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第十章
421 声
しおりを挟む( レオン )
街の外、入口近くの森にいたのは、男2人に女2人だけの様だ。
何やらボソボソとおしゃべりをしていたので、とりあえずそれが終わるのを待っていたのだが……ついにその中の1人の男が俺の存在に気づく。
そのままごちゃごちゃと話しながら何かをやっていたが、俺は気にせず自身のやるべきことをし、” 手加減 ” の最終チェックをする。
しかし、どうもまだ心もとない。
慎重に扱ったつもりだったのに、男は少し触れただけで弾け飛んでしまった……。
それに触れた拳を困ったような気持ちで見下ろしていたが、なんとそいつらは試験のときにも使った< 仮想幻石 >という魔導具を身につけていたらしく、その場で弾けた男は蘇ったのだ。
俺はなんて運がいいのだろう!
思わず笑みが零れそうになったが、これがラストチャンス。
気を引き締めて耐久性を確認せねば……。
そのまま確認作業に集中しようとしたが、どうもこの4人はおしゃべりが随分と好きなタイプの人間だった様だ。
あーだこーだとずっと喋り続けるので、 ” 言葉 ” を取ってやろうかと思ったが……フッとリーフ様の声が頭の中に聞こえた。
” 最初に手を出してはコミュニケーションの練習にならない。 ”
” 沢山練習してみるといいよ。 ”
一応面倒だが、付き合うべきか……。
そう答えを出して、俺はそれに答えるように努力をしてみた。
しかし……楽しいと感じることもなければコミュニケーション能力とやらの実力も上がったようには思えない。
とりあえずは ” 自分に興味をむけてくれた相手には敬意を払え ” というリーフ様の言葉に従って、顔のフードを取ってしっかり相手に向き合ってみたが……。
結果は、相手の心拍数が上がってしまっただけという残念なものであった。
まぁ結果がどうであれ、俺はそのルールを守ることでリーフ様の世界に近づければそれでいい。
要はこいつらがどう思おうが、俺には関係ない事。
そう答えを出し、切り上げ時を測っていたら……なんとやたら露出が激しい女が突然魔法を放とうとしたので、直ぐに< 魔法キャンセル >で打ち消してやった。
” 景色を台無しにするから森林破壊はやめろ。 ”
そう伝えたというのに、なぜもう一度森を焼こうとするのか?
理解に苦しむ選択をする女だと、ちょうどいいから魔法の出力を最大限抑えながら打ってやれば、中々いい感じに使う事ができて気分は僅かに上昇する。
魔法は物理よりは手加減しやすい。
でも範囲が大きいからそれは気をつけた方が良さそうだ。
その後飛んできた男をふっ飛ばしながら、そんな事を思っていると、今度は女二人が服を脱ぎだし、 " 我こそが可愛い " だの " 美しい " だのと訳のわからない事でギャーギャー騒ぎ出してしまったため、思わずため息をついた。
” 世界一可愛いのはリーフ様。 ”
” この世界の中で外見も中身も美しいのはリーフ様だけ。 ”
面倒だがきちんと丁寧に世の理とも言える真実を教えてやれば、今度は黙ってしまう。
何も理解できていない様だ。
” 人と人が分かり合うのは奇跡。
意見が一致、ラッキーラッキー!
違うところは個性個性、楽しい楽しい~ ”
────今の状況は、これか……。
リーフ様の言っていた言葉をまた一つ思い出し、残念ながら楽しいという感覚はないが……また一つ ” 世界 ” を知れて良かったとは思った。
じゃあ、もうお喋りはいいだろう。
そろそろ帰る時間も迫っていたので、目の前にいる女で続きをし始めると、残りの3人は走って行ってしまったので、また新たなため息が漏れる。
この空間はとっくに俺のスキル< 無限迷子 >の中なのだから、大人しく自分の順番を待っていればいいのに……。
これも ” 個性 ” か……?と考えながら、俺は目の前にある玩具で思う存分練習をし尽くした。
完全に壊れてしまったおもちゃを見下ろした後、俺はぐにゃりと時系列と空間を捻じ曲げ、先程逃げた3人を今いる場所に来させる。
すると走って疲れてしまったのか、女はへたり込み、残りの男たちは汗をドバッと掻いて立ち尽くしている様だ。
だから待っていれば良かったのに……。
その愚行に対し何度目か分からないため息をつきながら、俺はレイピアに付いた血を洗浄魔法で綺麗にする。
そして、次は何を試そうかと考えながら、奴らに近づこうとしたその時────突然一人の男が待ったを掛ける様に喋り出した。
「 きっ……貴殿は知っているのかな?
リーフ様が……家族であるメルンブルク家に……捨てられた存在だと……いうことを……。 」
リーフ様の家族は家にいない。
血の繋がりという一番強固な絆を持った者達は、リーフ様をいらないと言う。
………………
────あぁ……良かった!!
俺はその事実に心の底から歓喜し、大きく口元を歪める。
家族という血の繋がりがある存在は、基本は人の心の中でもっとも大きな割合を占めるもののはず。
でも、それがないということはその場所は丸々全て俺のモノ。
いや、今は空白なのかもしれないが……いずれは全て手に入れたい。
それを手に入れれば────…………リーフ様の何割が俺のものになる?
ゾクゾクとした喜びの感情が背中を走り、俺は思わず笑ってしまった。
” 今ある奴隷陣というリーフ様の所有物となれる絆 ”
” それ以上の他人同士が結べる最強の結婚という絆 ”
” そして切っても切れない血で結ばれる最強とも呼べる家族の絆 ”
その全部が俺は欲しい。
絡めて絡めて、逃げる事など出来ないぐらいグルグル、グルグル……その絆で縛り付けてしまいたい。
それが出来たら俺の全てを受け止めてくれる?
永遠に?
そう考えると嬉しくて嬉しくて、ワクワクと弾む気持ちを抑えられず笑みが零れそうになったが……一人の男がその ” 嬉しい ” を台無しにするような事を言った。
「 俺が全責任を持ってその奴隷陣を解除してくれるスキル持ちを探し出し、貴殿に ” 自由 ” をプレゼントしよう。」
「 貴殿を縛るモノは何一つなくなる。」
「 リーフ様から解放されこの広い世界を自由に生きていく事が出来る。 」
とても気分が良い思いをしていたというのに、男が言った言葉で一気に気分は落ちていき、更には明確な殺意までブワッと飛び出した。
” 自由 ”
それこそ俺が最も恐れていると言ってもよい、リーフ様から俺を離そうとする大きな ” 力 ” 。
それを俺に与え、大事な大事な絆を切るとは?
許せるはずもない " 自由 " に対し、怒りと憎しみは治まらず、どす黒く染まっていく心を落ち着かせようと、自分の胸を鷲掴んだ。
広い世界はいつだってその ” 自由 ” が絶対的に正しいと言い、俺をそこへ行かせよう行かせようとしてくるが……そこに俺の幸せはない。
俺がそこへ行く理由は、リーフ様が常にそこへ向かおうとするからだ。
本当はそんなもの全て消してしまいたいと常に思っているが、リーフ様が楽しんでいるのだからそれは絶対にできない……。
苦しくても悲しくても、俺が一番優先するのは、リーフ様の側にいること。
何かを得れば何かを失うのは────────────────……が決めた概念…………壊すことも…………。
…………。
────あぁ、別にいいのか、それでも。
あっさりと思いついたその考えに基づき、試しに ” それ ” に向かって攻撃してみようと指を空に向けて指し示そうとした。
しかし、またしてもそんな俺を止めるのはリーフ様の言葉だ。
” ルールを守って遊ばないとゲームはつまらないものになっちゃうだろう?
ズルっ子はだ~め!! ”
「 …………そうだった。 」
思い出した言葉を全肯定し " ソレ " への攻撃をやめた。
修行の後ゆったりと本を読んでいる時に、リーフ様はよく平民の子供の間で流行っているゲームを持ってきては、俺と遊ぼうと誘ってくる。
そして、それで遊ぶ度に一番最短の勝利法を提案すると、必ず言われる言葉だ。
” 決まっているルールは守って遊ぶ。 ”
それは大事な事だった。
モヤモヤした感情のまま巫山戯た事を言った男の顔を踏みつける。
すると、潰れていない頭を見て、またしても湧き上がるリーフ様の世界に近づけた喜びに、ついその感情が外へと飛び出てしまった。
リーフ様、リーフ様、リーフ様…………。
俺の愛しい愛しい神様、俺の全て。
あなたの世界を────俺は知りたい!
心の中で叫ぶ様に言うと、なんだか今度は楽しくなってきて……続けてハハッと小さな笑いが口から溢れる。
願いが、思いが強くなる毎に…………急速に俺は強くなっていく。
そして────それとともに、遠い……近い……手を伸ばして届く場所から聞こえる声は大きくはっきりと聞こえるようになっていった。
────────……お前さえ…………う……け…………────ば…………
わ……っ……かい……────────すな!!!!!!
俺はニヤッと笑ってその耳障りなその声を完全に消してやると……そのまま愛しい人を取り上げようとする眼の前の奴らに ” 幸せ ” を存分に与えてやった。
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