【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第八章

(ユーリス)362 初めての恐怖

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(ユーリス)

こんな感覚は初めてで、実際はすぐにでも逃げたかったが────それを理性で必死に押さえる。
そして、レオン君がドアの向こうに見えなくなるまで視線を外さず観察した。
隙だらけに見えるその背中には一切の隙などなく、その短い時間で様々な戦闘パターンを使い、想像上のレオン君を攻撃してみたが……結果は惨敗。

────完全な規格外。

そんな計り知れない実力に恐怖するのと同時に更に恐ろしかったのは、一瞬見えた『目』だ。
そこには感情らしい感情は感じられず、まるで以前戦ったドロティア帝国の人造人間型の複合ゴーレムの様だと思った。

何万もの人の命を媒介にした戦闘用ゴーレム。
それは辛うじて人の形をしているが、たった1つの作られた感情『  人を殺す事 』のみが植え付けられている感情なき人形で、その目はレオン君の目にそっくりだ。
底が見えない空っぽな目は、どこまでも続く闇の中にズブズブと落ちていくような……そんな恐怖を相手に抱かせる。

俺の質問に対しドノバンさんは、アレとは??と不思議そうな顔を見せたすぐ後、手をポンッと叩いた。
  
な~!なんで自分を狙ってやってきた暗殺者がハレンチだの変態集団だのになっちまったんだろうな?あいつまたどえらい勘違いしてるっぽいよな。」

「…………。」

無言で睨む俺にドノバンさんは、「こわぁ~反抗期?」と非常に腹が立つ事を言ってニヤニヤし始める。
その反応に、はぁ~……と大きく息を吐き出し気持ちを落ち着かせると、今度はハッキリとした言葉で伝えた。
                        
「……『レオン君』のことですよ。なんなんですか?は……。
正直彼を見た途端、すぐにでも逃げ出したいと思いました。
こんなことは初めてで……しかも今もまだ警戒を解くことができません。
……傭兵たちをやったのは彼ですね?」

ドノバンさんはビクビクーッ!!と大きく震えた後、あからさまに視線を逸す。

「ナンノコト~?ボク、シラナ~イ。」

そして子供でももっと上手く嘘をつけるぞと言いたくなるような様子を見せたので、ジトっとした目で睨みつけた。

「それで隠しているおつもりですか?……まぁ、カルパスさんの手前、今は詳しい話は聞かないでいるつもりですが……彼が敵対する可能性があるなら話は別です。
もしも彼が見境なく攻撃し始めた、その時は────……。」

「いやいや、ないない。100%ありえねぇから安心しろ。リーフに危害を加えねぇ限りはスライム並に大人しい奴だからな、レオンは。」

「……それはレオン君がリーフ様の奴隷だからですか?
確かに彼の首筋には絶対服従の奴隷の証である<奴隷陣>がありました。
もしかしてそれで安心してます?────俺にはそんなものなんの効果もないように思えます。
彼が<奴隷陣>如きで縛れるような存在とは到底おもえませんね。」

<奴隷陣>は主人の命令に絶対服従させるための鎖のようなもの。
そのため逆らえば耐え難い痛みを全身に流す仕組みになっている────が……実は奴隷陣を刻み込む術者と奴隷となる者の実力差があまりにも大きい場合、契約自体出来ない、もしくはそれを強制キャンセルすることも出来ると聞いたことがある。
そのような理由から奴隷陣を扱える能力者にはかなり高い実力が要求され、<商業ギルド>の派生であり様々な契約についての資質持ちが登録している────……。

【契約ギルド】

────では、ある一定以上の実力者でないと登録自体出来ず、更に登録してない者が奴隷契約をしようとすれば重い刑罰が課される、などなどその他にも様々な法が定められている。
しかし、どう考えてもあのレオン君を縛れるレベルの契約者など存在するはずないと俺は断言する。
つまり、彼がその気になればあんなもの軽々……。
  
俺はを想像し険しい表情を浮かべたが、ドノバンさんはプッーと吹き出し片手を左右に振った。

「大丈夫大丈夫!本当に心配いらねぇって!
まぁ、確かにあいつにとっちゃ~奴隷陣なんてすぐにはがせるシールかなんかだろうと思うぜ?
だが、あいつが今の所リーフに逆らう事はまずねぇから。たまに盛大にゴネてはいるがな。」

「……そうでしょうか?奴隷はその全員が主人を恨んでいます。
もし奴隷陣の効果がなければ直ぐに主人を殺して自由を手にしようとするでしょう。
レオン君だって自由を望む日が……こないとは言い切れませんよ?」

まだ子供の年齢のレオン君はまだ広い世界を知らず、現在の状態が普通だと思っているのかもしれない。
しかし、今いる世界以外を知ってしまえば自由を手にしたいと望むだろう。
そんな俺の危惧をやはりドノバンさんはまたしても笑いながら否定してくる。
 
……そうなんだよな~……。だがもう4年経ったが日に日に酷くなるばかりだ。
広い世界っつーのを知れば~……なぁんて軽く考えていたが、それを見れば見るほどまた更に酷くなっちゃってる感じのレオンに、師匠ガックリ~。
きっと今までなんだかんだで独占できていたリーフを取られる!とでも思っちゃったんだろうよ。
これから更に環境がガラリと変わるし、それがいい感じで変わっていくと良いんだが……。
────まっ!子供の変化は無限大だから予測できねぇよな~。」

笑いながら、困った困った~とため息をつく様子から、多少の不安を抱えているらしい事が分かったが、またしてもおじさん特有の『内容が迷子』の言葉にイラッとする。

「 ……よく意味がわかりませんが、その無限大にある変化の1つに最悪の未来がないとは言い切れないでしょう。
リーフ様がレオン君に殺されて、自由を手にした彼が世界を手にしようと……。」

「う~ん……あるとすれば多分逆じゃねぇかな?
リーフと一緒にいるため、その邪魔になる『自由』を失くすそうと世界を────……。」
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