【完結】聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん

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現代( 注意! )

84 無価値なモノ達

( 玲央 )

「 ダッサい格好、ダッサいコーディネート。

あんなので外に出るなんて……常識を疑っちゃう。 」


「 あんな男でいいなんて女捨ててるわ~。

もっと上を目指そうって向上心がないのかしらね?

あ~そっか~!

それで精一杯なのかなぁ? 」


口を開けば毒しか吐かない母。

物心ついた時からこうだったが、俺の思った事は一つもない。


"   無 "  それだけ。

まぁこれは母に対してだけではなかったけど。


考える頭と情報を手にするためのツールが育ちきると、沢山の情報が入ってくるようになった。

でも俺にとってそれは記号と同じで、それがただ一定の法則に従って並んでいるだけ。

それが俺から見える全ての世界だった。


だから生きていくのもとても簡単で、こう言った場合に予測される反応、それを1番効率よく利用する方法は、瞬時に答えが出てしまう。

その中で断トツに役に立つものは "   美しさ "


それだけで周りは俺に、正しさを見出す。


どんなにおかしな事でも美しければ正しい。

それが正義。


そしてそんな正義を頭に入れ続けた奴らは、気がつけば勝手に壊れてしまう。


簡単に壊れちゃうモノに価値なんてある?

ないでしょ?


その便利な道具達をとてもうまく使っていたのが母で、昔から持ち前の美しさで金持ちの男に擦り寄り、いらなくなったらポイっ。

それで人よりだいぶ裕福な暮らしを手にしてたのだから、賢い方だとは思う。

だが、未来に関して言えばあまり賢い方ではなかった。



「 男の癖にそんな顔で生まれたって意味ないから。

……ムカつく。 」


「 何?もしかして私の事馬鹿にしてる?

ウザいんだよ、今直ぐ消えればいいのに。 」


ある日を境に母は俺を見るたび酷く攻撃的になるようになった。


理由は簡単。

自身の美しさに陰りが出てきたからだ。


だからそれを持つ俺が憎らしくて憎らしくて堪らない。

自分が味わってきた旨みを、別の奴が吸って幸せになるのが許せないのだ。


俺は母にとって、憎悪の対象になっていた。


しかし俺にとってはそれもどうでもいい事。

寧ろ必ず失うモノに執着して見えない敵と戦う姿は、俺に  "  愉快 "   を運んできてくれた。


"   人 "  を使うと楽しいんだ?


それを覚えた俺は、ほんの少しだけ……俺に心酔する奴に対して肯定の言葉を掛けてみた。


"   その考え、凄くいいね。 "


すると面白いくらいにそいつは変わってしまった。

” その考え以外は正しくないんだ! ”

それを周りにも押し付け、酷く傲慢で攻撃的な人物へと変化する。

そしてそれが頂点に達したとき言ってやった。


” 何だかそういうの好きじゃないな ”

────って。


すると今までその行いに腹を立ててた奴らが一斉にそいつを攻撃し始め、どんどんその変化は伝染していく。


何だかレミングスみたい。

……面白い。


勝手に騒いで勝手に変わって勝手に自滅する。

それを見る事で多少の暇は潰せたから、たまに突いて適度に楽しんでいたのだが────そんな時、それを邪魔する面倒な奴が現れた。

それが大樹。

大樹は世で役に立つ便利なツールを一つも持っていない様な奴だった。

美しくもないし頭も悪い。

単細胞で直ぐに動くし落ち着きもない。

例えるなら飛び回るハエと同レベル。


そんなウザくて鬱陶しい大樹は、事もあろうに俺の楽しみまで邪魔をしてきた。


────何だ?コイツ。


何だかそれが予想される行動じゃなかったから非常に勘に触り、それから次のターゲットに決める。


周りに全て存在を否定される場所で、何日持つのかな?


クスクスと笑いながら高みの見物をしていたのだが────大樹はやはり俺の計算通りの動きはしなかった。

どんなに周りに否定されても大樹は変わらない。

まるでドッシリと立って動かない大樹の様に、変わらずそこに在り続ける。


それに何も感じなかった心が荒らされて、それが本当に腹立たしかった。

ウザいっ!

キモいっ!!

鬱陶しいっ!!!

今まで静かだった心に変化をもたらす大樹が憎い。


初めて持った憎い気持ちを持て余していた、ある日────その日も大樹を変わらず攻撃していた奴が突然泣き出した。

何の前触れもなく。

すると不思議な事に、それはあっという間に伝染していって全員が泣き出してしまい、何だかおかしな事になってしまった。


おかしい。

おかしい。

これは当然の様に予想される反応じゃない!


自分の予想に反した行動ばかりする周りに若干焦りながら、その中心にいる人物へと視線を向けた。


大樹……アイツかっ!!


皆の中心で、一番醜く崩れた顔で大泣きしている大樹。

そいつこそが ” 人 ” の当然である行動を止めた張本人だ。


それが本当に勘に触り、今度はどうしてやろうかと考えていると、突然大樹は俺の方へやってきて ” どうしてこんな事をしたのか? ” と尋ねてきた。

その目はキラキラと輝いていて……それが癇に障って仕方がない。


だから傷つけてやろうと思って言ってやったのだ。

” 生意気だから ” と。


だってこの俺がせっかく遊んでいるのに、それを何も持っていないゴミみたいなヤツが邪魔するんだ。


生意気だろう?


何も人より秀でたモノを持っていないのだから、大人しく従え。

そういった意味を込めて冷たく ” 俺の暇つぶしのおもちゃ達を勝手に使うなよ ” と言ってやれば……その後は何故か殴られた。


初めて他人から与えられる痛み。

初めて正面からぶつけられる強い感情の数々。


ムカついてムカついて何でこんなモノが世の中にいるんだ!!と思った。


俺に従え!

俺のために変われ!!

俺のために俺のために────────……。



呪う様な言葉を心の中で吐きながら、気がつけば俺は床に倒れていて……そこでフッと思ったのだ。



俺のために直ぐ変わってしまう様なモノに、価値なんてあるの??


その ” 変化 ” は俺にとって無価値なモノだったでしょ?



そう考えると沢山の感情に溢れている自分を冷静に見つめ、そこからはジワジワと痺れる様な感覚が体中を巡った。
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