幻想艷談

4 ヴァンパイア・ハーフへの代価

「ねえ、お願いがあるの」

夜に貴方の部屋を訪問した彼女は甘えた口調で貴方にねだります。

彼女は行き倒れ寸前の貴方を自分の家に招き入れてくれた恩人です。
少々のお願いは聞かないわけにはいきません。

これは単なる道理の話ではありません。
戦士が人を超えた力を行使するため、神々に向けて立てた誓いは神秘的な強制力を持ちます。
遠い世界では『ゲッシュ』などと呼ばれる魔力ある誓いです。
そんな貴方が立てた誓いの一つに「受けた恩は返す」というものがあります。
故に、貴方は彼女の願いを聞き入れる義務があるのです。

貴方は下着姿の彼女に戸惑いながら、自分ができることならばと返答します。
それを聞いた彼女はニンマリと笑いました。

おや、彼女の雰囲気がなんだかおかしいようです。
貴方が何度か瞬きする間に、彼女は異質な存在へと形を変えました。

「私、ヴァンパイアハーフなんだ」

変貌した彼女は舌なめずりをしながら貴方へにじり寄ります。

ヴァンパイアハーフの彼女は人より少し強い生命力を持ちますが、ヴァンパイアとしての能力はほとんど有さないと言います。
血を吸うこともできませんし、人を支配して意のままに扱うこともできないようです。

「でも、やっぱりお腹は空くんだよね」

通常の食事では賄えない飢餓感を彼女は持つそうです。
それを満たすには、強い男性の精気が必要だとか。

貴方は食事を施したのだから、彼女にも「食事」を提供して欲しい。
彼女の言い分は貴方の「誓い」と矛盾しないため、貴方は彼女の願いを聞き入れる必要がありそうですね。

ヴァンパイアの牙を持たない彼女は、実に魅力的な様々な手段で貴方から精気を吸い取ろうとしているようです。

「じゃあ、いただきます」

そう言って彼女は静かに貴方の唇を塞いだのでした。

ああ、「誓い」なんてものがなければ、彼女に押し倒されたりしなかったのに！
貴方はそんな言い訳を心に浮かべます。
私には異論がありますが、まあどちらでもいいでしょう。