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16.少女(偽)とゴーレム(偽)改めて再び旅に出る
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急ぎ足で城から出たら、そこにハーディがいたのでリンが驚いていると、こちらに気づいたハーディが駆け寄ってくる。
「リンさん!」
「アホ! お前なんで…!」
「リンさんのことが心配だからに決まっているでしょう!」
「は?」
そっとリンの両手をとって心配そうに覗き込んでくるハーディ。
「大丈夫でございますか? どこかけがはされておられませんか?」
「大丈夫やて」
「でも、どこか痛いのではございませんか?」
「は?」
「痛そうなお顔をされておられますから」
リンは思わずハーディに抱きついて大きく息を吐き出す。ドワース達の行く末にザマァみろと思うのと同時に、やはり良心が痛むことも事実である。息を吐き出すとともに、そんな色々な思いを体外にすべて吐き出せてしまえばいいのにと思う。
「……大丈夫や。どこもけがしてへんし」
「……そうですか」
ハーディは何も聞かずそっと、リンの肩を包み込むように抱く。リンは頭を温かいハーディの肩に預けた。数時間前までは冷たい土の体のハーディだったけど、ようやく心と体の温度が合致したんだなとリンはボンヤリと思う。
「体」
「はい?」
「体、戻ってよかったな」
「はい」
「誤解も解けたな」
「はい」
「よかったな」
「はい」
リンは目をつむってただ静かにハーディのぬくもりに包み込まれていた。
その後すぐにリンはギルドに連絡し、ドワースに騙されていた人々の免罪に走り回ったりなど、後始末に奔走するはめになる。また、その合間を縫ってハーディの母が残したという美術品の鑑定も行ったところ、価値があるものがあったので何品かお金に換える算段をつけたりなどもなど。
ギルドも協力してくれたのでややこしい手続は任せることにし、ようやっとハーディの汚名を晴らすことができた。
これでもう自分がいなくても大丈夫であろう。リンはほっと一息つくとともに、ハーディの元を去らなければいけないことに一抹の寂しさを覚える。
自分でも意外なほどにハーディと一緒の日々は心地が良かったのだ。お人好しで涙もろいハーディは、人間として大事な部分をリンに思い出させてくれる。
ゴーレムの時と同じなのに人間の姿というだけで妙にドキドキする。
……いや多分、今まで表情がわからなかった分、素直に表す感情と表情が一緒になったからだとリンは自分を納得させる。
「……頑張れよ」
「はい。よろしくお願いします」
「……あ?」
一瞬、理解できなくて、思わず顔を上げると、ニコニコ笑顔のハーディ。
「だって、リンさんがワタクシと一緒にいてくださるとおっしゃったじゃないですか」
……。
「や、あれは旅の間だけで…」
リンが呆然としたままいうと、ハーディはとんでもないことを口にした。
「どうせなのでワタクシ、長期の旅に出ようと思うのです」
「はぁっ?!」
ハーディは笑顔のまま、リンの顔を覗き込んでくる。
「ワタクシ、旅に出て見聞を広めもっと大人としてしっかりとしたいのです」
「あぁ、うん、確かにお前はもっとしかりしないとだめだけど…」
「でしょう? でも多分一人だとだめだと思うのですよ」
「……一人だとだめっていうか多分すぐ野垂れ死にそうっていうか…」
リンの容赦ない突っ込みにハーディは思わず黙りこくってしまう。
「その辺はちょっとおいておきまして」
「おいとくのかよ。大事なことやろ」
思わず手が出ると、ハーディが痛いですと涙目になってリンを見た。ちょっと前までハーディから痛いと言われたことがなかったし、表情豊かに感情を表すハーディにリンは戸惑ってしまい、それがハーディにも伝わったのかお互い、妙な緊張感を持って見つめ合う形になってしまう。
ギコチなく、その妙な緊張感を破ったのはハーディがさきだった。
「……おいておいてくださいませんか?」
「……話進まんからな。まぁ、いいやろ」
「えぇっと…それでですね、今回、すごくいいコンビネーションだったのではないかと」
「……お前ほとんど泣いたり、叫んだりしてるだけやったやんけ」
「……幽霊さんや動物さんたちに関してはリンさんも同じだったのではないですか?」
リンは思わず考え込んでしまう。
「……魔物とか悪人はアタシ担当で」
「幽霊さんと動物さんはワタクシ担当で」
ハーディは、ワクワクとした表情を押さえもしないで提案してくる。
「確かにいいかもしんない…」
「でしょう?」
パァッと顔を輝かすハーディに、リンはこうなりゃやけだと開き直ることにした。
「……わかった。一緒に旅をしたる」
「リンさん! ありがとう!」
ギュウと抱きしめられてもそんなに痛くない。ゴーレムだった時は死ぬかと思うほど痛いだけだったのに。それどころか心のどこかがムズムズして落ち着かない。なんだかその理由を考えるのが怖くなって反射的にハーディの体を突き飛ばした。
「いい加減甘えんなぁっ!」
「あぁぁ! すいませんっ!」
ペコペコと謝るハーディにリンはビシッと指を突きつける。
「厳しくいくからな! 覚悟しろよ!」
「はい!」
ニッコリと笑うハーディにリンはフンと鼻を鳴らして顔を赤くすると横を向く。
こうして奇妙な凸凹コンビの旅は始まったのだ。
「リンさん!」
「アホ! お前なんで…!」
「リンさんのことが心配だからに決まっているでしょう!」
「は?」
そっとリンの両手をとって心配そうに覗き込んでくるハーディ。
「大丈夫でございますか? どこかけがはされておられませんか?」
「大丈夫やて」
「でも、どこか痛いのではございませんか?」
「は?」
「痛そうなお顔をされておられますから」
リンは思わずハーディに抱きついて大きく息を吐き出す。ドワース達の行く末にザマァみろと思うのと同時に、やはり良心が痛むことも事実である。息を吐き出すとともに、そんな色々な思いを体外にすべて吐き出せてしまえばいいのにと思う。
「……大丈夫や。どこもけがしてへんし」
「……そうですか」
ハーディは何も聞かずそっと、リンの肩を包み込むように抱く。リンは頭を温かいハーディの肩に預けた。数時間前までは冷たい土の体のハーディだったけど、ようやく心と体の温度が合致したんだなとリンはボンヤリと思う。
「体」
「はい?」
「体、戻ってよかったな」
「はい」
「誤解も解けたな」
「はい」
「よかったな」
「はい」
リンは目をつむってただ静かにハーディのぬくもりに包み込まれていた。
その後すぐにリンはギルドに連絡し、ドワースに騙されていた人々の免罪に走り回ったりなど、後始末に奔走するはめになる。また、その合間を縫ってハーディの母が残したという美術品の鑑定も行ったところ、価値があるものがあったので何品かお金に換える算段をつけたりなどもなど。
ギルドも協力してくれたのでややこしい手続は任せることにし、ようやっとハーディの汚名を晴らすことができた。
これでもう自分がいなくても大丈夫であろう。リンはほっと一息つくとともに、ハーディの元を去らなければいけないことに一抹の寂しさを覚える。
自分でも意外なほどにハーディと一緒の日々は心地が良かったのだ。お人好しで涙もろいハーディは、人間として大事な部分をリンに思い出させてくれる。
ゴーレムの時と同じなのに人間の姿というだけで妙にドキドキする。
……いや多分、今まで表情がわからなかった分、素直に表す感情と表情が一緒になったからだとリンは自分を納得させる。
「……頑張れよ」
「はい。よろしくお願いします」
「……あ?」
一瞬、理解できなくて、思わず顔を上げると、ニコニコ笑顔のハーディ。
「だって、リンさんがワタクシと一緒にいてくださるとおっしゃったじゃないですか」
……。
「や、あれは旅の間だけで…」
リンが呆然としたままいうと、ハーディはとんでもないことを口にした。
「どうせなのでワタクシ、長期の旅に出ようと思うのです」
「はぁっ?!」
ハーディは笑顔のまま、リンの顔を覗き込んでくる。
「ワタクシ、旅に出て見聞を広めもっと大人としてしっかりとしたいのです」
「あぁ、うん、確かにお前はもっとしかりしないとだめだけど…」
「でしょう? でも多分一人だとだめだと思うのですよ」
「……一人だとだめっていうか多分すぐ野垂れ死にそうっていうか…」
リンの容赦ない突っ込みにハーディは思わず黙りこくってしまう。
「その辺はちょっとおいておきまして」
「おいとくのかよ。大事なことやろ」
思わず手が出ると、ハーディが痛いですと涙目になってリンを見た。ちょっと前までハーディから痛いと言われたことがなかったし、表情豊かに感情を表すハーディにリンは戸惑ってしまい、それがハーディにも伝わったのかお互い、妙な緊張感を持って見つめ合う形になってしまう。
ギコチなく、その妙な緊張感を破ったのはハーディがさきだった。
「……おいておいてくださいませんか?」
「……話進まんからな。まぁ、いいやろ」
「えぇっと…それでですね、今回、すごくいいコンビネーションだったのではないかと」
「……お前ほとんど泣いたり、叫んだりしてるだけやったやんけ」
「……幽霊さんや動物さんたちに関してはリンさんも同じだったのではないですか?」
リンは思わず考え込んでしまう。
「……魔物とか悪人はアタシ担当で」
「幽霊さんと動物さんはワタクシ担当で」
ハーディは、ワクワクとした表情を押さえもしないで提案してくる。
「確かにいいかもしんない…」
「でしょう?」
パァッと顔を輝かすハーディに、リンはこうなりゃやけだと開き直ることにした。
「……わかった。一緒に旅をしたる」
「リンさん! ありがとう!」
ギュウと抱きしめられてもそんなに痛くない。ゴーレムだった時は死ぬかと思うほど痛いだけだったのに。それどころか心のどこかがムズムズして落ち着かない。なんだかその理由を考えるのが怖くなって反射的にハーディの体を突き飛ばした。
「いい加減甘えんなぁっ!」
「あぁぁ! すいませんっ!」
ペコペコと謝るハーディにリンはビシッと指を突きつける。
「厳しくいくからな! 覚悟しろよ!」
「はい!」
ニッコリと笑うハーディにリンはフンと鼻を鳴らして顔を赤くすると横を向く。
こうして奇妙な凸凹コンビの旅は始まったのだ。
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