【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
226 / 1,649
第五章(ウォッカ編、試験前日、冒険者との出会いとレオンの成長と勘違いと)

210 見ているよ……?

しおりを挟む
(リーフ)

部屋に戻ると、モルトとニールが目を見開いたままぼんやりと天井を見上げていて、そんな二人に恐る恐る話しかける。

「ふ、二人とも大丈夫?」

声を掛けられた二人は、ツツッ……と涙を流し「もうお婿にいけない……。」と、か細く呟いた。
そしてその後二人はうっうっと泣き始め、部屋の中はそのすすり泣く声で一杯に……。

「そ、そう……。」

俺は悲痛な二人の声を聞きながら、深く同情して嘆き悲しんだ。

普段女性との絡みが皆無な俺、レオン、モルト、ニールの幼馴染~ズ。
特にモルトとニールは、女性とのあれこれに対しキラキラとした理想像をもっている。
そんな二人はたった今、そんな女性に全てを見られてしまった上に赤ちゃんの様にお着替えまでされてしまったのだ。

全てをすっ飛ばしての赤ちゃんプレーか……。
確かにちょっと、難易度が高すぎる。

同じ男として掛ける言葉が見つからず、とりあえず静かに泣く二人にソッと布団をかけ、俺も寝ようかとレオンにおやすみを告げる。
コクリと頷くレオンを見た後、俺は大きなベッドにボスンっとダイブ!

────モフフフフ~!!

そのまままるで雲の様なふかふかベッドに身を埋め、その感触を存分堪能する。
そうして大満足した後は、なんとなくフッとレオンが寝る予定のベッドの方へ目を向けると────数匹の砂ネズミたちと目が合った。

「…………?」

なぜ砂ネズミ達がレオンのベッドに??

ちょうど4匹いることから、先ほど大会で貰った参加賞だと思われる。

────ジィィィ~……。
結構な圧力で見つめてくる8つの目に、思わず顔を引きつらせながら、砂ネズミ達の向こう側へ視線を移した。
するとそこには、ヌボっと立ったままジッと俺を見つめる別の2つの視線が……。

「……レ、レオン、ベッドで寝ないの?」

「砂ネズミがいますから。」

いるね、砂ネズミが4匹。

その通りだったから素直に頷く。

「な、なんで砂ネズミがベッドにいるの……?」

「この部屋の中で一番良い場所だからです。」

ちょっと聞くだけでは理解不能な理由でも、レオンの部屋の事を思い出せばピン!ときた。

レオンは常にベッドの上に砂ネズミを置いて、まるで祭壇のように飾り付けている。
どうやらおままごとの一種らしいのだが、それにベッドまで譲り自分は絨毯の上で寝ているので、行き過ぎ感はあると思っていた。

大人になってから嵌まると、規模は大きくなるっていうけど……。

とりあえず飽きるまで暖かく見守ろうと気長に見守っていたらコレ。
外出先、しかも明日は大事な試験なので、いくら何でもおままごとはお休みして欲しい。
少し考えた後、俺は、つぃ……と自分の布団を持ち上げた。

「ほら、レオンおいで~。」

フリフリ~♬と布団をあげながら、レオンに声をかける。
するとレオンは呆けた顔で俺を見たまま動かなくなってしまったので、俺は布団を持ち上げてない方の手で敷布団を叩いた。

「心配しなくても大丈夫だよ。このベッド、広いからさ。」

レオンの体格を考えるとシングルベッドでの熟睡は難しいが、こんなに広いベッドなら、カッコウのひな鳥のように俺が落とされる心配はないと思う。
持ち上げた布団を更に激しく振りながらレオンが来るのを待っていると、レオンはおぼつかない足取りでこちらにやってきた。
そして布団をジッと見下ろした後、モソモソとゆっくり布団の中に入ってきて、人間1人分位のスペースを開けてこちらを向いたまま大人しく横たわる。

よしよ~し。

野良猫への餌やり初成功の時と同じ感動!
恐る恐る近づいてきたレオンに優しく微笑むと、持ち上げていた布団をレオンの上に掛けてあげた。
そして、改めて感じるレオンの存在感に、今度はじんわりとした喜びが湧き上がる。

本物のレオンハルトなんだよな~……。

俺の人生を変えてくれた人。
俺が俺であるために、ずっと心の支えになってくれた人。
そんな永遠のヒーローとも言える憧れの人が、こんな手を伸ばせば届く距離にいるなんて本当に凄い事だ。
感じた喜びはそのまま大きくなっていき、全身へと染み渡っていった。

人生って多分楽しい一時が奇跡で、常に色々なものと戦って前へ歩き続けないといけないんだと、俺は1つの人生を終えてしみじみ思っている。
そんな歩んできた軌跡全てが人生で、それを進んでいくための心の支えが、俺にとってはこの『レオンハルト』だった。

沢山の困難にぶつかって沢山泣いたし、悔しい思いもしたし、誰かを憎いと感じる事だってあった。
でもその度に、頭をよぎった。
世界に復讐することができる力を持ちながら、ただ『生きるとは何か』、その答えを見つけるためだけに前に進んでいった姿が。

ただ生まれてきただけなのに全てに拒絶され、傷つけられ、ゴミのように扱われつづけた『レオンハルト』
本来なら憎むはずだ。

自分を捨てた母を、自身を迫害し続けた人々を、自身を害すリーフを、そして自身を拒絶する『世界』そのものを。
しかしレオンハルトは復讐に目を向けることなく、心を壊してもなお、誰一人として恨んだり憎んだりはしなかった。

全てを飲み込み進み続ける彼の姿は、ただただ悲しい。
しかし同時に誰よりも強い人だと、俺は憧れをもったのだ。

そんなレオンハルトは最後まで『絶望』に負けることなく、壊れた心のままたった1つしかないとはいえ答えを出した。
それって凄い事だと俺は思う。

目の前に横たわるレオンに俺は手を伸ばしかけて────……。

────直ぐにその手を止めた。

目の前にいるレオンも、どんなに俺にひどい扱いをされようが、挫ける事なくその屈強をバネにどんどん強くなっていっている。
それをみて嬉しく思う反面、ふっと考えた。

もし俺が悪役リーフとして転生していなかったら?
そしたら二人で飲み明かしたり、語り合ったり、そんな未来があったのかな?
リーフとなった今、それはありえない未来だけど……。

「……ハァ~。」

届かなかった手を見つめながら、小さく息をはきだした。

俺達の未来はレオンによって断罪された後、二度と交わることはない。
残念だが、その覚悟はとっくについている。
俺はそのままゆっくりゆっくりと伸ばしかけた手を引っ込めた。

でも────今だけは側にいることが許されている。
それってすっごく幸せな事なんだと思った。

俺は暗くて全く見えないレオンの顔を見つめ、ニッコリと微笑む。

悪役リーフとしてこの手を伸ばす事はできないが、せめて断罪されるまでレオンの姿を沢山この目に焼き付けよう。

引っ込めた手をギュッと握り閉めると、次第に瞼は重くなっていく。

「おやすみ、レオン……。」

そして薄れていく意識の中、真っ暗で見えないレオンに向かってそう呟いた後、俺の意識はプツリと途絶えた。
しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

無能と呼ばれた婚約者は王を完成させる〜替え玉婚約者のはずが、強すぎる王太子に手放してもらえません〜

統子
BL
兄の身代わりとして王太子の婚約者になった伯爵家次男リュシー。 嘘の名を名乗ったはずが、冷静で誠実な王太子リオンは彼を「力の装置」としてではなく、対等な伴侶として扱おうとする。 本物になりたいと願う替え玉と、完成された王太子の静謐な王宮ロマンス。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

処理中です...