【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
463 / 1,649
第十一章

447 喪失した……

しおりを挟む
( リーフ )

俺がシワシワになってしまった【 部活動入部届 】を丹念に伸ばしていると、足を震わせたアゼリアちゃんがレオンにキャンキャンと噛みつき出した。


「 ────はんっ!なんの資質かは知らんが、いい気になるなよ?奴隷如きがっ!!

いいか?< 戦闘術学 >には来るなよ?

ぜ~ったいに来るなよ!

……おいっ!聞いているのか!?なんとか言ったらどうだ!! 」


キャンキャン、ワンワン!

必死にレオンに話しかけるが、レオンはその全てを完全に無視。

ピクリとも動かない。


それにソフィアちゃんは頭を抱えながらアゼリアちゃんを止めに入ろうとしたが、俺としてはこれは寧ろ貴重な交友大チャンス!

目を光らせ、ソフィアちゃんが口を開くより先にレオンに優しく話しかけた。


「 レオン、ほら、何かお話してごらん。

頭の中で考えている事はお口に出さないと人には伝わらないんだ。

ここにいる子達は君に意地悪したりしないよ。


さあ!心を軽く!空を飛ぶイメージで!!

気軽にお話してみよう!! 」


両手を横に広げ、スイ~と鳥の動きを真似ると、思うことがあったのかレオンはやや下へ視線を下げて少し考える仕草を見せた。


すると、俺の言葉を聞いていたモルトとニール以外の面々は、レオンの今までの人生や、迫害、虐げられてきた日々( 主に俺によるモノ )を勝手に想像した様で、少し悲しそうな様子を見せる。

そしてレオンの言葉を大人しく待つ中、レオンはゆっくりと顔を上げ、そのまま口を開いた。


「 リーフ様と今直ぐ家に帰りたいです。 」


……ファッツ??いきなり何を???

そんな疑問を口にする暇なく、一度話し始めたレオンの口は止まらない。


「 二人きりでずっと家にいたいです。 」


「 ずっとリーフ様だけを見ていたいし、リーフ様が見るのも触れるのも俺だけがいいです。 」


「 外の世界に出たくないです。

俺とリーフ様だけの世界に閉じこもりたいです。 」


そこまでザーッと一気に喋り終わったレオンは、満足そうにフ~ッ……と息を吐き、そのまままた口を閉ざし無表情。


周りの面々は全員が怖~い夏の怪談を聞いた後の様に青ざめて黙り、あんなに噛み付いていたアゼリアちゃんもこの発言には流石に黙ってしまった。


そんな中で俺はというと、離乳食の流れから決定打となる発言を聞かされ "   やっぱり……   "   と当たってしまった予感に思わず顔を片手で覆う。


完全に幼児化している……。


大抵の子供は、3歳くらいになるまで母親と二人きりで完結する世界の中を生き、そしてその間は子供にとって最も幸せである期間である。


3歳になってからは、幼稚園やそれに準ずる場所で少しづつ同世代の子供や、その他先生等の大人たちと共に過ごし社交性を学ぶわけだが……ここで子供にとっての第一の人生の試練がまっている。


大人からすれば大したことがない事でもママと二人きりの世界からすれば驚きの連続!


その驚きとストレスで頭が爆発してしまった子供がとる行動の一つが、この『 幼児化 』だ。

春の幼稚園の前で必ず見る光景────。


「 いやだー!ママとお家帰る!!幼稚園なんて行かない!! 」


「 ママと一緒がいい!ママはボクだけを見てくれないとイヤ!! 」


「 家でママと一緒にいる!お外なんて出たくな~い! 」


レオンはこれと全く同じ発言を俺の目の前で言った。



────フラッ……。


思わず気が遠くなって倒れそうになったが、必死に足を踏ん張って転倒に耐える。


俺はママじゃないし、寧ろその真逆にいるとも言えるいじめっ子の立場なのに……?

────あ、ストックホルム症候群の亜種的なやつ??


冷静を装いニッコリ笑いながら、ゆっくり、優しく、諭すようにレオンに言った。


「 そ、そっかそっか~。レオンはお家大好きだもんね。

じゃあ、部活の見学が終わったら一緒に帰ろう。


そうそう、レオンがとる予定の< 戦闘術学 >は目の前にいるアゼリアちゃんとも一緒だよ。

レオンの大事な友達だ。

お互いこれから頑張ろうね。 」


俺がスッスッとレオン、アゼリアちゃん、レオン、と2人を交互に指で差すと、アゼリアちゃんは俺の視線が外れた瞬間だけ、まるでムンクの叫びの様な表情をしていたらしい。

それに対し他の面々は口元を押さえて笑いを堪えていたらしいが、必死に説得中の俺の視野は狭窄状態だから、全くその様子には気づかない。

ドキドキ緊張しながらそう言った俺と反比例するように、レオンはキョトンと間が抜けた顔を見せた後、心底不思議そうに言った。


「 ???誰ですか?その女……いや、男は?? 」


その瞬間、アゼリアちゃんの表情はスコーンと消え去り、周りの面々は辛抱たまらんとばかりに、ブハッ!と吹き出す。

しかし、俺はそんな周りの反応など全く耳に入る事なく、ザッ……と顔色を熟したブルーベリー色に染めながら、ある一つの言葉が頭をグルグルと回っていた。


────記憶喪失……。

しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

処理中です...