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第五章(ウォッカ編、試験前日、冒険者との出会いとレオンの成長と勘違いと)
(レオン)211 一番
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(レオン)
首筋に刻まれた愛しい印に、そっと手を当て優しく撫でる。
リーフ様の名前が刻まれた俺と彼を繋ぐ大事な大事な絆。
それを毎朝こうして撫でる事から、俺の一日は始まる。
なんて幸せな日々……。
その幸せを噛み締めながらリーフ様が目覚める前に外に出ると、花を一輪刈り取りベッドの上の砂ネズミに捧げた。
そしてその可愛らしいつぶらな瞳を見つめながら、本日の予定について考える。
本日の早朝から中学院の試験会場である【グリモア】という街に向かうため、この街を出るらしい。
リーフ様曰く、『初めての遠出だ!やっほ~い!』 ────だそうで、昨日はとても嬉しそうにはしゃいでいた。
「リーフ様が楽しいなら遠出は『良い』事だ。」
満足気に頷きながらリーフ様の眠る部屋に向かい、到着後はその真下に立ってジッと部屋の窓を見上げる。
これが奴隷になってからの俺の日常だ。
リーフ様は目を覚ますと真っ先に窓から顔を出すため、俺は高さにして20mくらいのその窓の真下で、リーフ様が目を覚ますまで待機する。
そうすれば、リーフ様が目にする最初の人間になる事ができるのだ。
この幸せは誰にも譲りたくない。
そうして本日もいつも通りジッとその真下で窓を見上げていると、リーフ様が起きる気配がし、窓からその美しい顔を出してくれた。
────リーフ様だ!!
幸せな気持ちがその瞬間ブワッと俺の心の中を占め、それと同時にソワソワと落ち着かない気持ちも上乗せされる。
「んん~?……あれ?」
顔を出したリーフ様は直ぐに俺の存在に気づいてくれて、真下にいる俺をジッと見下ろした。
そのキラキラ輝く瞳に写り込んだ俺の姿は────恐ろしい化け物ではなく、ただの幸せな一人の男にしか見えない。
本当に不思議だ。
「おはようレオン~、今日も早いね!
時間外手当は出ないんだから、もっとゆっくり寝てていいんだよ~。」
時間外手当……??
リーフ様は時々理解が難しい言葉を言うが、リーフ様の言う言葉こそが世界の真理……つまり、俺の知識が圧倒的に足りていないだけということだ。
「おはようございます。リーフ様。」
もっと精進せねばと決意を新たに挨拶すると、リーフ様は「ちょっと待ってて~!」と言って一旦部屋に戻り、また直ぐに姿を現した。
どうやら簡素な白いシャツと黒いズボンに着替えたらしいリーフ様は、こちらまで飛び降りてくる。
「俺の髪が長かったら、上から垂らして登って来れたのにね!なんちゃって~!」
着地したリーフ様はやはりよく分からない言葉を言ったが、「登っていいなら俺は普通に壁を登って行きます。」と返せば楽しそうに笑った。
「今日はラジオ体操だけして馬車を待とうね。」
笑い終わったリーフ様は楽しそうに話しながら、裏手の広場へと歩いていく。
いつもより、二人きりの時間が少ない……。
それが面白くなくて少しムッとしたが、リーフ様の『馬車』なるものを楽しみにしている様子を見ていると、口を出せなかった。
しかし、心の中はモヤモヤとしたままで、更にそれは『馬車』というモノについて考えれば考える程、濃くハッキリとしていく。
<馬車>
人が乗れる車輪付きの箱の様なものを、馬が引いていく乗り物の1つ。
『馬』がリーフ様を乗せて走る。
俺以外にその身を運ばせる……正直不愉快だ。
「…………。」
────ムッ!
イライラする気持ちを必死に抑え、平静を装う。
てっきり【グリモア】までリーフ様を運ぶのは俺だと思っていたので、その事を聞いた時は、かなりのショックを受けた。
俺が背負って行けば一瞬で目的地に着けるというのに、何故俺ではなく、その『馬』にそんな大役を任せるのか……?
そこまで考えて、ある1つの可能性を思い浮かべる。
『馬』は、もしかして俺よりも早くて強い、魅力あふれる生き物なのではないか?
そう考えた瞬間、心から湧き上がるドロドロと膿むような怒りを感じ、俺はスッと戦闘モードに切り替えた。
────ならば見極めよう。
その『馬』なるものが、リーフ様をお送りするのにふさわしい存在であるかどうかを……。
そうしてメラメラと対抗心を燃やしている間に、いつもの日課のラジオ体操を終え、いつも通り残飯を食べさせて貰い、鬼気迫る気持ちで『馬』の到着を待った。
パッパカパ~♬
────パッカパッカ~♬
待つこと少し。
軽快な足音と共にやってきたのは、二頭の白い『馬』で、そのあまりの存在の弱々しさに俺は息を飲む。
「…………?」
流石にこれは……いや、もしかしたら何らかの強力な阻害系スキルを使用している可能性が?
確認するため直ぐに近くに寄り、ジロジロと観察したのだが……。
────弱い……。
測ることが困難なほど、最弱レベルのステータス。
こんな吹けば爆発してしまうほどの弱さでは、リーフ様を運ぶ資格などない。
────ムッ!!!
怒りの感情のまま、『馬』を睨みつけ、俺の方が全てにおいて上であるとリーフ様に訴えた。
するとまるで当たり前だと言わんばかりにリーフ様は笑い、「そうだね!レオンのほうが早いね~!」と全面的に肯定してくれる。
゛レオンの方が、あんな白いヤツより早い!強い!゛
゛やっぱり俺の『馬』はレオン以外にいない!゛
゛レオンが俺の一番だ!゛
先ほどまで感じていた不快な気持ちは吹き飛び、喜びの気持ちが心の中を占めた。
そんな浮かれた気分のまま、俺は直ぐに馬車の本体と馬を即座に分離しようとしたのだが────リーフ様に抱きつかれて中断させられる。
「なっ、なにやってるんだい!レオン、もう冗談はいいから!────ね?」
「冗談??何がですか??」
自分の発言を振り返ったが、とくに冗談というカテゴリーに入る言葉はなかったような……?
一つ一つ会話を振り返りながら考えていると、なんとリーフ様は、この俺より遥かに劣る白い馬を褒め始めたのだ!
俺が一番のはずなのに!?
頭の中にはリーフ様の声がガンガンと響く。
゛レオンは早くて強いけど、こっちのお馬さんのほうが白いし凄いし~!゛
゛レオンよりこっちに乗りたいな!゛
゛やっぱりこっちの『馬』が一番だ!゛
「全てにおいて俺の方が優れています。なのに何故リーフ様はコイツを選ぶのですか!?俺とアイツ、どう違うのですか!!」
気がつけば、リーフ様に対しグイグイと責め立てるように言ってしまった。
俺が一番。
なのになんで俺を選んでくれないのか!!
そんな気持ちが前へ前へと勝手に出てきてしまい、どうしてもそれを抑えておくことが出来ない。
この様に、奴隷になったことでもう十分だと思った俺の欲望は……日に日にその強さを増していく。
こんなに沢山の感情が、この世にはあるのか……。
リーフ様と出会ってからゾッとするほど沢山の感情を経験させられ、その度にもうこれ以上はないだろうと思っても、今の今までそれは日々更新され続けている。
何とか落ち着きを取り戻そうと、リーフ様の話を聞きながらその言い分を聞く。
リーフ様は優しい。
外見同様とても美しい心を持っているリーフ様は、いかに『馬』が弱く役に立たない存在だとしても、それを無下にするのは可愛そう。
そう心を痛めている様だ。
そういう話なら解決は容易い。
俺は即座にリーフ座に背を向けてしゃがみ込んだ。
無駄にデカくごちゃごちゃしている車体はあの役立たずの『馬』にくれてやり、リーフ様は俺がお運びする。
それで問題は全て解決だ。
そうしてリーフ様に喜んで背を向けて待っていたのだが、それにストップを掛けるようにリーフ様は言った。
「レオン、君のお仕事は『馬』だけでは無いだろう?
君が『馬』になってしまったら……誰が俺の『椅子』になるんだい?!」
「────っ!!」
────そのとおりだ!
首筋に刻まれた愛しい印に、そっと手を当て優しく撫でる。
リーフ様の名前が刻まれた俺と彼を繋ぐ大事な大事な絆。
それを毎朝こうして撫でる事から、俺の一日は始まる。
なんて幸せな日々……。
その幸せを噛み締めながらリーフ様が目覚める前に外に出ると、花を一輪刈り取りベッドの上の砂ネズミに捧げた。
そしてその可愛らしいつぶらな瞳を見つめながら、本日の予定について考える。
本日の早朝から中学院の試験会場である【グリモア】という街に向かうため、この街を出るらしい。
リーフ様曰く、『初めての遠出だ!やっほ~い!』 ────だそうで、昨日はとても嬉しそうにはしゃいでいた。
「リーフ様が楽しいなら遠出は『良い』事だ。」
満足気に頷きながらリーフ様の眠る部屋に向かい、到着後はその真下に立ってジッと部屋の窓を見上げる。
これが奴隷になってからの俺の日常だ。
リーフ様は目を覚ますと真っ先に窓から顔を出すため、俺は高さにして20mくらいのその窓の真下で、リーフ様が目を覚ますまで待機する。
そうすれば、リーフ様が目にする最初の人間になる事ができるのだ。
この幸せは誰にも譲りたくない。
そうして本日もいつも通りジッとその真下で窓を見上げていると、リーフ様が起きる気配がし、窓からその美しい顔を出してくれた。
────リーフ様だ!!
幸せな気持ちがその瞬間ブワッと俺の心の中を占め、それと同時にソワソワと落ち着かない気持ちも上乗せされる。
「んん~?……あれ?」
顔を出したリーフ様は直ぐに俺の存在に気づいてくれて、真下にいる俺をジッと見下ろした。
そのキラキラ輝く瞳に写り込んだ俺の姿は────恐ろしい化け物ではなく、ただの幸せな一人の男にしか見えない。
本当に不思議だ。
「おはようレオン~、今日も早いね!
時間外手当は出ないんだから、もっとゆっくり寝てていいんだよ~。」
時間外手当……??
リーフ様は時々理解が難しい言葉を言うが、リーフ様の言う言葉こそが世界の真理……つまり、俺の知識が圧倒的に足りていないだけということだ。
「おはようございます。リーフ様。」
もっと精進せねばと決意を新たに挨拶すると、リーフ様は「ちょっと待ってて~!」と言って一旦部屋に戻り、また直ぐに姿を現した。
どうやら簡素な白いシャツと黒いズボンに着替えたらしいリーフ様は、こちらまで飛び降りてくる。
「俺の髪が長かったら、上から垂らして登って来れたのにね!なんちゃって~!」
着地したリーフ様はやはりよく分からない言葉を言ったが、「登っていいなら俺は普通に壁を登って行きます。」と返せば楽しそうに笑った。
「今日はラジオ体操だけして馬車を待とうね。」
笑い終わったリーフ様は楽しそうに話しながら、裏手の広場へと歩いていく。
いつもより、二人きりの時間が少ない……。
それが面白くなくて少しムッとしたが、リーフ様の『馬車』なるものを楽しみにしている様子を見ていると、口を出せなかった。
しかし、心の中はモヤモヤとしたままで、更にそれは『馬車』というモノについて考えれば考える程、濃くハッキリとしていく。
<馬車>
人が乗れる車輪付きの箱の様なものを、馬が引いていく乗り物の1つ。
『馬』がリーフ様を乗せて走る。
俺以外にその身を運ばせる……正直不愉快だ。
「…………。」
────ムッ!
イライラする気持ちを必死に抑え、平静を装う。
てっきり【グリモア】までリーフ様を運ぶのは俺だと思っていたので、その事を聞いた時は、かなりのショックを受けた。
俺が背負って行けば一瞬で目的地に着けるというのに、何故俺ではなく、その『馬』にそんな大役を任せるのか……?
そこまで考えて、ある1つの可能性を思い浮かべる。
『馬』は、もしかして俺よりも早くて強い、魅力あふれる生き物なのではないか?
そう考えた瞬間、心から湧き上がるドロドロと膿むような怒りを感じ、俺はスッと戦闘モードに切り替えた。
────ならば見極めよう。
その『馬』なるものが、リーフ様をお送りするのにふさわしい存在であるかどうかを……。
そうしてメラメラと対抗心を燃やしている間に、いつもの日課のラジオ体操を終え、いつも通り残飯を食べさせて貰い、鬼気迫る気持ちで『馬』の到着を待った。
パッパカパ~♬
────パッカパッカ~♬
待つこと少し。
軽快な足音と共にやってきたのは、二頭の白い『馬』で、そのあまりの存在の弱々しさに俺は息を飲む。
「…………?」
流石にこれは……いや、もしかしたら何らかの強力な阻害系スキルを使用している可能性が?
確認するため直ぐに近くに寄り、ジロジロと観察したのだが……。
────弱い……。
測ることが困難なほど、最弱レベルのステータス。
こんな吹けば爆発してしまうほどの弱さでは、リーフ様を運ぶ資格などない。
────ムッ!!!
怒りの感情のまま、『馬』を睨みつけ、俺の方が全てにおいて上であるとリーフ様に訴えた。
するとまるで当たり前だと言わんばかりにリーフ様は笑い、「そうだね!レオンのほうが早いね~!」と全面的に肯定してくれる。
゛レオンの方が、あんな白いヤツより早い!強い!゛
゛やっぱり俺の『馬』はレオン以外にいない!゛
゛レオンが俺の一番だ!゛
先ほどまで感じていた不快な気持ちは吹き飛び、喜びの気持ちが心の中を占めた。
そんな浮かれた気分のまま、俺は直ぐに馬車の本体と馬を即座に分離しようとしたのだが────リーフ様に抱きつかれて中断させられる。
「なっ、なにやってるんだい!レオン、もう冗談はいいから!────ね?」
「冗談??何がですか??」
自分の発言を振り返ったが、とくに冗談というカテゴリーに入る言葉はなかったような……?
一つ一つ会話を振り返りながら考えていると、なんとリーフ様は、この俺より遥かに劣る白い馬を褒め始めたのだ!
俺が一番のはずなのに!?
頭の中にはリーフ様の声がガンガンと響く。
゛レオンは早くて強いけど、こっちのお馬さんのほうが白いし凄いし~!゛
゛レオンよりこっちに乗りたいな!゛
゛やっぱりこっちの『馬』が一番だ!゛
「全てにおいて俺の方が優れています。なのに何故リーフ様はコイツを選ぶのですか!?俺とアイツ、どう違うのですか!!」
気がつけば、リーフ様に対しグイグイと責め立てるように言ってしまった。
俺が一番。
なのになんで俺を選んでくれないのか!!
そんな気持ちが前へ前へと勝手に出てきてしまい、どうしてもそれを抑えておくことが出来ない。
この様に、奴隷になったことでもう十分だと思った俺の欲望は……日に日にその強さを増していく。
こんなに沢山の感情が、この世にはあるのか……。
リーフ様と出会ってからゾッとするほど沢山の感情を経験させられ、その度にもうこれ以上はないだろうと思っても、今の今までそれは日々更新され続けている。
何とか落ち着きを取り戻そうと、リーフ様の話を聞きながらその言い分を聞く。
リーフ様は優しい。
外見同様とても美しい心を持っているリーフ様は、いかに『馬』が弱く役に立たない存在だとしても、それを無下にするのは可愛そう。
そう心を痛めている様だ。
そういう話なら解決は容易い。
俺は即座にリーフ座に背を向けてしゃがみ込んだ。
無駄にデカくごちゃごちゃしている車体はあの役立たずの『馬』にくれてやり、リーフ様は俺がお運びする。
それで問題は全て解決だ。
そうしてリーフ様に喜んで背を向けて待っていたのだが、それにストップを掛けるようにリーフ様は言った。
「レオン、君のお仕事は『馬』だけでは無いだろう?
君が『馬』になってしまったら……誰が俺の『椅子』になるんだい?!」
「────っ!!」
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