【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第十六章

585 リーフ・フォン・メルンブルク

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( リーフ )

目の前には、沢山の宝石がついた光り輝く金色の椅子が一脚。

そしてその後ろには、その椅子が前にあっても全く違和感がない様な、黄金色のきらびやかなアロマ暖炉が設置されていた。

更にその周りの壁には、あれほど見たいと思っていたメルンブルク家の皆さんの顔のアイコラ風の絵が一面飾ってある。


どうやらここは、多少内装は変わっているが、ジェーンがお掃除する前の『 家族ルーム 』の様だ。


俺が即座に見たかった絵達を見て回らないのは、そのゴージャスな椅子に座っている人物と、その後ろに控える2人の人物が目に入ったから。

椅子に座っている人物は紅茶を飲みながら、機嫌よく笑みを浮かべていて……その顔には見覚えがあった。


金色のサラサラの髪に、陶器の様な白い肌。

長いまつ毛が生えたぱっちりとした目の奥には、透き通った空の様な色の瞳が見える。

歳は多分俺と同じくらい。

まだまだあどけなさが残る少年で、その外見はまさに神が作り給うた絶世の美少年!

そんな大層美しい少年は、足を組みながらマイペースにお茶を飲み続けている。


< リーフ・フォン・メルンブルク >


あれは俺ではない ” リーフ ” だ。


そして後ろに立ち並ぶのは、いつも見慣れているモルトとニール……なんだろうか?

外見的には確かにモルトとニールなのに疑問に感じてしまうのは────二人の表情と雰囲気がいつもとあまりにも違うせいだ。


二人は笑っているのに笑っていない。

目だけは笑いを作り出そうと三日月型になっているせいか、まるで作り物の様な顔をしている。

本当に楽しそうなのは椅子に座っている ” リーフ ” だけ。

なんだかそのチグハグな雰囲気が酷く不気味なものに見えて、先ほどカルパス達とあんなにも皆で楽しい一時を過ごせた部屋が、とても恐ろしい場所の様な感じがした。


しかし ” リーフ ” はそんな俺とは反対に、その部屋に安らぎを感じている様だ。

凄くリラックスしていて、湯気が漂う紅茶にもう一度口をつけると、ニコッとまるで穢れなど微塵も知らぬ様な美しい笑みを浮かべた。


「 もうすぐグリモアで、楽しい楽しいお祭りが始まるね。

この目で直接見れないのは残念だが……ふふっ、俺は心が酷く浮ついているよ。

────あぁ!人が不幸に踊らされる姿を見るのはなんて楽しいんだろう!

藻掻き苦しみ、絶望に染まっていく……これこそが人を楽しませる最高のショーだよ。

例え無価値なゴミでも、この俺を一瞬でも楽しませてくれるならその命に価値はある。

そうは思わないか?────モルト、ニール? 」


美しい笑みを浮かべたまま後ろにいる2人に問いかける ” リーフ ” 

それに対し、モルトとニールと呼ばれた少年達はニッコリと笑ったまま答える。


「「 リーフ様の言う通りでございます。 」」


その言い方は、まるであらかじめ決まっている台本を読み上げている様であった。

しかし、リーフはその返事に満足そうな笑みを浮かべると、突然手に持っていたカップを傾け、中身のお茶を床にびちゃびちゃと溢す。

そしてお茶で汚れてしまった絨毯を見下ろしたリーフは、あっ……と、さも驚いたと言わんばかりの表情を見せた。


「 あぁ、なんてことだ。

俺としたことが……お茶をうっかり溢してしまったよ。

モルト、悪いが今直ぐ拭いて貰えないか?

勿論全て舐めてキレイにしろよ?

────いいな? 」


ニコッと美しい顔で微笑んでいるリーフからは、高圧的で有無を言わせない雰囲気がビンビンと伝わってくる。


「 承知しました、リーフ様。 」


そんな無茶な命令にも関わらず、モルトは笑みを浮かべたまま、なんのためらいもなくお茶が溢れた絨毯を舐め回し始めた。

すると、リーフは一心不乱に絨毯に溢れたお茶を舐めるモルトを見て、プッと吹き出し腹を抱えて笑い出す。

そしてやっと笑いがおさまったと思えば、自身の靴を見下ろしまたニコッと笑うと……今度はニールを呼びつけた。


「 ニール、見てくれ。

俺の靴がお茶で汚れてしまったよ。

ハンカチで拭いてくれないか? 」


「 承知しました、リーフ様。 」


ニールは直ぐに淡々と返事を返しながら、跪いて自身の胸ポケットからハンカチを取り出す。

そしてリーフの靴を拭き出したのだが、その姿を見つめるリーフの機嫌は良くない。

つまらなそうな顔をしているリーフは、突然何かを思いついたのか、わざとらしく悩んでいる様な仕草を見せた。


「 う~ん……。ハンカチだといまいち汚れが落ちている気がしないなぁ?

────うん、仕方がない。こうしてみよう。 」


リーフは足裏をニールの顔にくっつけ、そのままゴシゴシと汚れをなすりつける様に動かす。

そのせいでニールの顔は擦れて鼻血が出てしまうが、リーフは全く気にしない。

そのまま思う存分ニールの顔を靴で擦ったリーフは、鼻血で真っ赤になった顔を見て、それはそれは楽しそうに笑った。


「「 …………。 」」


声を立てて笑うリーフに対し、怒りの感情も悲しみの感情もない様子のモルトとニールは、やはりニッコリと笑みを浮かべたまま立ち上がると、またリーフの後ろに休めのポーズで立つ。

二人の顔は、まるで笑い能面を貼り付けた様な顔だった。


「 あははははは────!!! 」


何一つおかしいことなどないのに、大声で笑い出すリーフ。

"  楽しくて楽しくて仕方がない! "

そう言わんばかりに大笑いする美しい少年と、富を象徴した様な綺羅びやかな部屋……それは第三者から見たら酷く歪で、恐ろしいほどの違和感を感じる世界であった。


────ザァ~……ザァ~……。


そして、突然ブラウン管のテレビの様に急にその景色が歪んで消えると、場面は切り替わりまた別の景色に変わる。

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