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第十六章
604 メルンブルク家の弱点
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( ジェニファー )
今日の私達にはシャルロッテ様の……いや、メルンブルク家にとって最大の弱点とも言える切り札がある。
それが、メルンブルク家次男< リーフ・フォン・メルンブルク >。
生まれつき体が弱く、自然豊かなレガーノという平和な街で療養中であるとされているお可哀想な子供────というのが表向き。
しかし実際、そんな事実は一切ない事は、本人を眼の前にすればすぐに分かった。
クラークが汗を掻く程の実力に、何よりメルンブルク家とは似ても似つかぬあの外見……これで自ずと答えは出てしまう。
笑みを引っ込め真顔になった私は、” リーフ様 ” という存在について考えた。
恐らくリーフ様は十中八九不義の子で、だからこそ人目につきにくい王都から離れた田舎町にひっそりと隔離されていたのだろう。
完全に排除しようとしている事は、メルンブルク家の行動を見ればすぐに分かる。
メルンブルク家は自身の美しさをひけらかすのが大好きで、毎日毎日派手なお茶会やパーティーを開いていてはそのお披露目をするのだが────それでは一度としてその ” 病弱な次男 ” に会いに行っていないと証明する様なもの。
次男についての根強い噂があれど、その話題が少しでも出ようものなら、権力を使ってまで話を逸らそうとする姿も見かけるので、リーフ様を絶対に世に出したくないのは間違いない。
私は再び扇子の下でニヤッと笑うと、” ご愁傷様 ” と小さく呟いた。
今まではそれで何とか通せていた言い訳も、中学院の……しかもNO・1中学院であるライトノア学院に次席で入学では、もう隠す事などできない。
現在その噂がまだ広まっていない所から見ると、無駄な隠蔽工作をしている最中────といったところか。
どちらにしてもこれから彼らは、真綿で首を締められる様にじわじわと追い詰められていくだろう。
必死に隠していた過去に、彼らは復讐される。
こんなに滑稽な話は中々ない。
「 ────フフッ。 」
抑えきれなかった笑いがまた口元から漏れてしまい、クラークに ” 感情を隠せ ” といっておいてこのざまか……と反省したが、あのリーフ様相手では下手な小細工も通じないであろうことは容易に想像でき、更に愉快が込み上げる。
特に突出した特徴がなく、一度見たくらいでは記憶に残りにくい外見をしているリーフ様は、とてもではないがメルンブルク家と血の繋がりがあるとは思えず、最初見た時は酷く驚かされた。
そして同時に、不義の子だとしてもここまでの冷遇を受ける理由も即座に理解する。
メルンブルク家は ” 美しさ ” というものに絶対的価値観を置いている……いや、崇拝しているといってもいい人種であるため、リーフ様という存在を受け入れることは絶対にないだろう。
その価値観を持っている限り、例えリーフ様が誰にも認められる偉大な人物になったとしても、彼らにとってリーフ様の価値は、” 不要なゴミ ” のまま。
その立ち位置が変わる事はなく、分かり合える日は来ないだろうと思われる。
たかが外見一つでたった一人家族に捨てられ、一切の愛情を与えられずに育ったという点には同情する。
しかし、外見が似て無くともあのメルンブルク家の血筋。
更には蔑ろにされて育った事を考えると、リーフ様は恐らく酷く歪んだ人物である事だろうと思っていた。
しかし、結果的にその予想は大外れ。
メルンブルク家の ” メ ” の字もない程、随分と変わったお方であったという事は少し話しただけでよく分かった。
「 それにしてもリーフ様にはまんまとやられてしまったわね。
探るつもりでお話したのに、逆にコチラの心がかき乱されてしまったわ。
あそこまで通じなかったお相手は初めて。
今は怒りより愉快を感じてしまっている程よ。 」
「 ────そうですね……。 」
苦々しい表情で何とか返事を返してきたクラーク。
私もその時の事を思い出した今、恐らく同様に苦々しい表情になっているはずだ。
人の本質を知りたければ相手の ” 怒り ” を引き出せばいい。
動揺を誘い、その人となりを暴いてやろうと、今後間違いなく騒ぎの中心になるであろうリーフ様に接触したのだが、結果的に心を揺さぶられてしまったのはこちらの方であった。
嫌味や遠回しな言い方が一切通じない。
それどころか言っている事の殆どを理解する事が出来なかった。
まずは先制攻撃とばかりに外見が随分違う事を遠回しに言ってみたのだが、” 今後はこのままで、そして更に高みを目指す ” ────という返事が返ってきてしまい、面を喰らう。
遠回し過ぎて通じなかったか……?
そう気付いた私は直接 ” シャルロッテ様と似ておりませんね ” と言ってやったが、すると急にニタニタとあまり年相応に見えない笑みを浮かべたまま、ぼんやりしだしてしまった。
それに戸惑っていると、今度は突然ハッ!としてペラペラ喋りだしたと思えば ” 美人なんだろう ” ” お父さんは心配だろうね ” ────と、またしても話題が逸れる。
この時点で頭が痛くなったが、これも作戦かもしれないと、メルンブルク家の家族愛について語り、” 愛されていない ” という事実をハッキリと叩きつけてやったのだが……。
何故か最後は肉のパン??の話しになってしまったのだ。
今日の私達にはシャルロッテ様の……いや、メルンブルク家にとって最大の弱点とも言える切り札がある。
それが、メルンブルク家次男< リーフ・フォン・メルンブルク >。
生まれつき体が弱く、自然豊かなレガーノという平和な街で療養中であるとされているお可哀想な子供────というのが表向き。
しかし実際、そんな事実は一切ない事は、本人を眼の前にすればすぐに分かった。
クラークが汗を掻く程の実力に、何よりメルンブルク家とは似ても似つかぬあの外見……これで自ずと答えは出てしまう。
笑みを引っ込め真顔になった私は、” リーフ様 ” という存在について考えた。
恐らくリーフ様は十中八九不義の子で、だからこそ人目につきにくい王都から離れた田舎町にひっそりと隔離されていたのだろう。
完全に排除しようとしている事は、メルンブルク家の行動を見ればすぐに分かる。
メルンブルク家は自身の美しさをひけらかすのが大好きで、毎日毎日派手なお茶会やパーティーを開いていてはそのお披露目をするのだが────それでは一度としてその ” 病弱な次男 ” に会いに行っていないと証明する様なもの。
次男についての根強い噂があれど、その話題が少しでも出ようものなら、権力を使ってまで話を逸らそうとする姿も見かけるので、リーフ様を絶対に世に出したくないのは間違いない。
私は再び扇子の下でニヤッと笑うと、” ご愁傷様 ” と小さく呟いた。
今まではそれで何とか通せていた言い訳も、中学院の……しかもNO・1中学院であるライトノア学院に次席で入学では、もう隠す事などできない。
現在その噂がまだ広まっていない所から見ると、無駄な隠蔽工作をしている最中────といったところか。
どちらにしてもこれから彼らは、真綿で首を締められる様にじわじわと追い詰められていくだろう。
必死に隠していた過去に、彼らは復讐される。
こんなに滑稽な話は中々ない。
「 ────フフッ。 」
抑えきれなかった笑いがまた口元から漏れてしまい、クラークに ” 感情を隠せ ” といっておいてこのざまか……と反省したが、あのリーフ様相手では下手な小細工も通じないであろうことは容易に想像でき、更に愉快が込み上げる。
特に突出した特徴がなく、一度見たくらいでは記憶に残りにくい外見をしているリーフ様は、とてもではないがメルンブルク家と血の繋がりがあるとは思えず、最初見た時は酷く驚かされた。
そして同時に、不義の子だとしてもここまでの冷遇を受ける理由も即座に理解する。
メルンブルク家は ” 美しさ ” というものに絶対的価値観を置いている……いや、崇拝しているといってもいい人種であるため、リーフ様という存在を受け入れることは絶対にないだろう。
その価値観を持っている限り、例えリーフ様が誰にも認められる偉大な人物になったとしても、彼らにとってリーフ様の価値は、” 不要なゴミ ” のまま。
その立ち位置が変わる事はなく、分かり合える日は来ないだろうと思われる。
たかが外見一つでたった一人家族に捨てられ、一切の愛情を与えられずに育ったという点には同情する。
しかし、外見が似て無くともあのメルンブルク家の血筋。
更には蔑ろにされて育った事を考えると、リーフ様は恐らく酷く歪んだ人物である事だろうと思っていた。
しかし、結果的にその予想は大外れ。
メルンブルク家の ” メ ” の字もない程、随分と変わったお方であったという事は少し話しただけでよく分かった。
「 それにしてもリーフ様にはまんまとやられてしまったわね。
探るつもりでお話したのに、逆にコチラの心がかき乱されてしまったわ。
あそこまで通じなかったお相手は初めて。
今は怒りより愉快を感じてしまっている程よ。 」
「 ────そうですね……。 」
苦々しい表情で何とか返事を返してきたクラーク。
私もその時の事を思い出した今、恐らく同様に苦々しい表情になっているはずだ。
人の本質を知りたければ相手の ” 怒り ” を引き出せばいい。
動揺を誘い、その人となりを暴いてやろうと、今後間違いなく騒ぎの中心になるであろうリーフ様に接触したのだが、結果的に心を揺さぶられてしまったのはこちらの方であった。
嫌味や遠回しな言い方が一切通じない。
それどころか言っている事の殆どを理解する事が出来なかった。
まずは先制攻撃とばかりに外見が随分違う事を遠回しに言ってみたのだが、” 今後はこのままで、そして更に高みを目指す ” ────という返事が返ってきてしまい、面を喰らう。
遠回し過ぎて通じなかったか……?
そう気付いた私は直接 ” シャルロッテ様と似ておりませんね ” と言ってやったが、すると急にニタニタとあまり年相応に見えない笑みを浮かべたまま、ぼんやりしだしてしまった。
それに戸惑っていると、今度は突然ハッ!としてペラペラ喋りだしたと思えば ” 美人なんだろう ” ” お父さんは心配だろうね ” ────と、またしても話題が逸れる。
この時点で頭が痛くなったが、これも作戦かもしれないと、メルンブルク家の家族愛について語り、” 愛されていない ” という事実をハッキリと叩きつけてやったのだが……。
何故か最後は肉のパン??の話しになってしまったのだ。
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