【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第十六章

603 そっくり

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( ジェニファー )

あまりにも遠くに行ってしまった父に愕然としながらも、脳裏に浮かぶのは穏やかな笑みを浮かべて人々を救おうとする父の姿だけであった。

私は現実から必死に目を逸らす様に目をキュッと閉じ、どうしてこんな事になったのかをぼんやりと考える。


現在グリモアは魔素の第一級危険区域に認定され、教会は正式に ” 聖女 ” の派遣を決定、それを受けてソフィア様とサポート役として私がライトノア学院へ通う事となった。


< 第一級危険区域 >

教会が定めた数々の基準により極めて魔素による被害が深刻、及び今後大惨事になる可能性が高い場所に対し定めた区域の事。

そのため聖属性魔力を持った者が教会から派遣される。



その知らせが来た時私の中で湧き上がったのは、悔しさや怒り、憎しみ。

しかし何よりも私の心を苦しめたのは、父をがっかりさせてしまったという悲しみであった。


” 素晴らしい!こんな幼い頃から上級の回復魔法が使えるなんて聞いたことがないぞ! ”

” 流石は大司教様のご令嬢だ。 ”

” 今世の< 聖女様 >はジェニファー様に決まりだな。 ”


幼い頃からありとあらゆる回復魔法が使えた私は、周りの人達から ” 聖女 ” だと期待されて育ち、それを父は大層喜んでくれていた。

それが嬉しくて、私は必死に努力したが結局< 聖女 >に選ばれたのはソフィア様。


私は父を幸せにしてあげる事が出来なかった……。


目をそっと開け、胸元に光るバラのブローチに目線を落とすと、先程侍女達が送ってきた羨望の目と賛辞の言葉達が頭の中を巡る。


” 素敵だ ” 

” それを贈ってくれるお父様は優しい。 ” 


それが、ガチガチになった心を優しく慰めてくれた。


私は聖女にどうしても選ばれたかった。

そして、父から貰った沢山の ” 愛 ” を身に着けたこの幸せな姿を、より沢山の人達に見てもらって認められたい。

そして父からの沢山の ” 愛 ” に答えたい、そしてそれを父に返したい、幸せにしたいと心から願っている。


キラリと光り輝くブローチからフッと視線を外し、今度は前に座るクラークの方へと向けた。


クラークに出会ったのは、ちょうどソフィア様が< 聖女 >になった頃。


その頃のクラークは、ソフィア様の専属聖兵士として< アゼリア >というクラークの異母兄弟が任命された事から社交界の良い笑い者となっていた。


” あの有名なレイモンド家も堕ちたものだ。 ”

” 不義の子に負けたんですって、恥さらしもいいとこね ”

” しかもその言い訳をするため、他の参加していたご子息やご令嬢を酷く侮辱までしたそうよ ”


ヒソヒソと何処に行っても囁かれる陰口達は聞くに絶えない内容ばかりであったが、どんなに酷い言葉を掛けられていてもクラークは気丈にも社交界に出席し続けた。


クラークの両親は全ての責任をクラークに押し付け、姿を見せる事はなかったのに……。


そしてある日のメルンブルク家の< シャルロッテ >様の────確か新しいイヤリングのお披露目会であったか?詳しくは覚えていないが、何度目かのお茶会にお呼ばれした時の事。

そこでシャルロッテ様と、その周りを固める貴族達に散々苛め抜かれているクラークを見つけた。

周りの者達があざ笑う中、クラークは笑顔を貼り付けてひたすら耐え続ける。


” なぜそうまでして耐え抜こうとするのか? ”

” なぜ言い返そうとしないのか? ”


────答えは簡単だ。



家族の幸せのため。

そして家の名を……家族にこれ以上汚名を被さぬためだ。


私はその姿を遠目で見ながら、彼の姿が徐々に私の姿に変わっていくのを感じた。


” 聖女に選ばれなかった私、父の愛に答えたい私 ”

” 専属聖兵士に選ばれなかったクラーク、家族の名誉を守りたいクラーク ”


────私達はそっくりだ。



それに気づいた私は一歩、また一歩とシャルロッテ様とその取り巻き、そして笑いものにされているクラークへと向かって歩き出した。

それに周りにいる者達が目ざとく気づき目線を向けてきたが、堂々たる出で立ちでクラークの前に立つと周囲の者達は目を見開き、シャルロッテ様は周りにバレない程度に一瞬眉を潜める。

そんな数々の視線を受けながら、私は目一杯傲慢で高飛車な態度で扇子をクラークに突きつけ不敵に笑った。


「 < クラーク・ベルジュ・レイモンド >様。

貴方を私の専属聖兵士に任命します。

────よろしいですね? 」


そう宣言した時のポカンとしたクラークの顔とシャルロッテ様の歪んだ顔、そして周りにいる人達の驚いた顔は、今でも吹き出しそうなくらい面白いものであった。

その時の事を思い出し、思わずフフッと笑いを漏らすと、下に視線を下げていたクラークが怪訝そうな表情を浮かべて視線を上げる。


「 ……どうかされました?ジェニファー様。 」


「 いいえ、なんでもないわ。

それにしても今日のお茶会は凄く楽しみね。

私、今日だけはとても楽しくシャルロッテ様とお話できると思うのよ。

クラークもそう思わない? 」


フッと意地悪い笑みを溢す私を見て、クラークは正しくその意味に気づいたらしく「 ……なるほど。確かにそうですね。 」と言ってニヤッと笑った。

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