は槍でも降るか……」
「……用はそれだけだろう。 早く行け」
「はいはい。 相変わらずツレないわねぇ~。 いや、これがいわゆる一つの放置プレイ……」
謎な呟きを残し、去るリオーネ。
部屋には妙な空気が残る。
その空気を振り払うように腕を回し、再び副局長の机に座るヴァルグレイ。
渡された書類に目を通す。
いつもやっているように上から順に素早く目を滑らせ、鋭い目つきで確認を施す。
そして、書類の末尾に書かれた本人のサイン「ハルネ・サフラン」の文字。
本人の気質を示すような、丸みを帯びたどこか癒される文字。
ヴァルグレイは、文字に指を運ぶと、まるで確かめるように、そっと撫ぜ……
「丸い……文字だ」
そう呟き、2段目の引き出しに、そっとしまった。
あなたにおすすめの小説
嫌われS級治癒師は、治すたび寿命を削っていた
なつめ
恋愛
王国最強の冒険者パーティに所属するS級治癒師・フィオナは、
どんな傷も呪いも癒せる“奇跡の治癒師”として知られていた。
けれどその力には、誰にも言えない代償があった。
治療するたび、彼女自身の寿命が削られていくのだ。
仲間を救えば救うほど、彼女の身体は静かに壊れていく。
それでもフィオナは口を閉ざしたまま、笑って治し続けた。
だが、奇跡を当然のように受け取る仲間たちは、次第に彼女を疎み始める。
「冷たい」
「恩着せがましい」
「治せるなら最初からやればいい」
そんな言葉が積み重なり、彼女はついに“嫌われ者”となった。
そしてある日、致命傷を負った仲間を救った代償で、フィオナは余命わずかとなる。
彼女が去ろうとしたその時になって初めて、
仲間たちは、自分たちが踏みにじってきたものの大きさを知る。
これは、
誰にも理解されなかった治癒師が、それでも誰かを愛してしまう物語。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
指輪を外す夜― 横浜・雨の馬車道で ―
La Mistral
恋愛
その恋は、
横浜の雨の日に始まった。
広告代理店に勤める水瀬亜矢(32)。
穏やかな結婚生活の中で、彼女は小さな孤独を抱えていた。
ある夜、
横浜駅で傘を差し出してくれた男。
高坂恒一(46)。
落ち着いた声、微かな香水、
そして彼の左手にも結婚指輪があった。
再会したのは
石畳の街 馬車道 の古い喫茶店。
触れてはいけない距離。
それでも、二人は何度も会ってしまう。
港町の夜景と海風の中で、
静かに始まる大人の恋。
それはきっと、
長く続くはずのない恋だった。
エブリスタにも連載中
亡き姉の身代わりとして嫁いだ私ですが、離縁状を置いた翌朝、夫が私の「真実」に気づいたようです』
まさき
恋愛
「サインはもう、いただきました。あとは私がこの屋敷を出るだけです」
五年間の結婚生活。侯爵令嬢エルゼが演じ続けたのは、亡き姉・ロザリーの「身代わり」という配役だった。
夫であるカイル公爵が愛していたのは、かつて雪の中で自分を救ってくれた初恋の少女・ロザリー。
生き写しの妹であるエルゼを娶りながらも、彼は一度も彼女を「エルゼ」と呼ぶことはなかった。
冷淡な視線、姉と比較される日々。
「君はどこまでいっても、ロザリーの代わりにはなれない」
その言葉を最後に、エルゼは静かに離縁状を置き、屋敷を去る決意をする。
しかし、彼女が消えた翌朝。
カイルは、エルゼが大切に遺していった古い小箱を見つける。
そこにあったのは、十五年前のあの日、彼が「命の恩人」に預けたはずの片方のカフスボタン。
そして、幼いエルゼが綴った、あまりにも切ない真実の日記だった。
――「あの日、雪の中で貴方を抱きしめていたのは、お姉様ではなく、私だったのです」
真実を知り、絶望の中でエルゼを追うカイル。
だが、すべてを捨てて「自分」を取り戻したエルゼは、もう二度と、彼の隣で微笑む仮面の妻には戻らない。
これは、名前を奪われた女が自由を掴み、愚かな夫が真実の愛を失うまでの、静かで鮮やかな再生の物語。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
推しの妻になりました 〜アイドルと契約結婚〜
桐生桜
恋愛
コンシェルジュ見習いの高階苺依には(たかしなめい)には、パート掛け持ちの母、受験生の弟、高校生の妹……支えるべき家族がいる。
そんな毎日の中、唯一の癒しはアイドルグループ『XENO』のTOMAだった。
ある日、勤務先のホテルで苺依は目を疑う光景に出くわす。
冷たい水を浴びせられている男性……慌ててタオルを持って追いかけると、振り返ったのは、あのTOMAだった。
「……余計なお節介なんだよ」
感動も束の間、TOMAの第一声は冷たい一言だった。
しかもエレベーターの扉が閉まり、気まずい密室に二人きり。
テレビで見せる王子様の笑顔など、どこにもない。
苺依のネームプレートを一瞥したTOMAは、温かいコーヒーを要求した。
そして思いもよらない言葉を告げられる。
「俺の婚約者になれ」
父親から押しつけられる縁談にうんざりしていたTOMAが目をつけたのは、ファンのくせに少しも遠慮しない苺依だった。
苺依はお金のために、その提案を承諾する。
こうして始まった、嘘だらけの夫婦生活。
でも共に過ごすうちに、仮面の裏に隠された「本当のTOMA」が少しずつ見えてきて……。
ニセモノだった婚約者が本物の愛に変わるまでのラブストーリー。
目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした
エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ
女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。
過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。
公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。
けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。
これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。
イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん)
※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。
※他サイトにも投稿しています。
異世界に来て10年、伝えられない片想いをしている――伴侶と認識されているとは知らずに
豆腐と蜜柑と炬燵
恋愛
異世界に来て、10年。
田中緑(26歳)は、町の食事亭で働きながら、穏やかな日常を過ごしている。
この世界で生きていけるようになったのは、あの日――
途方に暮れていた自分を助けてくれた、一人の狼の半獣人のおかげだった。
ぶっきらぼうで、不器用で、それでも優しい人。
そんな彼に、気づけば10年、片想いをしている。
伝えるつもりはない。
この気持ちは、ずっと胸の中にしまっておくつもりだった。
――けれど。
彼との距離が少しずつ変わっていくたび、
隠していたはずの想いは、静かに溢れはじめる。
これは、
10年伝えられなかった片想いが、
ゆっくりと形を変えていく物語。