【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第八章

360 可哀相な小さな子供

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(リーフ)

「そうですか……。────では、どんな風に違いますか?……それにより色々と判断しなければなりませんので。」

「それがね、昨日帰ってきたら急に抱きしめられたんだ。どうやら本当に怖かったみたいでね……。
それに夜を酷く怖がっていたし、可哀想でもう見ていられないよ!
あんな優しくて大人しい小さな子供になんてことをするんだろう!」

怖がって俺に縋ってきたレオンを思い出し怒りが再燃した俺は、やはり去勢はこの俺自ら……と思い直し、腰の剣にソッと手を伸ばす。
するとその直後、ユーリスさんの手から逃れたドノバンがそのままププーっ!!と突然吹き出した。

「こっ、怖がる!?怯えるっ??!www大人しい小さな子供って……それ、一体どこのレオンだよ!?www」

息も絶え絶えにそう言った後、更にはそのままお腹を押さえて大爆笑を始めたのだ!
そしてそれに釣られるようにモルト、ニールまで笑いだしてしまったので、俺はそんな2人にすかさずデコピンし、ユーリスさんは一瞬でドノバンの背後に回り込み、その頭を思い切り叩く。
するとドノバンとモルト、ニールの三人は、両手で口を押さえジッと下を向いてしまった。

「……全く~!」

そんな悪い子3人組に対し、俺は、如何にレオンが優しくて、大人しくて、純粋で一途であるか……そしてそんなレオンが今回の事で如何に傷ついてしまったのかをコンコンと説明する。
すると、3人は体を大きくプルプルと震わせて沈黙したので
一応反省はした様だ。

純粋に傷ついている子供を笑うなど言語道断だ!
これはちゃんと反省して欲しい。

「とりあえず、どうか今回の事は第二騎士団副団長の自分にお任せ下さい。」

ブツブツと文句をいい続ける俺が収まってきたタイミングで、ユーリスさんがドンッと胸を叩き、頼もしい事を言ってくれた。

本当は自らの手で断チン……いや断罪してやりたい気持ちがある。
だがそれはグッと堪え、この事件はユーリスさんという悪い人達を断罪するプロに全てお任せする事にした。

レオンの心に負った傷はこれからゆっくり癒やしていくしかない。
気長にいこう。

「じゃあ、ドノバンとユーリスさんはこれからそれを報告しに直ぐに王宮に向かうのかい?」

「えぇ、そのつもりです。とんでもない大事件ですので直ぐに王に報告しなければ……。
あとリーフ様、不躾な質問で申し訳ないのですが、特に体に不調などはありませんか?もしくは困っている事とか……。」

突然の体調気遣いに多少疑問に思ったが、『被害者だけではなくそれを支える周りに対しても心配してくれているんだ!』と気づき、感激しながら答えた。 

「問題ありません!俺は全てが健康体です!心配してくれてありがとうございます。」

ビシッ!と気をつけのポーズで、しっかりと元気アピールをしつつ答えると、ユーリスさんは安心したのか短く息を吐く。

「そうですか……ならば良かったです。────それでは我々はこれで失礼します。
もし王都に来た際は、是非第二騎士団に遊びに来て下さいね。
……きっとこれから長い付き合いになるでしょうから。」

そう言い終わったユーリスさんからは、ふわりと漂う強者独特のオーラを感じた。
多分それだけでも物凄く強い事が分かる。
どんな戦い方をするんだろう?

「こちらこそよろしくお願いしまーす!」

ワクワクしながら頭を下げた後、威厳もへったくれもないヘニャヘニャおじさんのドノバンに視線を移した。

「ドノバンってただのエッチなおじさんじゃなかったんだね。第二騎士団元団長は伊達じゃない!」

「お前ぇ~……俺の事なんだと思ってんだよ……。俺、結構すごいんだけど?
それにな、男がエッチなのは大事なステータスだぞ~?多分攻撃力の次に大事だな、うんうん。」

ドノバンが大きく頷きながらそう言うと、ユーリスさんの顔からはストンと笑顔は消え酷く汚らしいモノを見るかのような目でドノバンを見るが当の本人は全く気づいてない。更に話しを続ける。

「ほら~お前らもぉ~準成人越えちゃった感じじゃん?色恋沙汰にゃ~今から免疫つけとかねぇとな!女の前では男は防御力ゼロになっちまうんだからよ。
あ、なんなら良いお店紹介して……。」

食い気味のモルトとニールの方へ視線を向けたドノバンは、突然ビク──!!!と体を震わせ固まってしまった。

どうしたんだろう?

突然の変化に驚き、カエルに睨まれた蛇の様に汗をダラダラ掻きながら固まっているドノバンの視線の先を追う。
するとそこにはモルトとニールがいて、そしてその先にある扉、その僅かな隙間から────……レオンが、ジ──っと音が出るくらいコチラを見つめていた。
どうやらレオンは退屈と寂しさで、そろそろ辛抱たまらんと俺達を覗いてしまった様だ。

「ごめんごめん。少し待たせすぎちゃったかな~?ほ~ら、レオンが大好きなドノバンだよ~?」

俺の言葉を受けレオンは無表情、無感情のまま、ギギギギィ────……とゆっくりドアを開き外に出てきた。

レイピアを片手に装備して。

「「「「────っ!!???」」」」

その瞬間、ドノバンとユーリスさん、モルトとニールは陸に上がったマグロの様に跳ねて固まったが、俺はそんなレオンを見てププ~っ!と笑う。

なんとレオン、ドノバンがいるからこれから修行かと思いレイピアを装備して出てきちゃった様だ。
俺はそのまま笑いながらレオンに言って聞かせた。

「いいかい?レオン。今日は修行じゃないからレイピアはいらないんだよ。
君は本当に真面目だね。今後は適度に巫山戯ることも学ばないと。」

『ドノバン=授業』という単純な思考回路!
せっかくの知能系最上スキル<叡智>は、もっと生かしていくべきだとおじさんは思っている。
今後広く人と付き合っていくなら、多少の冗談も通じるようになってもらわねば……ね!

そこでレオンの日常的な行動の数々を振り返り、しみじみと思いに耽る。

『豆腐の角に頭を~』的なことわざに対し「……物質構造変えますか?」とトンチンカンな事を言っていたレオン。
『へそで茶を沸かす~』と言えば、自分のお腹に火をつけようとしたレオン。
『石橋は叩いて渡れ~』と言った時には、レガーノにて橋を破壊した。

「この橋は駄目な橋でしたね。危ないところでした。」

破壊後に、そう真剣に言っていたレオン。
ちなみに橋はアントンが新しく作り直してくれた。

……あれ?意外とまずいな、コレ……。

そんな思い出がブワッと頭の中を走り回り、心配していると、レオンは「……分かりました。」と渋々剣をしまう。

「あっ、俺急用思い出した────!!とりあえず元気そうで良かったぜ!じゃっ!!またな~!!」

ドノバンはレオンが剣をしまった瞬間、大量の汗を掻きながら叫び、そのまま脱兎の如くその場から逃走してしまった。
ユーリスさんはそれを限界まで細めた目で見つめた後、俺達に頭を下げる。

「では、俺も失礼いたします。」

爽やかな笑顔でそう言った後、最後にチラッと視線をレオンに向けてから、その場を去っていった。
それを見送った俺達は、とりあえず犯人は捕まったと言う事実に安心し、そのままグリモアにてお土産を沢山購入。
両手に足りぬほどの大荷物を馬車に詰め込み、我が家があるレガーノに向かいゆっくりと帰路についたのだった。
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