【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
318 / 1,649
第六章(ライトノア学院試験編、ソフィアとアゼリア、レイドとメル、リリアとサイモンとの出会い)

(ソフィア)302 不思議な人との出会い

しおりを挟む
(ソフィア)

そうして私の専属聖兵士となったアゼリアは、王宮の中にある専用部屋を与えられる事となり、当時住んでいたレイモンド家を出ることになった。
やっとこれでアゼリアは自由に……と思っても、出ようとする杭を完膚なきまでに叩きたがる者は何処にでもいるものだ。
ましてや『不義の子』であることと、貴族社会では女性が剣を振るうことに対し攻撃的な思想を持つものは多かった。

『女のくせになんて生意気な……男を立てれぬ女など女ではない。』

『ソフィア姫は、引き立て役として彼女を選んだんだろうよ。あんな男勝りの女など。』

『女性ならば美しく着飾るのが義務だろう。女性であれでは価値などない。』

そんな陰口は何処へいっても囁かれたが、今まで冷遇されて生きてきたアゼリアはそれに負ける事はなかった。
────が受け入れる事もできず、アゼリアは自身の気持ちを私に吐き出す。

「美しく着飾る事だけが女性の価値……なのでしょうか?私はそんな女性になりたくないと思ってしまうのです。」

「強さが欲しいです。私が目指したい方向はきっとそこにある。」

「もしかしたら私は……『可愛い』ではなく『かっこいい』と誰かに言って欲しいのかもしれません。」

美しく着飾る事もまた必要な事、それは力の劣る女性にとって最大の武器でもある。
しかしアゼリアにとってそれは価値のないものであった、ただそれだけの話だ。

そんな世間一般的な価値観と自身の持つ価値観との差異は、アゼリアの心にしこりとなってずっと存在していた様に思える。

そんな中、出会った不思議な人。

私はその人物を頭の中で思い出し、う~ん……と考え込んでしまった。

あのメルンブルク家の秘匿とされていた子供、<リーフ・フォン・メルンブルク>様。
初めて出会った時は、まさかメルンブルク家の人間であるとは全く気づかず恐らくは冒険者だろうと思っていた。

まず容姿────メルンブルク家と欠片ほども似ている部分がない。
たとえ不義の子であろうとも母親に少しくらいは似ている部分があってもいいものだが、1つたりとも似ている部分が見つからない。
そして纏う空気────気がつけば消えてしまった?と勘違いするほど周囲に溶け込んでいる空気感……こんな空気を纏っている人を見るのは初めてで良く分からない。
それに驚き思わずスキル<祖質鑑定>使ってしまったのだが、それでリーフ様を『見た』瞬間、私はギョッ!!目を見張った。

色が……色がない……??!!??

そんなはずは……!!と何度も見たがやっぱりない。

馬車の中で、私はその時の事を思い出し再度頭を悩ます。

心の根源色とは、いわばその者の歩んできた人生そのものといえるもので、まず生まれたてすぐの赤子は、真っ白。
このことから『人』の本来の心の色は<白>ということが分かる。
そこから徐々に周りの環境に影響され、自分でも変えていき色が変わっていくはずなわけだが、それが無いとなれば心そのものが無い……ということになってしまう。
しかし、リーフ様を見る限り、むしろ普通の人より感情に満ち溢れた方に見えるため首を傾げたが、その理由は直ぐに判明した。

普段は自身の弱みは見せまいと緊張しているアゼリアや警戒している聖兵士達の心の色が、ふんわりと消えてしまっているのに気づいたからだ。
そのことから彼の持つ色は、【透明】である事が分かり、またしても私は驚かされる。

周りの色に一切影響されず、相手の色まで消してしまうような完全な透明色、それにより周りの緊張、不安、恐怖をあっという間に消し去ってしまった。
久しく感じなかった居心地のよい空気感に、私は大きく息を吸いながら思う。

そもそも、このお方は『人』……なのだろうか?

そんな疑問を持ちながら同行を提案された時には、幸いとばかりにその話に飛びついてしまい、おもわず苦笑い。
いつもだったら、その提案の裏側、その人物との繋がりのある貴族達との関係性、その思惑のメリット、デメリットなどを考えた上で返事を返すのだが……もしかしてこの時点で、私の色もその透明さに消されてしまっていたのかもしれない。

結局リーフ様は、酷くあっさりとアゼリアが欲しかった言葉の数々を贈り、彼女の暗くなってしまっていた心の道を照らしてくれたのだ。
アゼリアは自身の境遇に対し同情されたり気遣われるのが嫌いで、そんな言葉の数々は彼女の歪んだ心をより一層、頑なにする原因でもあった。
中には本当に自分の事を心から心配して出る言葉の時だってあるのは理解している。
しかし、それを『ありがとう』と素直に受け取れるほどアゼリアは自分に自信がない。
そしてそれを出来ない自分を責め、さらに自己肯定感は低くなっていく。

それは私も同じで、きっと私達は人からの言葉や行動を酷く複雑に捉える事しかできず、例え向けられる感情が好意的なものであっても、それを上手く受け取る事が出来ないのだろうと思う。
だからこそ、リーフ様のいい意味で他者を気にしないマイペースさがとても居心地がいいと思ってしまった。

その時の事を思い出し、私は思わずフフッと口から笑いを漏らすと、アゼリアが不思議そうな表情で見つめてきた。

「ソフィア様?外になにか面白いものでもあったのですか?」

「いえ、何でもないわ。リーフ様の事を思い出したら楽しくなってしまったの。
あのお方は少し……いえ、だいぶ変わっているお方だったわね。」

リーフ様の名前をだすと、分かりやすくほわっと空気を柔らかくするアゼリアにまた笑いがこみ上げる。

「そうですね。なんだか捉え所のないお方だと思いました。メルンブルク家と聞いて警戒してましたが、それが吹き飛んでしまうような人柄と実力を持ったお方でしたね。」

「そうね。これからの学院生活が楽しみね。」

何気なく言った言葉だったが、アゼリアの表情は曇った。
                  
「そうですね……。今の国の情勢と────がいなければ、きっと楽しいだけの学院生活になったでしょうが……。」

アゼリアの言葉に私の脳裏には、リーフ様の後ろに影のように存在していた1人の人物が浮かび上がりゾッと背筋を凍らせる。
しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

「好きって言ったら負け!」完璧すぎる生徒会コンビの恋愛頭脳戦は今日も平行線です~恋は勝ち負けじゃないと知るまでの攻防戦

中岡 始
BL
「好きって言ったら負け」 それが、俺たちの間にある、たったひとつのルールだった。 星遥学園の顔、生徒会長・一ノ瀬結翔と副会長・神城凪。 容姿、成績、カリスマ性――すべてが完璧なふたりは、周囲から「最強ペア」と呼ばれている。 けれどその内側では、日々繰り広げられる仁義なき恋愛頭脳戦があった。 ・さりげない言葉の応酬 ・SNSでの匂わせ合戦 ・触れそうで触れない、静かな視線の駆け引き 恋してるなんて認めたくない。 でも、相手からの“告白”を待ち続けてしまう―― そんなふたりの関係が変わったのは、修学旅行での一夜。 「俺、たぶん君に“負けてもいい”って思いかけてる」 その一言が、沈黙を揺るがし、心の距離を塗り替えていく。 勝ち負けなんかじゃない、想いのかたちにたどり着くまで。 これは、美形ふたりの駆け引きまみれなラブコメ戦線、 ついに“終戦”の火蓋が落ちるまでの物語。

処理中です...