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第十六章
605 シャルロッテという女
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( ジェニファー )
これは手強い────!
気を取り直した私は、そのまま ” 家族に捨てられた ” という事実を突きつけてやろうと考えた。
そのため、現在住んでいる場所が家族と離れる選択をするほどいい場所なのだろうと、ズバッ!と嫌味を言ってやったが────その時の事を思い出すと、牛の映像ばかりが頭の中を巡る……。
────今も。
「 …………。 」
頭を押さえて沈黙する私に向かい、クラークはその時の事を鮮明に思い出したのか、頭から湯気を出し吐き捨てる様に言った。
「 全く……!
同じく不義の子であるアゼリアと絡めて遠回しに嫌味を言ってやったのに、何故か俺の剣が不出来という話になってしまいました!
未だにどうしてそんな話になってしまったのか、全く理解できませんよ。
忌々しきはアゼリア、そして次はマリオン……っ!
絶対にアイツラは許しません。いつか纏めて叩き潰してやる。 」
イライラした雰囲気が漂ったが、馬車が止まったのと同時にクラークも私もスッ……と己の感情を心の奥へ隠した。
「 到着いたしました。 」
御者の声が馬車の外から聞こえ、メルンブルク家のお屋敷に着いた事を告げられた私達は、一片の隙もない様堂々たる姿で外へと出てお屋敷の中へと入っていった。
◇◇
中に入ればもう既に沢山のご令嬢やご子息が集まっていて、大きな広間の中で立食式のお茶会を歓談しながら楽しんでいる様だった。
勿論あくまで表向きは……だが。
そんな人達の間をすり抜けながら屋敷を見回していると、目に入ってくるのは、まるで教会の様な作りの内装と屋敷中に飾られている真っ赤なバラの花たち。
これは奥様の< マリナ >様と今回招待をしてくれた< シャルロッテ >様のご趣味だ。
バラをこよなく愛するメルンブルク家。
私もバラが好き。
それが縁でこうして頻繁に招待を受けるようになったのだが────私は、本当は……。
「 ジェニファー様。 」
後ろに控えているクラークがひそっと耳打ちをしてきたので、直ぐにクラークの目線を追うと────その先には金色の輝くような長い髪を持ち、鮮やかなマリンブルーの瞳を持った、まさに天使の様な容姿の美しい少女が沢山の人に囲まれて穏やかに微笑んでいた。
< シャルロッテ・ジュリー・メルンブルク >
彼女こそ、今回この茶番の様なお茶会に招待してきた────正真正銘の悪魔だ。
シャルロッテ様はその引き込まれるほど美しい青い瞳をこちらに向けると、まるで花がパッ!と咲くような笑みを見せた。
そしてドレスの裾を優雅な仕草で摘み上げ、周りの沢山の ” ご友人 ” 達と共にコチラの方へとやってくると、私の眼の前でピタリと止まった。
「 ご機嫌よう、ジェニファー様!
本日は来てくださってありがとうございます。
ご到着を今か今かとお待ちしてましたのよ?
なんといってもジェニファー様の身を飾るドレスや装飾品はとても華がありますので、場がとても盛り上がりますから。
私、以前よりジェニファー様のファッションセンスには一目置いてますの!
身に着けただけでそこまで人を輝かせる事のできるセンス、本当に素晴らしいと思いますわ。
ね?皆様もそう思いません? 」
シャルロッテ様は自身の癖である、コテンッと横に顔を僅かに傾ける仕草を後ろにいる ” ご友人 ” 達に見せれば、彼らはクスクスと笑う事でそれに答える。
” 派手でけばけばしい下品な格好で目立つ。 ”
” お高いだけのドレスで、自分の不細工さを隠す憐れな女。 ”
シャルロッテ様が言っている言葉の裏側はこれ。
しかし、こんなものは序の口。
今更特に動じる事はない。
私はニコッと笑顔でそれを受け止める。
「 ありがとうございます。
そこまで高く評価されとても嬉しく思います。
でも私のドレスが霞んでしまうほど、相変わらずシャルロッテ様はお美しいですわ。
思わずため息が漏れるほどに……。
本日の刺繍が素晴らしいその白いドレスは新作のドレスでしょうか? 」
本当にため息が漏れるほど────性悪な女。
そんな本心は一切出さずにそう答えると、シャルロッテ様は容姿を褒められた事、そして更に言いたくて言いたくてたまらなかったであろうドレスについて聞かれたため、上機嫌でペラペラと喋りだした。
「 流石はジェニファー様。お気づきになりました?
こちらは子爵の< ローマン様 >から頂きましたのよ。
本来は子爵程度の男性に送られたドレスなど身に付けないのですが、あまりに熱心で情熱的におっしゃるので……今日だけ特別に着て差し上げたの。
でも……。 」
シャルロッテ様はその場でドレスの裾を上げ軽くクルッと半回転すると、申し訳無さそうに眉を下げ、後ろにいる ” ご友人 ” の中で下を向いている一人の女性へと視線を向ける。
「 私何だか申し訳なくて……。
ローマン様には、確かとても愛らしい婚約者のご令嬢がいらっしゃるのに……。
その方を差し置いて貰ってしまっても良かったのかしら?
どう思います?────ねぇ、パニーシャ様。 」
下を向いていた女性は名前を呼ばれた瞬間、ビクリッと小さく肩を震わせ、ゆっくりと顔を上げた。
これは手強い────!
気を取り直した私は、そのまま ” 家族に捨てられた ” という事実を突きつけてやろうと考えた。
そのため、現在住んでいる場所が家族と離れる選択をするほどいい場所なのだろうと、ズバッ!と嫌味を言ってやったが────その時の事を思い出すと、牛の映像ばかりが頭の中を巡る……。
────今も。
「 …………。 」
頭を押さえて沈黙する私に向かい、クラークはその時の事を鮮明に思い出したのか、頭から湯気を出し吐き捨てる様に言った。
「 全く……!
同じく不義の子であるアゼリアと絡めて遠回しに嫌味を言ってやったのに、何故か俺の剣が不出来という話になってしまいました!
未だにどうしてそんな話になってしまったのか、全く理解できませんよ。
忌々しきはアゼリア、そして次はマリオン……っ!
絶対にアイツラは許しません。いつか纏めて叩き潰してやる。 」
イライラした雰囲気が漂ったが、馬車が止まったのと同時にクラークも私もスッ……と己の感情を心の奥へ隠した。
「 到着いたしました。 」
御者の声が馬車の外から聞こえ、メルンブルク家のお屋敷に着いた事を告げられた私達は、一片の隙もない様堂々たる姿で外へと出てお屋敷の中へと入っていった。
◇◇
中に入ればもう既に沢山のご令嬢やご子息が集まっていて、大きな広間の中で立食式のお茶会を歓談しながら楽しんでいる様だった。
勿論あくまで表向きは……だが。
そんな人達の間をすり抜けながら屋敷を見回していると、目に入ってくるのは、まるで教会の様な作りの内装と屋敷中に飾られている真っ赤なバラの花たち。
これは奥様の< マリナ >様と今回招待をしてくれた< シャルロッテ >様のご趣味だ。
バラをこよなく愛するメルンブルク家。
私もバラが好き。
それが縁でこうして頻繁に招待を受けるようになったのだが────私は、本当は……。
「 ジェニファー様。 」
後ろに控えているクラークがひそっと耳打ちをしてきたので、直ぐにクラークの目線を追うと────その先には金色の輝くような長い髪を持ち、鮮やかなマリンブルーの瞳を持った、まさに天使の様な容姿の美しい少女が沢山の人に囲まれて穏やかに微笑んでいた。
< シャルロッテ・ジュリー・メルンブルク >
彼女こそ、今回この茶番の様なお茶会に招待してきた────正真正銘の悪魔だ。
シャルロッテ様はその引き込まれるほど美しい青い瞳をこちらに向けると、まるで花がパッ!と咲くような笑みを見せた。
そしてドレスの裾を優雅な仕草で摘み上げ、周りの沢山の ” ご友人 ” 達と共にコチラの方へとやってくると、私の眼の前でピタリと止まった。
「 ご機嫌よう、ジェニファー様!
本日は来てくださってありがとうございます。
ご到着を今か今かとお待ちしてましたのよ?
なんといってもジェニファー様の身を飾るドレスや装飾品はとても華がありますので、場がとても盛り上がりますから。
私、以前よりジェニファー様のファッションセンスには一目置いてますの!
身に着けただけでそこまで人を輝かせる事のできるセンス、本当に素晴らしいと思いますわ。
ね?皆様もそう思いません? 」
シャルロッテ様は自身の癖である、コテンッと横に顔を僅かに傾ける仕草を後ろにいる ” ご友人 ” 達に見せれば、彼らはクスクスと笑う事でそれに答える。
” 派手でけばけばしい下品な格好で目立つ。 ”
” お高いだけのドレスで、自分の不細工さを隠す憐れな女。 ”
シャルロッテ様が言っている言葉の裏側はこれ。
しかし、こんなものは序の口。
今更特に動じる事はない。
私はニコッと笑顔でそれを受け止める。
「 ありがとうございます。
そこまで高く評価されとても嬉しく思います。
でも私のドレスが霞んでしまうほど、相変わらずシャルロッテ様はお美しいですわ。
思わずため息が漏れるほどに……。
本日の刺繍が素晴らしいその白いドレスは新作のドレスでしょうか? 」
本当にため息が漏れるほど────性悪な女。
そんな本心は一切出さずにそう答えると、シャルロッテ様は容姿を褒められた事、そして更に言いたくて言いたくてたまらなかったであろうドレスについて聞かれたため、上機嫌でペラペラと喋りだした。
「 流石はジェニファー様。お気づきになりました?
こちらは子爵の< ローマン様 >から頂きましたのよ。
本来は子爵程度の男性に送られたドレスなど身に付けないのですが、あまりに熱心で情熱的におっしゃるので……今日だけ特別に着て差し上げたの。
でも……。 」
シャルロッテ様はその場でドレスの裾を上げ軽くクルッと半回転すると、申し訳無さそうに眉を下げ、後ろにいる ” ご友人 ” の中で下を向いている一人の女性へと視線を向ける。
「 私何だか申し訳なくて……。
ローマン様には、確かとても愛らしい婚約者のご令嬢がいらっしゃるのに……。
その方を差し置いて貰ってしまっても良かったのかしら?
どう思います?────ねぇ、パニーシャ様。 」
下を向いていた女性は名前を呼ばれた瞬間、ビクリッと小さく肩を震わせ、ゆっくりと顔を上げた。
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