【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第八章

(ユーリス)361 目の前の……

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(ユーリス)

ガタガタと舗装された道を進んでいく馬車。
グリモアで急遽レンタルした馬車だったが、王都までの道はなだらかで乗り心地は悪くない。
まぁ、そうは言っても元々そんなに上品な生まれというわけでもないため、そこまで乗り心地にはこだわらないが……。
俺の目の前には、元上司兼お師匠様であるドノバンさんが、大量のスターフルーツとともに座っている。

「……そんなにスターフルーツいります?」

「────ん?……おぉ!これだけあれば切れ端だけじゃなくて中身もしっかり食べれるからな!今回こそは中身も食うぞ~。」

まるで名案を閃いた!とばかりにご機嫌で言うドノバンさんを見て、『いや、今、1人で食べればいいのでは?』という疑問が頭を過ったが、それは置いといて……。

俺は直ぐに本題に入る。
    
「……は何なんですか?」

今回の暗殺のターゲットは、俺の弟弟子でもあるリーフ様であった。

メルンブルク家の次男と聞いていたため金髪蒼眼を予想していたが、その予想を完全に裏切る似ても似つかぬ容姿の子供を見て、俺は色々と察した。

恐らくは父親か母親、どちらかの不貞の先に出来た子供だろう。
そこまで考えて、心の中で大きなため息をついてしまった。

────ならば暗殺の依頼を出したのは十中八九両親のはず……。

ひどい話だが王族や貴族の中にはそれなりによくある話で、王位継承権や跡継ぎ問題、更に将来的にその不義の子が子供を作ってしまえば、財産の分配権が発生してしまうなどが主な理由だ。
他にも家庭内のいらぬ争いの種になる場合や、他の貴族のつけ入る隙になってしまうなどが理由のこともあり、とにかく不義の末に出来た子供は忌み嫌われ冷遇される傾向がある。
一般平民出の俺からすれば正直全く理解できない考えで、節操なしに手を出す輩が一番の『悪』であると思うし、どうしてもその行為が必要ならば去勢してから存分に愉しめばいいと思うのだが、彼らの考えはそうはならない。

『自分を気鬱にする原因の方ががなくなるべきである』
『善』と『悪』を分かつところは、結局はそこに集結する……騎士という仕事をしていると心底思う。

『善』は自分を、そして『悪』は自分以外を変えようとする。

それでは『悪』にとっての『正しい』世界を作るのに、一体どれほどの人々が犠牲になるんだか……。
バカバカしいとばかりにフンッと鼻を鳴らすと、その犠牲になろうとしているリーフ様に対しどうしても憐れむ気持ちを抱いてしまう。

メルンブルク家はまさにその『悪』の象徴ともいえる者たちで、何回か会った事があるが、それはそれは美しい外見を持った────酷く醜いモンスターのような奴らであった。

彼らは身分高き者、そして美しいモノに以外に価値を見いだせない。
だからこそその世界観の中でトップに君臨する自分たち以外は全て『無価値』であると本気で思っているのだ。
そして『無価値なモノを玩具として使ってあげている自分達』に正当性を見出しているからこそ相手を犠牲にする事に何の罪悪感を持たない。
『個』しか存在しない孤独な世界とは、なんて恐ろしいものかとゾッとしたものだ。

彼らは自身の持つ正しい価値観に従い、お互い沢山の愛人という名の『玩具』達を引き連れて毎夜パーティー三昧。
欲望のままに過ごしているらしいので、軽く100人以上は不義の子がいてもおかしくはないと思っている。

盛る猿か、はたまた病気か……。

最近ではその家の長男、長女もその片鱗を見せ始めているらしく、噂に疎い俺でもその悪行の数々は耳に入ってくるようになった。

そんな『悪』の血筋ともいえるメルンブルク家。
それを全く感じさせない外見と、話しただけで分かった『人』に対しての真摯な態度から、リーフ様だけは随分まともに育っているらしい。
それは必死に助けようとしているドノバンさんとカルパスさんの様子からもよく理解できたため、格別彼に対し警戒すべきものはないと俺は判断した。

────が、彼の側にいたものは別だ。
     
先ほど見たの存在を思い出し、ブルッと体が大きく震える。

左半分に呪いを受けたかのような恐ろしい外見と、この世に存在しないはずの黒髪をもつ、名前は<レオン>と言う少年。
呪いに対する恐怖は確かにあるが、ドノバンさんの反応や周りにいたリーフ様や他のご友人の様子からも伝染性のものではない、もしくは呪いではないと判断した。
黒髪も特に生粋のイシュル信者ではない俺からすれば気になるものではない。
そのため特に何のリアクションは起こさなかったが、彼を見て直ぐに体中から嫌な汗が伝い始め、感覚もおかしくなっている事に気づいた。

そこにいるのに存在が……ない?
そんな不思議な感覚……。
さらにそれに疑問を感じるより先に騎士としての本能がうるさいくらいに俺に告げた。

『いますぐ、逃げろ』と。
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