597 / 1,649
第十五章
581 気持ちは分からないでもないが?
しおりを挟む
( カルパス )
「 ずっと四つん這いになっていたから、膝と……何より叩かれた尻がまだ痛い。 」
体格のいい大の大人が、まるで幼子の様にソファーの上で膝を抱えて座っている。
更にブツブツと恨み言の様な事まで呟きだした為、そのうっとおしさに私は大きく息を吐き出した。
「 無垢な少年に、ふしだらな世迷い言を吹き込むからだろう。
本来は死刑に相当する大罪だ。
それで済んだ事を、イシュル神様に感謝すると良い。 」
「 あ、あれは、俺はレオンの事を思ってだな~! 」
ドノバンは勢いよく顔を上げ、小鳥の様にピーピーとわめき出したが────私の蔑む目に耐えきれず、また膝を抱えて丸まる。
更にグスングスン……と、わざとらしい鼻を啜る音まで聞こえ、私は痛みだした頭を労わる様に擦った。
「 まぁ、お前の考えている心配事は理解しているがな……。 」
浮き彫りになった問題について考え、私はもう一度大きなため息をつく。
────恐らくレオン君は、また強くなった。
しかし、その強さはどのくらいのモノなのかは不明。
” 測る ” という概念がそもそも存在しない程のレベルでは……?
そう思ってしまうほど、別次元の強さを持っているかもしれない。
初めてリーフ様がレオン君を連れてきた時、そして側で生活し続けた日々、奴隷になってからの事。
その全てを出来る範囲で見張ってきたが……どうもレガーノという、完結していた環境から出た直後くらいから、また急速に変化した気がする。
そこから考えるに、恐らくそのトリガーは『 感情 』
そしてその『 感情 』を引きずり出しているのは────……。
「 …………。 」
一向に収まらない頭の痛みに、私はこめかみを念入りに揉み込む。
すると、だらしなくダラ~と手足を投げ出しソファーに身体を預けたドノバンが、突然大きなため息をついた。
「 俺が思うによ~、リーフってさ。
完全に出来上がってるんだよな。まだガキンチョなのによ。
今まで感じていた違和感の正体はそれだ。
物事の考え方や価値観に迷いがねぇ。
まるで中身じいさんっていうか……だからある種の人にとっては ” 始まりの場所 ” になっちまうんだ。
わかり易く言うとママだな、ママ。
あいつらママと息子……やっべっ、俺あんなおっかない息子絶対育てられない。
こ、こわぁ~……! 」
ヒィィィ~……とわざとらしくブルブル震えるドノバンを一切の表情なく見つめていると、「 相変わらず冗談通じねぇ奴ぅ~。 」と言いながら、頭をポスッとソファーにつけて続けて言った。
「 ……普通はよ、” 親 ” の側なんつーもんは、いつか出ていかなきゃ行けねぇ場所だし、子供の目なんて常に広い世界に向くもんだろ。
だからレオンの目も落ち着けば、外に向くだろうと期待したんだけどなぁ……。
……うん、上手くいってる気がしねぇわ。
────っつーか、なんか街から出てから酷くなってない?あいつ。 」
そうしてジッと視線を向けてくるドノバンに対し、無言で肯定を返す。
正直言うと、私もここまで執着心が育つとは思っておらず ” 分散されない想い ” がこんなにも恐ろしいものだということを、レオン君という存在に出会って初めて思い知らされた。
そのたった一つの大事なリーフ様を守る為、レオン君は一人でSランク傭兵 ” 神の戯れ ” と、一筋縄ではいなないAランク傭兵多数をあっさりと葬り去ってしまったのだ。
それも怪我一つせず、精神に波風一つ立てずに……。
そんな強大な力を持った者の全ての感情が、たった一人によってしか引き出せないなど、恐怖以外の何者でもない。
「 ……確かにな。
うまく行ってはなさそうだ。 」
痛む頭の痛みを和らげようと、更に強くこめかみを揉み込んだ。
現在レオン君はリーフ様によって引きずり出される感情達に夢中で、それによって ” 何か ” を得る度に彼は笑う。
世界で一番の幸せを手にした男の様に。
その時の笑みを思い出すと、ゾクッ……と冷たいモノが背中に走った。
リーフ様を介したこの世界はきっと楽園の様に綺麗な世界なのだろうが、反対にそれを介さずに見たこの世界に、多分レオン君は一切の未練はない。
もし仮にリーフ様が一言 ” 世界を壊せ ” 。
そう命じれば、レオン君は世界一幸せそうな笑顔のまま何の迷いもなくあっさりと世界を滅ぼそうとするだろう。
「 ……まぁ、リーフ様の側にいる内は大丈夫だろうが、それを失くした時どうなるか……。
確かにそれを考えると恐ろしいな。 」
「 だろ?だろ~?!そろそろ離れていく準備させねぇとやばいって!
” ずっと一緒! ” なんて……先はどうなるかわからねぇもんだからな。 」
やれやれ~と僅かに戯けた様子で言うドノバンだったが、その態度が胸に走るチクリとした痛みを払う為だということを知っていた。
元騎士であるドノバンは失うことの辛さ、そして残された者達の ” 結末 ” を沢山見てきたからこそ、沢山の者に情を掛け、失った時の ” 辛い ” を分散させて心を守ろうとする。
これがこの男の心を守るための最大防衛方法なのだ。
そして、その信念に従い他の者にもそれを勧め────……今回のレオン君へのふしだら発言に繋がるというわけだ。
ストン……と、顔から全ての感情が消え失せた。
「 ずっと四つん這いになっていたから、膝と……何より叩かれた尻がまだ痛い。 」
体格のいい大の大人が、まるで幼子の様にソファーの上で膝を抱えて座っている。
更にブツブツと恨み言の様な事まで呟きだした為、そのうっとおしさに私は大きく息を吐き出した。
「 無垢な少年に、ふしだらな世迷い言を吹き込むからだろう。
本来は死刑に相当する大罪だ。
それで済んだ事を、イシュル神様に感謝すると良い。 」
「 あ、あれは、俺はレオンの事を思ってだな~! 」
ドノバンは勢いよく顔を上げ、小鳥の様にピーピーとわめき出したが────私の蔑む目に耐えきれず、また膝を抱えて丸まる。
更にグスングスン……と、わざとらしい鼻を啜る音まで聞こえ、私は痛みだした頭を労わる様に擦った。
「 まぁ、お前の考えている心配事は理解しているがな……。 」
浮き彫りになった問題について考え、私はもう一度大きなため息をつく。
────恐らくレオン君は、また強くなった。
しかし、その強さはどのくらいのモノなのかは不明。
” 測る ” という概念がそもそも存在しない程のレベルでは……?
そう思ってしまうほど、別次元の強さを持っているかもしれない。
初めてリーフ様がレオン君を連れてきた時、そして側で生活し続けた日々、奴隷になってからの事。
その全てを出来る範囲で見張ってきたが……どうもレガーノという、完結していた環境から出た直後くらいから、また急速に変化した気がする。
そこから考えるに、恐らくそのトリガーは『 感情 』
そしてその『 感情 』を引きずり出しているのは────……。
「 …………。 」
一向に収まらない頭の痛みに、私はこめかみを念入りに揉み込む。
すると、だらしなくダラ~と手足を投げ出しソファーに身体を預けたドノバンが、突然大きなため息をついた。
「 俺が思うによ~、リーフってさ。
完全に出来上がってるんだよな。まだガキンチョなのによ。
今まで感じていた違和感の正体はそれだ。
物事の考え方や価値観に迷いがねぇ。
まるで中身じいさんっていうか……だからある種の人にとっては ” 始まりの場所 ” になっちまうんだ。
わかり易く言うとママだな、ママ。
あいつらママと息子……やっべっ、俺あんなおっかない息子絶対育てられない。
こ、こわぁ~……! 」
ヒィィィ~……とわざとらしくブルブル震えるドノバンを一切の表情なく見つめていると、「 相変わらず冗談通じねぇ奴ぅ~。 」と言いながら、頭をポスッとソファーにつけて続けて言った。
「 ……普通はよ、” 親 ” の側なんつーもんは、いつか出ていかなきゃ行けねぇ場所だし、子供の目なんて常に広い世界に向くもんだろ。
だからレオンの目も落ち着けば、外に向くだろうと期待したんだけどなぁ……。
……うん、上手くいってる気がしねぇわ。
────っつーか、なんか街から出てから酷くなってない?あいつ。 」
そうしてジッと視線を向けてくるドノバンに対し、無言で肯定を返す。
正直言うと、私もここまで執着心が育つとは思っておらず ” 分散されない想い ” がこんなにも恐ろしいものだということを、レオン君という存在に出会って初めて思い知らされた。
そのたった一つの大事なリーフ様を守る為、レオン君は一人でSランク傭兵 ” 神の戯れ ” と、一筋縄ではいなないAランク傭兵多数をあっさりと葬り去ってしまったのだ。
それも怪我一つせず、精神に波風一つ立てずに……。
そんな強大な力を持った者の全ての感情が、たった一人によってしか引き出せないなど、恐怖以外の何者でもない。
「 ……確かにな。
うまく行ってはなさそうだ。 」
痛む頭の痛みを和らげようと、更に強くこめかみを揉み込んだ。
現在レオン君はリーフ様によって引きずり出される感情達に夢中で、それによって ” 何か ” を得る度に彼は笑う。
世界で一番の幸せを手にした男の様に。
その時の笑みを思い出すと、ゾクッ……と冷たいモノが背中に走った。
リーフ様を介したこの世界はきっと楽園の様に綺麗な世界なのだろうが、反対にそれを介さずに見たこの世界に、多分レオン君は一切の未練はない。
もし仮にリーフ様が一言 ” 世界を壊せ ” 。
そう命じれば、レオン君は世界一幸せそうな笑顔のまま何の迷いもなくあっさりと世界を滅ぼそうとするだろう。
「 ……まぁ、リーフ様の側にいる内は大丈夫だろうが、それを失くした時どうなるか……。
確かにそれを考えると恐ろしいな。 」
「 だろ?だろ~?!そろそろ離れていく準備させねぇとやばいって!
” ずっと一緒! ” なんて……先はどうなるかわからねぇもんだからな。 」
やれやれ~と僅かに戯けた様子で言うドノバンだったが、その態度が胸に走るチクリとした痛みを払う為だということを知っていた。
元騎士であるドノバンは失うことの辛さ、そして残された者達の ” 結末 ” を沢山見てきたからこそ、沢山の者に情を掛け、失った時の ” 辛い ” を分散させて心を守ろうとする。
これがこの男の心を守るための最大防衛方法なのだ。
そして、その信念に従い他の者にもそれを勧め────……今回のレオン君へのふしだら発言に繋がるというわけだ。
ストン……と、顔から全ての感情が消え失せた。
82
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
2025年10月に全面改稿を行ないました。
2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。
2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。
2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。
2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
無能と呼ばれた婚約者は王を完成させる〜替え玉婚約者のはずが、強すぎる王太子に手放してもらえません〜
統子
BL
兄の身代わりとして王太子の婚約者になった伯爵家次男リュシー。
嘘の名を名乗ったはずが、冷静で誠実な王太子リオンは彼を「力の装置」としてではなく、対等な伴侶として扱おうとする。
本物になりたいと願う替え玉と、完成された王太子の静謐な王宮ロマンス。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる