【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第十章

431 完結している幸せ

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( レオン )

俺はリーフ様に触れたくて、その背中に向かってゆっくり手を伸ばしたが────それより先に大きなお化けさやえんどうを目の前に突きつけられた。


「 美味しいの沢山食べれるね! 」


ニコニコとご機嫌で言われてしまい、俺の手はそこで止まる。


リーフ様を捕まえようとした手には、大きなお化けさやえんどうが……。


俺はそれをジッと見下ろしながら、” 欲してくれない ” 人から ” 貰う ” ためにはどうしたらいいのだろう? ” と考えた。


” 沢山の《 想い 》を貰って喜びを教えて貰った。 ”


” どんな自分でもそのまま受け入れてもらえる居場所を与えてもらった。 ”


そんな ” 幸せ ” を存分に貰った雛鳥はそこで大きく大きく育っていき、やがて大人になって大きく育った翼で広い世界へと飛び立っていく。

決して後ろを振り返らず、沢山の人、モノに触れ自分の居場所を作ったら、今度は誰かにその ” 幸せ ” を与える側へ────……。



そうなって貰う事がリーフ様の ” 幸せ ” 。
           ・・
そしてその幸せはそこで完結している。



────きっとこの価値観は一生変わらない。



だってリーフ様は────………………………だから。



俺はお化けさやえんどうの皮をペリッ……と剥き、畑に植えていくと、嬉しそうにそれを見つめるリーフ様の姿がある。


そして更にキノコ部屋を作り、キノコを植えれば喜ぶリーフ様。


「 ……こんなにも近くにいるのに、なんて遠いんでしょうね。 」


ため息交じりでそう呟いたが、リーフ様はすっかり畑に夢中になっているため俺の声などもう聞こえていない。


でもそれでいい。


だってこれもリーフ様の ” 個 ” で、それがなくなってしまえば愛しいリーフ様が消えてしまうということだからだ。


俺はそんな事は望まない。絶対に。


キラキラと畑を眺めるリーフ様をみつめながら、俺は軽く首を横に振り、いつかリーフ様が納得する形が見つかるといいなと思った。



だって俺の飛び立つための翼なんてとっくに切って捨ててしまったし、” 他 ” を見るための目も、聞くための耳も、全て喜んで潰してしまったから。



きっと今までリーフ様に沢山のモノを与えてもらった人はそれで満足して、彼の "   幸せ   "  を叶えてきたんだろうと思うが……。


俺は一瞬だけ酷く幸せな気分になって微笑んだ。





ありがとう。


俺が決してできない形でリーフ様を幸せにしてくれて。






そして良かった。



誰も戻ってこなくて。





「 二人とも色々ありがとう。

そろそろお腹が減ったしせっかくだからレオンが作ってくれた縁側でご飯を食べてみないかい? 」



そう提案するリーフ様の言葉によって、意識は再び愛しい人の元へ。



俺はそのままのあなたが大好き。

全部全部全部。俺に不都合な部分も全て。



だから何も消えてほしくない。そのままでいい。




他に奪われないなら、今はこれで幸せ。

与えられるモノだけで我慢して、いつかは……。




……────と思おうとしたのに……結局心というものはとても強欲で難しいものなのだと、この後思い知らされた。



ご飯を食べるため縁側へ向かうリーフ様とその後ろにピタリと着いていく俺。


そして到着後、俺が ” 椅子 ” になろうとしたのだが、そんな間も無く ” やほ~い! ” と嬉しそうに床に座ってしまったリーフ様にズンッ……と心に冷たいものがまたしても押し寄せてきた。


理屈では分かっているのに心はその通りに従ってはくれない。


” 俺のために変わってほしい ”  

” 俺に全てを与えて欲しい ” 


またしても、子供の癇癪の様な気持ちでいっぱいになってしまった。



日に日に心が強欲になっている自覚はある。

心は本当に忙しくて難しい……。


そんな自分に呆れながら、パクパクと幸せそうな表情でパンを食べるリーフ様の姿を見ると、ひんやりした心は徐々に治まり、代わりにホワッとした暖かい気持ちが戻ってきた。


穏やかな気持ちでリーフ様の食べる姿を眺めながら、その手に持っているパンへと視線を移す。


不思議な事にリーフ様の手にあるものはキラキラと輝いていて、どんなゴミでもまるで世界一価値のあるもののように見えるのだ。

────これも心がなにかしら作用しているからだろうか……?


不思議だ……と心の中で呟きながら、俺はリーフ様の手にあるパンをジッと見つめ続けた。


今はそのパンが欲しくて欲しくて堪らない。

全てなど望まないから、せめて目につく与えられるものだけでも俺は欲しい。


そうささやかな願望を抱きながらジッと見つめてくる俺を見て、リーフ様はいつも通り手に持つ食べかけのパンを俺の方へ差し出そうとしたのだが────そこでピタリと止まった。


そして突然その手を引っ込め、恐らくは俺に与える新しいパンを取ろうとそちらへと手を伸ばし────……ここでもう、我慢の限界がきた。

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